『THE W』で優勝して一躍ブレイクを果たし、数々のバラエティ番組に出演するなど、この1年半は極めて順調な芸人人生を送っているように見えるが、意外にも本人は「テレビはそんなに得意じゃないし、爪痕を残したっていう実感も全くないんです」という。
「私って、芸人のくせに自分という人間を語るのが苦手なところがあって。芸人って“ニン”(人間性の面白さ)が大事だから、傍から『変だよ』と言ってもらえて、そこから人としての魅力になったりすると思うんですけど、私は最近まで自分を普通だと思っていたので、自分の変さを理解できてないから、そこをバラエティでプレゼンするということが、まだできていないんですよね」
「自分の思ってることの100%を言葉で伝えられなかったり、勘違いさせたり、違うニュアンスで伝わってしまうことが結構あって、向いてないなって思うことがあるんです」
一方で、ネタを披露する番組については、「自分が時間をかけてじっくり目を通して、自分のチェック項目をちゃんと通過した上で出せるので、やってて楽しいなって思うし、安心感があるし、充実感もあります」とのこと。
それだけに今回のドラマ脚本は、自分の適性に合った仕事と言えるが、普段のコントと違って他の人が演じるということで、「もし私の脚本で演じた方がスベってたりしたら、もうたまらなくなるだろうなと…。自分の謝罪ではどうにもならないし、その人の経歴に傷をつけてしまう…」と、心配も抱えているようだ。
■笑いのない部分にも面白み…新たな自分の武器に
いつか脚本の仕事が来たら書けるように力をつけておくため、自身の単独ライブで長尺のネタを作ったところ、それを見た番組スタッフからオファーがあって実現した今回の仕事。
前回の単独ライブは14分程度のネタだったが、「ピンで演じるので、フリが長いと見てもらえないんじゃないかと思い、笑いのない部分を結構削ってテンポ感よく作ったんですけど、『1人コントでも見てられる』と言われたんです。笑いのない部分も何か面白みがあるという声も頂いて、もしかしたらそこが自分の武器になるかもしれないと思ったので、次の単独ライブではもうちょっと長いネタが書けたらいいなと思います」と意気込む。
今回は決められた設定の上で脚本を書いていくという形で、「ちょっとポップ寄りに意識して書いたんです。ベタっぽくなっちゃうというより、みんなが共感できて理解できる温度感のものを一度書いてみようというのを、自分の中で宿題にしていて、そこはクリアできたのかなと思います」と手応えを感じた吉住。
その上で、原作の設定から作ってみたいという意欲もわいたそうで、「変な話、視聴者を置いてけぼりにしてでも、1個大暴れした作品を生み出せたら、芸人として脚本を書く意味があるのではないかなと思っています」と構想を語った。
●吉住
1989年生まれ、福岡県出身。熊本県立大学卒業後、15年にコンビ・ムテンカナンバーを結成してデビュー。翌年解散してピン芸人に転向し、20年『女芸人No.1決定戦 THE W 2020』(日本テレビ)で優勝。『R-1グランプリ』(カンテレ)は21年・22年と2年連続で決勝進出を果たす。現在はレギュラー番組『イワクラと吉住の番組』(テレビ朝日)のほか、ネタ番組などに出演。『恋です! ~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)、『科捜研の女』(テレビ朝日)など、ドラマ出演も果たす。7月1~2日には単独ライブ『咲かないリンドウ』(シアターサンモール)を開催。