小山:木月さんのように、若手が単発的にやってることを冷静に俯瞰して見るんじゃなくて、前のめりに関心を持ってくださるのは結構レアじゃないかと思って。やっぱりゴールデンが主戦場というか、そこでやれてなんぼだというのがあるじゃないですか。

木月:僕は深夜もやってるというのもあると思うんですけど、ずっとやってる『久保みねヒャダ』だったり、最近では新しく『バチくるオードリー』みたいなのをやってみたりというのもあって、皆さんをただ若手だと見てないというか、同じ時代に一緒にやってる方々だと思って見てますよね。

小山:木月さんは、これからこんな番組をやっていきたいというのはあるんですか?

木月:『上田晋也の芸人トーク検定』『バチくるオードリー』などのトライアルを数カ月前にいくつもやったので、その次の展開をどうしていこうかというのが課題ですね。

小山:それをやっていくのが本当にすごいですよね。私はいっぱいいっぱいになっちゃうんで…。

木月:でも、新しいことは常に考えておきたいじゃないですか。今やってるレギュラーの中で、あの人とあの人がこんな話をしてたみたいなところから新しい番組ができたりするから、そういうのが生まれる母体の番組は絶対に大事にしたほうがいいと思います。だから、『ロンハー』は超大事ですよ。

小山:そうですね。

木月:『久保みねヒャダ』は『笑っていいとも!』から生まれた番組なんですよ。僕の担当曜日で久保ミツロウ先生に初めてテレビに出てもらって、結構反響があったんです。新しい文化人の方を探そうというコンセプトのコーナーがあって、来週のゲストがいなくてヤバいってなったときに、『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)をやり始めた頃の久保さんにお願いしたら、「本当はテレビ出演NGにしてるけど、タモリさんと同じ時代に生きた証を残したいから」と言って出てくれて(笑)。それがきっかけであれよあれよという間に冠番組が立ち上がって。『いいとも』はどんな新しい方をゲストに入れても、タモリさんが絶対に面白くしてくれる安心感があるから、新しいテレビスターを見つけやすかったですね。

■「教養があるもの」「不穏なこと」をやりたい

小山:大森さんの番組って、テレビ番組をコンテンツとして自分なりに解読してるような“テレビ偏差値”が高い人に向けた印象があるんですけど、やっぱりそういうものを今後も作っていきたいですか?

大森:たしかに「ネラワリ」シリーズは本当にテレビ好きの人に刺さるタイプの番組だったと思うんですけど、正直そんなにそういう系をやりたいわけではなくて、教養があるものを作りたいと思ってるんですよね。もっと分からないものとか、難しいものの中に面白いものがあるような気が個人的にはしていて。例えば、全然知らない漢文とかに面白いことがあるんじゃないかとか、勝手に思ってたり。

木月:僕は『ヨルタモリ』で漢文のコーナーをやったことがあります。

タモリ

大森:タモリさんって教養の人じゃないですか。だから面白く感じるっていうのがあると思うんですよね。

木月:タモリさんは「教養で遊ぶ」というのを面白がっていて。あるとき、「漢文って面白いよな。もっともらしいけど、あれで大したこと言ってなかったら面白くないか?」って言ってくれたので、そこからタモリさんが言った“もっともらしいけど大したこと言ってない格言”を僕が漢文にしていく作業を、母校の国語の先生に協力してもらいながらずっとやっていました。

大森:架空言語って、それこそタモリさんが何十年も前にハナモゲラ語とかやってらっしゃいましたもんね。あと、不穏なことをやりたい、というのは常に思ってます。僕が「不穏=面白い」と思ってしまっているところもあるので…。この前、『ストーンテープ~見たら呪われる展示~』という展示会に行ったんですよ。「呪いの展示です」とだけ言われて、予約すると住所を教えてもらって行くシステムで、中に入るとどこかの家の中を映した謎のVTRが流れているんです。これは僕の解釈なんですけど、行った人がいろいろ考えて「こういうことかもしれない」と思うことで呪いというものが増長することをも示したかったんじゃないかと思って。そうやってテレビを見る人が「これはなんだろう?」と考えることによってはじめて完成する何か面白いことができるんじゃないか…全然具体的なアイデアとかはないんですけど、そんなことを考えてます。

小山:「ネラワリ」って、全員にあれを届けたいというより、届く人にしっかり刺さってほしいみたいなところがあるじゃないですか。やっぱり根底にはそういう意識でものづくりをされている方なのかなと思っていて。

大森:分かりづらい気持ち悪いものを、面白いと思ってほしいというのはあるかもしれないですね。『放送禁止』(フジテレビ)とかも、一部の人にウケてそこから広がっていったすごく良い例だと思うんですけど、そういうのがうまくできたらいいなと思います。

小山:そういう番組ができる場はなかなかないから、テレ東さんはいいですね。そうすると、「こんな面白いことを考えてる人がいるんだ」って見ている人たちも気づいて、今後大森さんが作った番組をまた見ようってなるじゃないですか。

大森:でも、僕も会社の中では「広い人に向けて作りなさい」って口を酸っぱく言われてるんで(笑)

木月:今の時代はそうですけど、これからはもしかしたら一部の人に向けて深く刺さって、そこからマネタイズできる番組の方が稼げる時代が来る可能性もありますからね。大森さんは、やっぱり企画主導タイプの番組が好きですか?

大森:今のところはそうなんですけど、特定の方と組んでやるレギュラー番組への憧れはすごくありますね。

木月:そういうほうがレギュラーになりやすいですもんね。

大森:でも、テレ東のゴールデンは一般の方を生かすような番組が多いので、なかなか新しいカップリングとか見つけるのは難しいかもしれません(笑)

木月:ロケに行ってインタビューしていくとか、それも大事な力ですからね。逆にフジテレビだとそういう機会があんまりないですから、その力は必ず何かにつながると思いますよ。