日本・フィリピン合作となる本作を完成させたことで、「やろうと思ったことを実現できたことは、自分の中で大きな自信になりました。合作というものは、お互いの文化をリスペクトし合っていないと、良いものができない。フィリピンのキャストやスタッフとも、ファミリーのような関係を築くことができました」と充実感もたっぷり。
もちろん「日本の監督の作品にも出演したい」と意欲を見せるが、海外作品に出演することも多い尚玄にとっては「日本映画が、もっと世界に羽ばたいてほしい」という思いもあるのだとか。
「釜山映画祭に参加した時に感じたのは、インドネシアやインド、タイなど、アジア諸国の若手の監督たちがものすごい映画を作ってきているということ。社会問題や文化的な事情を盛り込んだ作品をたくさん目にして、そのレベルの高さに圧倒されました。海外の映画人と話すと、『日本映画は、日本国内に向けて作っているように見える作品が多くて、ガラパゴスのようなところがある』とはっきりと言われたこともあります。ショックでしたね。日本映画には素晴らしい作品がたくさんあるのに、なかなか海外で観てもらえていないという状況は確かにあるなと思います。リスクを負ったとしても、海外に向けた広がりを持った作品が増えるといいなとも思いますし、僕も少しでも、日本映画の未来に貢献できるような仕事ができたらとてもうれしいです」と語っていた。
『義足のボクサー GENSAN PUNCH』は、6月10日より全国公開。
1978年6月20日生まれ、沖縄県生まれ。2004年、戦後の沖縄を描いた映画『ハブと拳骨』でデビュー。 三線弾きの主役を演じ、第20回東京国際映画祭コンペティション部門にノミネートされる。その後も映画を中心に活動するが、2008年にニューヨークで出逢ったリアリズム演劇に感銘を受け、本格的にニューヨークで芝居を学ぶことを決意し渡米。現在は日本を拠点に邦画だけでなく海外の作品にも多数出演している。近年の出演作に『ココロ、オドル』(19)、『Come & Go』(21)、『JOINT』(21)、『Sexual Drive』(22)など。今後『DECEMBER』(23)の公開を控えている。