――いろんな沼にハマった10代が登場しますが、彼らからどんな刺激を受けましたか?

DJ松永:大人になると自分が行きたい道を自分で選びとれるから、どんどん偏っていきがちで、新しいものや自分と違う価値観に対して謙虚になることが難しいなと感じています。だから自分が30代になったタイミングで、この番組のMCをやらせていただいたことは、自分にとってプラスだなあと思いました。今はTikTokやYouTubeなどがあり、表現の仕方も本当に多種多様ですが、「ああ、今はこういうのがイケてるんや!」とか、新鮮に勉強できている気がします。

――確かにどの分野も深掘りされていて興味深いです。

DJ松永:僕は今、アーティストをやっていますが、中学2年生ぐらいの時に音楽が好きになり、好きが高じて今がありますが、好きな音楽や自分の原体験の好みからは逃げられないなとも思っていて。自分もきっといろんな憧れや聴いてきた音楽が積み重なって大人になったけど、だからこそ表現の幅はけっこう狭くて、それに抗うことができないとも思ってます。

でも、自分の音楽人生を長い目で捉えた時、こんな年でマンネリ化はしたくないし、やはりものを作る時に発見というか、成長したという実感があると、クリエイティブ精神が満たされるんです。そういう意味で『沼ハマ』に関しては、音楽などジャンルを問わず、いろんな人の価値観を見られるのでありがたいです。

サーヤ:真面目や!

DJ松永:だから僕は、10代のラッパーから目をそらさないと、2~3年前に決めたんです。10代と同じ土俵で戦って絶対に勝ちたい。ベテランならではの味で勝負するのではなく、自分が50、60、70代になっても、10代や20代でスタートした人たちと戦って勝ちたいんです。そのほうが、凝り固まらずにすむので。今は情報量が多いと同時に、自分の都合のいい情報だけを取ってしまうけど、『沼ハマ』では新しい価値観の幅を広げてくれるのでうれしいです。

――サーヤさんはいかがですか?

サーヤ:私が10代の頃は、オタク文化ってけっこう見下されていて風当たりが強かったけど、大学生ぐらいから風向き変わってきて、多様性みたいなものが授業で取り扱われるようになってきました。でも、今回『沼ハマ』をやらせてもらって、自分が10代の時に何かにハマっていた熱量とは全然違う子たちに出会えて、彼らの無我夢中ぶりというか、一点突破ぐらいの勢いを見て、すごい! カッコいいなと思いました。

DJ松永:めっちゃわかるわ!

サーヤ:何事も習慣化しちゃって、自分の行動範囲が毎日同じになってくると、すごく寂しいし、つまんないと思って、最近自分からいろんな趣味を増やそうとしていたんです。私は中高美術部でしたが、それで10代の子にめちゃくちゃ刺激を受けて、もの作りをもう一回ちゃんとやってみようと思い、“レザークラフト沼”の回(6月13日放送)のあと、帰りに東急ハンズへ行ったりもしました。

DJ松永:わかるわあ。レザークラフトの子がそうやったけど、今の10代がすごいなと思ったのは、誰もやってないことをやろうっていう意識がすでにあること。当たり前の技術を身に付けてない段階で、何か突発的に新しい表現を生み出す人がいるんだなと。すごいトリッキーでした。本当に勉強させてもらってます!

  • 6月6日放送「スイーツとしてもおいしい!フライドポテト沼」

  • 6月13日放送「AKB48本田仁美も驚く創作ワールド!レザークラフト沼」

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