東北大学とキリンホールディングスは5月27日、食品トレイなどによく利用される汎用的なポリマー材料であるポリスチレンを、ナノサイズで粒径を揃えて合成する技術を確立し、金属元素に依存しない抗菌性ナノ粒子の実現に成功したことを発表した。

同成果は、東北大大学院 工学研究科の菅恵嗣准教授、同・長尾大輔教授、キリンホールディングスの共同研究チームによるもの。詳細は、生体材料とバイオインタフェースに関する全般を扱う学術誌「ACS Applied Bio Materials」に掲載された。

銀や銅といった金属元素には抗菌作用があり、それを活用した抗菌製品が広く活用されている。これらの金属をナノ粒子化することで抗菌作用がより向上すると考えられているが、そうした金属の中には希少で高価であるものや、製造工程の途中でナノ粒子が凝集して失活しやすいものがあるなど、さまざまな課題があったという。

その一方で、プラス電荷を有する有機ポリマーにも、金属成分のような抗菌性があることが知られている。そこで研究チームは、プラス電荷を持ったポリマー(ポリスチレン)をナノサイズの粒子として合成できれば抗菌性が高まるのではないかと考察したが、有機ポリマーをナノサイズで、しかも粒径を揃えて合成する技術は十分に確立されていなかったという。こうした背景のもと、研究チームは今回、有機成分のみで抗菌性を発現するナノ粒子状ポリマーの合成を試みることにしたとする。