2007年の『M-1グランプリ』優勝や、2009年の『キングオブコント』準優勝など、漫才やコントで芸人として高い評価を受けているお笑いコンビ・サンドウィッチマンの富澤たけし。一方で、ドラマ『カルテット』や『大恋愛~僕を忘れる君と』などで、俳優としても存在感ある芝居を見せている。現在放送中のTBS系日曜劇場『マイファミリー』(毎週日曜21:00~)では、誘拐事件を捜査する神奈川県警捜査一課長・吉乃栄太郎を演じているが、飯田和孝プロデューサーからは、表情と声の演技を称賛されていた。非常にマルチに活躍する富澤だが、“演じる”ということは彼にとってどんな位置づけなのだろうか――。

  • 『マイファミリー』吉乃栄太郎役の富澤たけし

飯田プロデューサーは、以前のインタビューで、富澤の声や表情の芝居を称賛していた。芸人として第一線級で活躍しながら、俳優としても味のある演技を披露する人は存在する。富澤も芸人として確固たる地位を築きつつ、コンスタントに映像作品に出演し“俳優”という顔もしっかりと認識していると感じている人は多いのではないだろうか。しかし富澤は「僕のなかでは、あくまで演じるという仕事は、なにかコントに還元できれば……みたいな思いが強いですね。“演じる”という部分ではコントもドラマも同じと言えば同じなので」と語る。

しかし“同じ”とは言いつつも、そのやり方はまったく違うという。「一番は間が違うんですよね」とつぶやくと「コントってテンポもあるので、割と間を詰めたくなってしまうのですが、ドラマだと『もうちょっと間を取ってください』と言われる。そこが難しい。特にドラマの現場では、僕なんかにあまり時間を割いてしまっては申し訳ないという気持ちが強いので、つい焦っちゃうんです」と笑う。

■ドラマの現場は「笑い的にはずっとスベっている感じ」

以前のインタビューで捜査一課・管理官の日下部七彦を演じている迫田孝也が、富澤との芝居について「いつかボケるんじゃないかとドキドキしている」と話していたが、芸人としての性も俳優業を行う上では、難しさになっている。「やっぱりここでボケたらウケるんじゃないか……という衝動にはものすごく駆られます」と笑うと「でもそれをやってしまってNGになったら、撮影時間も延びて迷惑がかかってしまう。だから結構グッとこらえているんです(笑)。でもその状況って、笑い的にはずっとスベっている感じなので、かなりしんどいんですよね」。

そんな富澤の苦悩とは裏腹に、製作陣からの評価は高い。本作をはじめ、『カルテット』や『大恋愛~僕を忘れる君と』など、話題作で強い個性を発揮している富澤。しかし「お芝居の勉強をしてきたわけではないので、正直怖いんですよね。『これで正解だろう』というものもないじゃないですか。だから常に撮影に入っているときはモヤモヤしています」と俳優としての自己評価はなかなか低い。続けて富澤は「特に日曜劇場なんて、多くの役者さんたちが目指すべき場所に、僕みたいな畑違いの人間が出ていること自体、申し訳ないって気持ちでいっぱい。本当に謝罪したいですよ」と語る。

一方で、ドラマのオファーをもらえることで、芸人として自信になっている部分もあるという。「やっぱりこうして声を掛けていただけるというのは、ちゃんと僕らのコントとかを見てくださっているからなのかなと思う部分はあります。その意味で、ドラマに出させていただいた経験は、しっかりとコントに活かしたいという思いはあります。実際できているかは分かりませんが、ドラマの題材でネタを作ったりもしているので、良い影響にはなっていると思います」。