東京大学(東大)は5月6日、大別して2種類の爆発機構が考えられているIa型超新星のうち、超高速度白色矮星を生み出すタイプの数百年から数千年後の姿である超新星残骸をコンピュータシミュレーションによって再現した結果、暗い穴とそれを取り囲む明るい輪という構造を持つことを明らかにし、今後の詳細な観測によってIa型超新星の起源を特定できることを示したと発表した。
同成果は、理化学研究所のジル・フェラン研究員、同・長瀧重博主任研究員、東大大学院 総合文化研究科 広域科学専攻の谷川衝助教を中心に、カナダ・マニトバ大学、パリ-サクレー大学の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
超新星爆発はそれを起こす天体の違いなどによって複数の種類があるが、“宇宙の標準光源”として遠方銀河までの距離の測定で活用されているIa型超新星は、白色矮星が起こすことがわかっている。
ただし、その爆発機構は2つの有力説が拮抗しており、現在でも決着していない。1つは、太陽のような“生きた”恒星と白色矮星からなる連星系において、強い重力で恒星から剥ぎ取られた物質が白色矮星に降り積もることで臨界点を超えて爆発を起こすというもの。もう1つは白色矮星同士の連星系において、片方の白色矮星からもう片方の白色矮星へ物質が降り積もることによって、臨界点を超えて爆発を起こすというものとなっている。
そうした中、近年、後者の説を支持する証拠とされているのが、秒速1000kmを超える超高速度白色矮星だという。白色矮星同士の連星系において、片方の白色矮星が超新星爆発を起こして跡形もなく吹き飛んだ場合、残された方の白色矮星は爆発に巻き込まれて破壊されなければ、超高速度で突如宇宙に放たれることになる。これが、超高速度白色矮星だというものである。この説は「Dynamically Driven Double-Degenerate Double-Detonation」(D6モデル)と呼ばれている。超高速度白色矮星の存在は、宇宙のどこかでD6モデルに基づいたIa型超新星が起こったことの間接的な証拠となるとされている。
そこで研究チームは今回、もしすべてのIa型超新星がD6モデルに基づいて起こるのならば、Ia型超新星の爆発後数百年から数千年の姿である超新星残骸にD6モデルの痕跡が残っているのではないかと推測。その痕跡がどのようなものかを明らかにするための理論研究を実施することにしたという。