• 井本早紀チーフディレクター

密着中の印象深い出来事の1つに、日本人の優しさがあったという。

「番組の映像には使っていないのですが、みんなで電車に乗ろうと移動していたら、男性の方が駆け寄ってきて、マトヴェイくんにロボットみたいなおもちゃを渡してくれたんです。マーヤさんがウクライナカラーの“おまもり”を身に着けていたので、もしかしたらウクライナの避難民と分かってくれたのかもしれません。ほかにも、ドーナツ屋さんに並んでいたら、知らない方がセットのジュースを『子どもたちにあげて』と渡してくれて。優しい人が多くて驚きましたし、マーヤさんや子どもたちがそれで日本のことを好きになってくれて、うれしかったですね」

日本語はもちろん、英語も話さないマーヤさんたち。密着においては、“言葉の壁”に苦労した。

最初は通訳スタッフに同行してもらっていたが、本人たちにインタビューする形で聞くと本音が出てこないと判断。何気ない会話のシーンでも何を話しているのか分からないまま撮影し、後で映像素材を翻訳してもらい、会話の内容を把握するという手間のかかる取材となった。だがその分、より自然な生活風景がカメラに収められている。

■「本当に身近にウクライナで苦労された方がいることを知ってほしい」

この戦争は、スマホやSNSの普及によって現地の映像が次々に発信され、生々しいリアルな惨状が伝えられている。それに加え、今回の番組で映し出される、避難民が日本で生活する姿によって、遠い国の戦争だった距離感が一気に近くなるはずだ。

「新宿の街をみんなで歩いていたり、小学校の体操服を買いに行ったりと、日常の姿を見せることによって、本当に身近にウクライナで苦労された方がいるんだというのを知ってほしいという思いがあるので、そこはかなり意識して番組を構成しました。遠い国の戦争のことを、日本に住む1つの家族を通して見ることで、実はすぐ近くで起こっている悲劇だと捉えていただければと思います」

今回の番組は、『めざましテレビ』らしい機動力で、直近4月28日まで密着した様子を放送。今後も、この一家の姿を取材していく予定だという。