きょう23日にスタートする日本テレビ系ドラマ『パンドラの果実 ~科学犯罪捜査ファイル~』(毎週土曜22:00~)。中村啓氏の小説『SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦』を原作に、最新科学によって引き起こされる“不可思議で不可解な事件”を、科学と捜査に長けた「科学犯罪対策室」のチームが解決していくというサイエンスミステリーだ。
天才的な捜査官が主人公で、事件解決もの、科学がモチーフ、架空のチーム……と、このドラマに並ぶキーワードは特に目新しいものはなく、既視感のあるドラマなのか?と思いきや、フタを開けてみると、見たことのない新しさが満載のスリリングな作品に仕上がっていた――。
■前代未聞の「ロボットとの会話劇」
まず、第1話で描かれる事件「AIロボットの犯罪」という点が画期的。物語は、とあるロボット開発企業のシミュレーションルームで窒息遺体が見つかり、その被疑者がなんと、最先端AIロボットの“LEO(レオ)”。なおかつ、自ら「私が殺しました」と自供するという超衝撃的な導入から始まるのだ。そこから、ロボットとの会話劇や、息詰まる人間対ロボットの取り調べへと発展していくのだから、まさに“前代未聞”。経験したことのない映像体験を味わった。
しかも、今作に登場するロボット・LEOは、小道具として用意されたいわゆる“作り物”ではなく、実際に現場で活躍している介護用ロボットだというからさらに驚く。撮影に向けて緻密なプログラミングが施されたことで、自然な掛け合い、豊かな表情まで生まれ、無機質な物体だからこそ、その奥からにじみ出てくる“人間らしさ”も実現させている。
未来のSFドラマだったロボットとの対峙(たいじ)が、日本のテレビドラマで、現代でもリアルに感じられるところまで到達できている。特に、人間対ロボットの取り調べはスリリングで、何をもって、どんな情報を用意して、ロボットを“落とす”のか。その過程が丁寧に描かれ、人間対人間の取り調べでは絶対に味わえない攻防戦が堪能できる。
■見たことのないディーン・フジオカの表情
もちろん、このドラマはロボットの活躍だけが見どころではない。主演のディーン・フジオカはもちろん、個性豊かなキャスト陣も新しい一面を見せている。
ディーンの主演で、謎を解き明かしていくというキャラクターと言えば『シャーロック』(フジテレビ)に通じる部分がある。紳士的な佇まいや彼独特のオーラを放つという点では共通するのだが、今作の主人公・小比類巻は、妻を亡くしたシングルファーザーという役どころで、より人間味のあるキャラクターになった。特に5歳の娘と戯れるシーンは、これまで見たことのなかった表情を見ることができる。
とは言え、やはりディーンが主演とあって一筋縄ではいかない。前半の人間味あふれる様子は、第1話ラストの大きな“振り”となっており、そのキャラクターに様々な想像を膨らませる。彼なら“さもありなん”と思わせてしまう存在感や奥深さを与えるのは、ディーンだからこそだろう。
そんな一筋縄ではいかない主人公とバディとなるのが、ユースケ・サンタマリア演じる長谷部。最近の出演作では、少し影があったり、裏の顔を持つキャラクターが多かった印象だが、今回は優秀な刑事ながら少しお調子者で、ツッコミも冴えわたる、(きっと)裏のないユニークなキャラクターとなっている。ユースケにしか出せない、丁々発止にも注目だ。
そして、こちらも主人公のバディで「科学犯罪対策室」のアドバイザーとして加わるのが、岸井ゆきの演じる天才科学者・最上。現代に生きるリアルな女性を演じることが多かった岸井だが、“一風変わった天才”というこれまでと全く逆のキャラクターを演じる姿が新鮮。天才で、“変”ではあるのだが、どこか親近感のあるかわいらしさも共存し、彼女だからこそのオリジナリティが加わっている。