この櫨山Pの目標に、局側も全面的にバックアップ。日本テレビホールディングスと、ウォルト・ディズニー・ジャパンが締結した「戦略的協業」の第1弾として、『金田一少年の事件簿』が「Disney+」で世界配信されることが決まった。
「世界に向けたものを作るということで、今回は結構な予算を頂けました。『金田一少年』はやってる世界が独特というか、美術や作り物にすごくお金がかかります。だからそこは、ちゃんと本格的にやらねばと思っています。これまで見たことないようなものを、“ジャパニーズホラー”という視点からどんどんやっていきたいなと思っています」
現在の日本のテレビドラマの立ち位置について、「最近ある作家と話したのですが、テレビドラマってフランス料理ではなくって、“納豆定食”なんじゃないかな(笑)。だけど“かっこいい納豆定食”だってあるよねって。そういう風に自分たちを1回客観視することが大切だと思うんです」と、独特の表現で解説。
その上で、「今回は横溝正史的怖さというものを現代のニーズにどう移植していくか。そのとき当然、これまでのノウハウとは違ったり、昔やっていたことが通用しなくなってきたりすると思います。だから今回の『金田一少年』では、その辺の描き方を探していく作業になると思っています」と見据えた。
■『金田一少年』シリーズが守り続けるもの
世界へ向けての目標や、映像的な挑戦がある一方で、これまでの『金田一少年』シリーズから守り続けているものは何か。
「今の世の中って、漠然と人を殺すみたいな、理由が分からない犯罪が多いじゃないですか。もちろん犯罪はよくないことではあるんですが、『金田一少年』の犯人は原作がそうなんですけど、もうそれはしょうがないよねという、どこか同情してしまうような“犯人の思い”みたいなものがちゃんとあるんですよ。そこで人間の情けみたいなものを描くのは、もしかしたら前時代的なことかもしれないけど、『金田一少年』の犯人にはみんな“人間ドラマ”がしっかりあるので、そこは変えずに見せていきたいと思っています。今の時代にこそ、そういうことが大事なんじゃないかと思うんです」
最後に、今作への意気込みを聞くと、「お茶の間の小学生が怖くて眠れなくなるものを目指します! でも、怖いけど面白い、怖いけど見ちゃう…そういうドラマにしようと思っています」とのこと。
“人気シリーズだから”という決して安易な理由ではなく、“人気シリーズだから”こそ、世界へ挑戦するという今回の『金田一少年の事件簿』が、どんなスケール感で再び視聴者を魅了させるのか。そして昔と変わらない、大人から子供までワクワクさせ、怖くて眠れない作品に仕上がるのを期待したい。
●櫨山裕子
1960年生まれ、鹿児島県出身。東京女子大学卒業後、83年に日本テレビ放送網入社。『金田一少年の事件簿』シリーズのほか、『銀狼怪奇ファイル』『サイコメトラーEIJI』『ぼくらの勇気 未満都市』『anego』『ハケンの品格』『ホタルノヒカリ』『きょうは会社休みます。』『世界一難しい恋』『母になる』『俺の話は長い』『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』などを手がける。