• フジテレビ

27年にわたって勤め、制作者としての原点であるフジテレビ。そこに対する思いを聞くと、「確信はないんですが、全盛期のエネルギーやパワーをギリギリ受けた世代だと思うんです。『爆笑ヒットパレード』という血をもらって、『かくし芸』も最後をやりましたし、『(爆笑)レッドカーペット』では(世帯視聴率)20%もとらせてもらえたし、『笑う犬』や『力の限りゴーゴゴー!!』でADをやって、星野淳一郎さん(※1)に大説教を食らった最後の世代ですから(笑)」と回想。

(※1)…『笑っていいとも!』『一億人のテレビ夢列島』『夢で逢えたら』『ダウンタウンのごっつええ感じ』などを手がけたディレクター

その中で学んだのは、「笑いやものを作るときのモラルですね。番組を作る、お笑いを作るという中で、“これをやったら『やっちゃダメ!』と自分の中で警報が鳴る”というのを確実にフジテレビに教えてもらいました。だから、演者さんに無理なことをお願いしてしまったと思ったら、絶対に『やってよかった』と最後に演者さんに言ってもらわなきゃいけないと思うし、今さえ儲かればいいという、焼畑農業みたいな考えは嫌いですね」と力を込める。

そこに関連し、「芸人さんはこれをやりたいとか、これが面白いとかっていうところじゃなくて、“これをやりたくない” “これやるの恥ずかしい” “カッコ悪い”と思っているところに、その人の真実や個性が出てくると思っていて、その個性、アイデンティティを生かすことを企画提案するときには意識します」と説明。

このノウハウを持った上で、「共テレに出向してから、『僕は外でフジテレビを作ります』と言ってたんです(笑)。特に、『ネタ番組は自分の局のことだけを考えたらダメ。演芸界のために仕事をすると言う気持ちでやるべきだ』ということを、吉田正樹(※2)さんから教えられました。だからTBSにも『ザ・ベストワン』のような番組がなければいけないと思うし、演芸界のために、出演する芸人さんや事務所さんに対するバランスを考えるというのも意識しています」と実践してきた。

(※2)…『笑っていいとも!』『夢で逢えたら』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『笑う犬の生活』などを手がけたディレクター・プロデューサー。現・ワタナベエンターテインメント会長

■『ザ・ベストワン』も進化「行けるところまで」

昨年10月にレギュラー化した 『ザ・ベストワン』(毎週金曜 20:00~) は、「ベストな芸人がベストワンのネタを披露する」というコンセプトで、劇場で活躍する関西の芸人や今年ブレイクする若手芸人など、“ここでしか見られないネタ”を次々に見られる番組に進化。

22日の2時間SPでは、大喜利のお題に対する回答をコントで見せる「ザ・ベストワンドロップ」が展開され、「男性ブランコ、ビスケットブラザーズ、ロングコートダディ、金の国、スクールゾーンとか、若いコント師の芸人さんでキラキラしてる人がそろってきているので、彼らにお題を出すことで新作コントが並ぶようにしています」と予告する 。

さらに今後は、直前に与えられた2つのお題を入れ込んだ漫才を披露する「ザ・ベストワンテイク」も予定。「これも今まで見たことのない漫才になると思うので、そうしたネタがどんどん増えていきます。若くて勢いのある芸人さんが出てきているので、“客前でネタをやる”という箱は守りながら、前向きに行けるところまで行こうと思います」と、自身の新たなスタートに重ねながら意欲を示している。

  • 『ザ・ベストワン』(TBS系、毎週金曜20:00~) (C)TBS

●藪木健太郎
1971年生まれ、三重県出身。早稲田大学卒業後、95年にフジテレビジョン入社。照明部から02年にバラエティ制作に異動して『アヤパン』『力の限りゴーゴゴー!!』『笑う犬』『新堂本兄弟』『爆笑ヒットパレード』などを担当。『爆笑レッドカーペット』『爆笑レッドシアター』『うつけもんシリーズ』『THE MANZAI(第2期)』『ENGEIグランドスラム』などのネタ・演芸番組を立ち上げ、18年から共同テレビジョンに出向。『ザ・ベストワン』『賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~』(TBS)、『NHKだめ自慢~みんながでるテレビ~』(NHK)、『#っぽいウタ』(中京テレビ)、『両親ラブストーリー~オヤコイ』(読売テレビ)、『ザ・マスクド・シンガー』(Amazonプライム・ビデオ)などを制作し、22年3月末で出向元のフジテレビを退社。メイクスマイルカンパニー「Sunny Pictures(サニー・ピクチャーズ)」を設立し、番組・映像・イベント制作などを手がけていく。