北海道大学(北大)、九州大学(九大)、関西大学(関大)、名古屋大学(名大)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の5者は4月21日、「群れ」の利点を取り入れて集団で協力して実働する、直径25nm、全長5μmの分子ロボットを開発することに成功したと発表した。
同成果は、北大大学院 理学研究院のモウシュミ・アクタ博士研究員、同・角五彰准教授、同・佐田和己教授、九大大学院 芸術工学研究院の井上大介助教、名大大学院 工学研究科の浅沼浩之教授、関大 化学生命工学部の葛谷明紀教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米科学誌「Science」系のロボット工学に関連する分野全般を扱う学術誌「Science Robotics」に掲載された。
群れとは、生物が見せる秩序だった集団行動であり、群れロボット工学はそれをベースとした学問で、すでにマクロスケールのロボットにおいては群れで活躍しているものもあるという。また、近年の技術革新により、ロボットのサイズは研究室レベルでは分子スケールにまで微小化されているという。こうした微小化によりロボットを大量生産しやすくなると考えられているほか、数の増加によって、さまざまな状況に対する柔軟性の向上も期待されるようになっている。しかし、これまでに磁場、電場、光などをエネルギー源とするマイクロサイズのロボットが開発・提案されてきたが、実効的なタスクの遂行にまで至ってなかったという。
そうした中、NEDOの「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」として、北大と関西大、東工大発ベンチャーの分子ロボット総合研究所の3者により、2000年からAIとVRを活用した分子ロボット共創環境の研究開発が進められてきており、その中で培われた技術などを活用しながら、今回は北大と関西大は、九大、名大、そして米コロンビア大学の協力を得て、形成・離散を遠隔で操作する機構が導入された分子ロボット群の開発に成功したとする。