東京都立大学(都立大)と東京農工大学(農工大)は4月19日、砂や粉などの粉体の「フォースチェーン」とゼラチンの高分子ネットワークが類似していることに着目し、物理ゲルを下から流動させたときと、砂が入った容器をひっくり返したときの流動の様子が酷似していることを見出し、定量的な解析を行ったところ、粉体系と物理ゲルとの間に定量的な類似性があることを発見、流体現象の類似性から砂の落下運動を明らかにすることに成功したと発表した。
同成果は、都立大大学院 理学研究科 物理学専攻の小林和也大学院生(現・農工大特任助教)、同・栗田玲教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
乾いた砂を上から降り注ぐと、最初は砂山が形成され、ある角度以上になると砂が斜面を滑って落ちていく。このように、砂や粉などに代表される粉体系のマクロな集団運動は通常の流体とは大きく異なり、粉体系の流動特性の特徴として一部の領域が流動化し、残りの領域は固体的な状態を保つという共存状態が形成されることが知られている。
これまで、粉体の運動は流体と異なるため、粉体特有な系として粉体のミクロなモデル研究が盛んに行われてきており、緩和などの局所的な動的性質の理解が進み、流動層の形成についての知見は得られつつあるという。しかし、マクロな集団運動についてはまだ研究事例も少なく、あまり理解が進んでおらず、どのように記述するのかまったくわかっていないともする。
粉体に力を加えたとき、鎖状に力が伝搬することから、それはフォースチェーンと呼ばれる。この力が系全体に広がると自重を支えることが可能であり、研究チームは今回、砂の入った容器をひっくり返すと、このフォースチェーンが下からちぎれて流動化すると考察し、高分子が系全体に広がっているゲルが類似していることに着目したという。
ゼラチンのような物理ゲルは、温めると高分子ネットワークが解けて液体的になる(ゾルゲル転移)。そのため、物理ゲルを下から温めると、下からネットワークが解け、流動化することが予想された。これは粉体系と同様の仕組みになっているため、同じような集団運動が期待できると推測し、実験を行うことにしたとする。