■新コースは吉都線に初入線、フェリーや島原鉄道も活用

小川氏の進行に戻り、次は「ななつ星 in 九州」新コースについて発表した。3泊4日の霧島コース・雲仙コースと、1泊2日の九州周遊コースが用意される。2022年10月から2023年3月までの出発分を第21期秋~冬コースとし、5月13日23時59分まで申込みを受け付ける。インターネットでの申込みは、「ななつ星 in 九州」専用サイトにて可能。郵送の場合、パンフレットに同封された申込用紙に必要事項を記入した上で、「クルーズトレインツアーデスク」宛に郵送となる。締切は2022年5月13日(当日消印有効)とされた。

3泊4日霧島コース(2022年10~12月)では、博多駅を出発した後、久大本線経由で大分県へ。その後、熊本・鹿児島・宮崎各県を周遊する。2日目には、九州屈指の海岸線に沿って走る肥薩おれんじ鉄道へ乗り入れ、3日目には、今年で開業110周年を迎える吉都線に「ななつ星 in 九州」が初めて入線する。大分・日田の小鹿田(おんた)焼と鹿児島の薩摩焼、2つの異なる背景を持つ焼き物を通じ、その文化と歴史に触れる。霧島妙見温泉への宿泊(2泊目)や、ユネスコエコパークである豊後大野・豊後竹田エリア(最終日)も体感することができる。

霧島コースの旅行代金は、2名1室利用の場合、スイートが125万円、DXスイートBが160万円、DXスイートAが170万円。1名1室利用の場合、スイートが180万円、DXスイートBが250万円、DXスイートAが270万円。客室タイプによって2泊目の旅館が異なり、スイートは「忘れの里 雅叙苑」「妙見石原荘」のどちらか、DXスイートB・Aは「天空の森」に宿泊となる。

  • 3泊4日霧島コースのルート。「ななつ星 in 九州」が初めて吉都線を通る

  • 大分・日田の小鹿田(おんた)焼のイメージ(画像:JR九州)

3泊4日雲仙コース(2023年1~2月)では、大分県経由で熊本に向かった後、熊本港からフェリーで島原港へ。長崎県から博多・門司港方面に抜け、最後に大分県国東エリアを堪能する。熊本市内では、泰勝寺跡にて細川流盆石(黒盆の上に自然石や白砂で風景を描く縮景芸術)を体験。長崎県内では、雲仙温泉に宿泊(2泊目)する。島原半島の種採り野菜(種を採り、世代を継いで育てる野菜)を3件のレストランに分かれて味わい、和華蘭文化にも触れる。最終日には大分県国東エリアにて、世界農業遺産に触れる。

移動手段にフェリー(2日目)や島原鉄道(3日目)を利用するため、「ななつ星」とは違う視点も織り交ぜられている。3日目のプランは、島原鉄道に乗車するか、雲仙温泉の自然に触れるか、どちらかを利用者が選択する。旅行代金は、2名1室利用の場合、スイートが115万円、DXスイートBが150万円、DXスイートAが160万円。1名1室利用の場合、スイートが170万円、DXスイートBが220万円、DXスイートAが240万円。

  • 3泊4日雲仙コースのルート。フェリーや島原鉄道を利用しつつ北・西九州を巡る

  • 盆石のイメージ(画像 : JR九州)

1泊2日九州周遊コース(2022年10月から2023年3月まで)は、博多駅を出発し、1泊2日で福岡・熊本・鹿児島・宮崎・大分各県を周遊する。2日間のコースとしては初めて九州南部を走行。夕方頃に肥薩おれんじ鉄道を走行し、太陽が沈む東シナ海を眺めながらディナーを満喫できる。九州西部・東部では、小さな海沿いの町で地域の人々との交流の時間も設けられる。車内で過ごす時間も十分に取られるため、新しくなった「ななつ星」の車内をゆっくり見て回ることもできる。

九州周遊コースの旅行代金は、2名1室利用の場合、スイートが65万円、DXスイートBが80万円、DXスイートAが90万円。1名1室利用の場合、スイートが90万円、DXスイートBが140万円、DXスイートAが150万円。他コースも含め、旅行代金はいずれも1人あたりの額となる。各行程の観光・散策は自由参加で、一部、希望者の事前予約を行うものもある。

SDGsへの取組みの一例として、10月から車内用のパジャマを一新。日本三大絣(かすり)である久留米絣を使用したパジャマが使用される。丁寧に織られた久留米絣は、強く、耐久性に優れ、100年前のものも現存しているほど。洗濯方法や、リネン類の廃棄についても見直し、長く大事に使用していくという。現在、久留米絣職人、デザイナー、クルーらで制作会議を重ねており、伝統工芸にデザイン性や特別感を加えつつ、100年先も着られるパジャマをめざしている。

  • 1泊2日九州周遊コース。夕方の肥薩おれんじ鉄道を通りつつ、九州を南北に周遊

「ななつ星 in 九州」は、運行開始当初から「世界一の車両・サービス」「九州を元気に」「九州を世界に発信する」との目標を掲げていたという。地域の関係者らと、「ななつ星」の旅を楽しんだ利用者のおかげで、それらはすべて叶えられたといっても過言ではないと話す。

しかし、「ななつ星」の運行開始後、熊本地震(2016年)や九州北部豪雨(2017年)、新型コロナウイルス感染症による列車の運休(2020年)など、苦しい状況が続いた。そのような希望を見失いがちな時代だからこそ、日本のクルーズトレインの先駆者としてチャレンジが必要と考え、「ななつ星 in 九州」第2章に至ったとのこと。最後に小川氏は、「私たちJR九州は、『ななつ星 in 九州』を、世界に誇れるクルーズトレインとして、さらなる挑戦をし続けてまいります」と締めくくった。