「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」――奇妙な遺言を受け、敏腕弁護士の剣持麗子(綾瀬はるか)が依頼人の篠田敬太郎(大泉洋)と共謀して遺産を狙う破格の遺産相続ミステリードラマ『元彼の遺言状』(フジテレビ系、毎週月曜21:00~)が、きょう11日にスタートする。

原作は弁護士でありプロ雀士でもある新川帆立氏で、宝島社主催の第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。昨今、映像化された作品に原作ファンから賛否両論が起こる光景がよく見られるが、新川氏も「原作の方が面白いと言ってもらいたい。でも原作を超えた作品になって、悔しがりたいという思いもある」と複雑な心情を吐露する――。

  • 『元彼の遺言状』原作の新川帆立氏

    『元彼の遺言状』原作の新川帆立氏

■綾瀬はるかの主演で懸念払拭「間違いない」

――まずは、自著の実写ドラマ化のお話を聞いて感じたことを教えてください。

大変ありがたいお話だと思ったのですが、一番はキャストの豪華さに驚きました。原作では主人公のキャラクターを非常に大切に書いておりましたので、誰が演じてくださるのかが一番楽しみでもあり、懸念でもあったのですが、綾瀬はるかさんは本当にイメージにぴったり。まずそこで、もう間違いないなと感じました。

――どうイメージに合っていたのでしょうか?

剣持麗子は強い女性で怖いところもありますが、どこか憎めないと言いますか。情に厚く優しい面もある。原作では「そこがいいよね」と言われていたので、怖いだけ、強いだけという演じられ方だと嫌だと思ったんです。そんな中、綾瀬さんは凛とした雰囲気がありながらも、どこかとぼけた雰囲気がある。そこがすごく合っていると思います。

――撮影現場にも行かれたそうですが、綾瀬さんとはどんなお話を?

綾瀬さんから「先生はテストがお得意なんですね」って。一度、有隣堂という書店さんのYouTubeチャンネルに出たことがあって、私、自分が東大出身ということもあり、「テストは得意?」という質問を受け「ええ得意です」というやり取りをしたんです。それをご覧になってくださっていたようでした。

役柄について話したことはないですね。私もぴったりだと思ってお任せしていますし、見ていて「大丈夫かな」と心配することもなく。とにかく本当に本の世界に入り込んでいるような再現度で、それについても綾瀬さんとお話をした記憶があります。

  • 綾瀬はるか (C)フジテレビ

■大泉洋のキャスティングに「そう来たか!」

――大泉さん演じる篠田の設定が違うなど、ドラマオリジナル要素が多くあると聞いています。原作者としてそこに不安は感じませんでしたか?

本筋に関わる部分で話の内容が違うところもあるようで、それでも実は私は脚本を読んでないんです。つまりどう変わったかが分からないんですね。それは、脚本を読んでしまうと出来不出来とは関係なく口出しをしてしまうから。クリエイターには私の原作を自由に使ってもらい、純粋に作っていただくことで、一番作品が良くなると感じているんです。

私もクリエイターとしてのこだわりがあるので、脚本を読んでしまうと、セリフを直したくなったり、自分が書くのならこうするという意見が湧いてくる。けれども、基本的にクリエイターは自由にモノづくりをしたほうが作品のクオリティが上がると思っています。だからなるべく自由にドラマを作ってもらったうえで、ドラマと原作の違いは、クリエイター同士の勝負みたいなところだと思っています。

  • 大泉洋 (C)フジテレビ

――勝負ということは、原作の方が面白いと言われたい気持ちもあるのでしょうか?

あるんですけど、原作を超えてほしいっていう気持ちもあるんです。「やられた、悔しい!」って(笑)。篠田役にオリジナル要素があり、それを大泉洋さんが演じるという点ではすでに「そう来たか!」という“やられた”感があります。原作とイメージは違うんですが、綾瀬はるかさんと大泉洋さんのコンビでこの物語が描かれるということは想像もしない組み合わせですし、大泉さんに演じてもらえるなら、それはそれで面白いというか。