• 食卓を囲むろっちゃん(左)とのりえさん (C)フジテレビ

そんなのりえさんだが、番組では円形脱毛症を打ち明けるシーンが登場。「やっぱり自分の責任において、ろっちゃんを育てていくという決意の中で、ものすごい葛藤や苦しみがあるのが伝わってきました」というが、「彼女はそれを表に出さないんですよね。特にろくちゃんの前でそれを一切見せないので、それはすごい精神力だなと思いました」と驚く。

それは、明るく振る舞うことで自分を奮い立たせようとしているのではなく、「カメラが入っていることも関係なく、楽しく生きたいという気持ちが強くて、どんなに家計が苦しくても、貧しい中でも、いろんなところに喜びを見つけられるのがすごく上手な人なんです」と、自然体で行われているのだそうだ。

番組では、のりえさんが「どんな生活の中でも楽しみを見つけて、生きていてほしい」とろっちゃんへの思いを語るシーンがあるが、これは今回のテーマに込められたメッセージでもある。

「この親子に初めてお会いしたときに、元ウルグアイ大統領のムヒカさんが言っていた『私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球に生まれてきたのです』という言葉を思い出して、取材中もずっと頭の中でぐるぐるしていたんです。幸せの尺度がコロナ禍で大きく変わってきた中で、幸せは自分で見つけていくものなんだということを感じ取ってもらい、豊かさやお金では測れない幸せの尺度を提案できるような番組になればと思います」

■婚活に奮闘していたミナミさんは今…

八木Dは『ザ・ノンフィクション』で、コロナ禍で孤独を深め、結婚相談所で婚活を始めた女性・ミナミさん(仮名)に密着して大きな話題を集めた『結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~』(1月16・23日放送)も担当。今回の番組と同時並行で取材を進めていたが、「私は主に“家族”や“幸せ”というのをテーマとして追っているので、ミナミさんと今回のシングルマザーの話は全く違う題材ですが、その人の人生を通して社会が見えてくるという点で、実は通底している部分があると思います」と語る。

そんなミナミさんは今月、めでたく結婚が決まった。番組として放送されたのは昨年秋までの記録で、婚活が思うようにいかない姿が描かれていたが、そこからさらに大きな成長を遂げていたという。

「実は放送をミナミさんと一緒に2人で見ていまして、ミナミさんは『キャー!』って恥ずかしがったり、『そんなこと言ってるから結婚できないんだよ!』と画面の中の自分に叫んだりしていましたけど(笑)、そういうあけっぴろげな性格が彼女の強いところだと改めて感じました。自分のダメな部分にしっかり向き合って、ちゃんと反省してそれを克服しようと努力するところは、本当に真似できない素晴らしいところだと思います」と話し、境遇が異なりながらもコロナに翻ろうされる2人の女性に、強く刺激を受けたようだ。

  • 八木里美ディレクター

●八木里美
1977年生まれ、東京都出身。学習院大学卒業後、青森朝日放送でニュースキャスター・記者・ディレクターとして取材現場に従事し、テレビ朝日『スーパーJチャンネル』を経て、04年にバンエイト入社。フジテレビ報道局で『スーパーニュース』を担当し、11年からは制作部でドキュメンタリー番組などを制作。『ザ・ノンフィクション』では、『愛はみえる~全盲夫婦の“たからもの”~』『わ・す・れ・な・い 明日に向かって~運命の少年~』『私、生きてもいいですか ~心臓移植を待つ夫婦の1000日~』『わすれない 僕らが歩んだ震災の10年』『結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~』などを担当し、11年間にわたって取材した『熱血和尚』シリーズでは、「第36回ATP賞」グランプリ、「2020年日本民間放送連盟賞」テレビ教養番組部門・最優秀賞、「第57回ギャラクシー賞」奨励賞、「ニューヨークフェスティバル2020」ドキュメンタリー宗教/哲学部門・銀賞&国連グローバルコミュニケーション賞・銅賞と、国内外で数々の賞を受賞した。現在はほかにも、『フューチャーランナーズ~17の未来~』(フジ)で総合演出を務める。