ひなたが安子をるいに引き合わせるという展開がなんともニクイが、堀之内氏によると、それも脚本家の藤本有紀氏が、初期段階で想定していたそうだ。アニーを描くうえで、『ラストサムライ』(03)などのキャスティングディレクターとして知られる奈良橋陽子氏から話を聞いて、その内容を脚本に反映したそうだ。

「奈良橋さんから伺ったお話は、大きな物語の骨子を決める上でとても重要でした。安子はるいを置いて渡米してしまいますが、どうやって帰国させるかは悩ましいことでした。時代劇や映画村の話にすることが決まり、あの時代にエポックメイキングな作品として『ラストサムライ』があったので、奈良橋さんのような存在の方が、安子=アニーとしてやってきたら面白いよねという話になりました」

安子とるいをひなたがつなぐという流れも秀逸だが、同シーンで、2人を見守るひなたの表情も忘れられないと堀之内氏は言う。「ひなたがすごくいい表情しているんです。僕はドラマを作る醍醐味のひとつって、これまでに見たことがないような表情や、名付けようのない感情を、いかに生み出せるかということだと思っています。その時の川栄さんの顔は、まさにそれでした。すごく頑張ったんだけど、決してでしゃばらない。まさにサムライ。『よくやったね、ひなた』と言いたくなりましたし、ちょっとダメだったひなたからの成長も相まって、何度思い出してもぐっときてしまいます」と語る。

言わば、物語上でも、現場でも奇跡が起きていたのだろう。そこは細かい演出をしなくても、女優陣が素晴らしい演技を魅せてくれたそうだ。「森山さん、深津さん、上白石さん、川栄さんたちは、芝居でどうとかするということではなく、もうある程度、シチュエーションで動けるようになっていたというか、皆さんがもう何をやるべきかを分かっていた感じでした」

いよいよ残り1回。明日の最終回もきっと予想だにしないフィナーレを見せてくれるに違いない。

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