また、橘算太役の濱田岳が老けメイクで晩年も通して演じるなかで、安子役が森山に、村上虹郎演じる雉真(きじま)勇役が目黒祐樹にと、バトンタッチした理由も聞いた。

「算太役を、老けたら別の方にお願いするということはあまり考えませんでした。それは、算太を濱田岳さんが演じて下さると早々に決めて頂いていたからです。濱田さんなら、13歳から晩年の算太役まで絶対できると、そこはチーム全員が確信していました。ご本人は、『13歳はさすがに子役がやるだろう』と思われていたのですが、『お願いします』と伝えたところ苦笑されていました。濱田さんのお力に甘えてしまったのですが、でもお一人で第1週から第20週まで演じて頂いたことで、算太という存在はこのドラマの中で本当に特別なものになりました。晩年、算太がひなたと出会ったり、回転焼を食べに大月に来たりする場面で、登場人物たちは普通に会話しているだけなのに、見ているこちらはドキドキするというとても面白い状況が生まれたのは、濱田さんお一人に演じ切って頂いたことが大きかったと思います」

現在濱田は33歳。撮影時点ですでに30代だったことも大きかったようだ。「もしも濱田さんが20歳ぐらいであれば、晩年の算太役はお願いしてなかったかもしれません。若い方にも、年齢を重ねた方にも振ることができる今の濱田さんだからこそお願いさせて頂いたというところはあったかと」

そこでは、共演者との兼ね合いも考える必要があったと言う堀之内氏。「安子役については、初期段階で特殊メイクを使用して数十年後も演じて頂くことは選択肢から外しました。大事にしたのは、どうすれば安子、るい、ひなたの一番いいお芝居が生まれるかということ。それには、アニー役には相応の年齢の方を選んで、年齢的な関係性を自然にしておいた方がいいと。その方が、深津さんや川栄さんとしても演じやすいのではないかと考えました」

この弁を聞いて、大いに納得。それにしても、今後、安子とるいはちゃんと再会できるのだろうか? そして、ひなたは二人の橋渡しになれるのだろうか?視聴者ともども、そこを大いに期待せずにはいられない。

(C)NHK