ついに最終週に突入したNHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)。初代ヒロイン・安子(上白石萌音)と、森山良子演じるアニー・ヒラカワは同一人物なのか?という議論がネットで白熱するなか、森山演じるアニーが安子だったことが判明。制作統括の堀之内礼二郎氏に森山の起用理由について尋ねると、「奇跡の巡り合わせでした」と驚きのつながりを明かしてくれた。
安子と、娘・るい(深津絵里)、孫・ひなた(川栄李奈)の3世代にわたる物語が、ここへ来てようやくつながった。藤本有紀氏の脚本は本当に緻密で、怒涛の伏線回収に視聴者から大きな反響を呼んでいる。
「ネットで、アニーが安子なのか、それとも違うのかと、まるでミルクボーイさんの漫才状態だと盛り上がっているのを見ました(笑)。色々なご意見やご推察があったかと思いますが、火曜日の放送以降は、ご本人の告白通りアニーは安子自身であるということを受け入れて頂けたら」という堀之内氏。
アニーは安子であると有力視されながらも、“ヒラカワ”という名前から、安子ではなく、ラジオ英語会話講座講師・平川唯一の血縁者ではないかという憶測が出た。彼女が仕事で映画村にやってきた時、初めて日本に来たと言っていたし、全く日本語を話さなかったからだ。しかし、回転焼きを食べる時、なにか含みを感じさせたり、丁寧に手をついて頭を下げたりする所作が日本人らしいと指摘されたことで、またアニー=安子説が急浮上した。
森山演じるアニー・ヒラカワについて「本当に太陽のような方で、笑顔がとてもチャーミング」と絶賛するが、起用の決め手はどこにあったのだろうか。
「ある意味で4人目のヒロインと言っても過言ではないような存在だと思っていました。上白石萌音さん演じる本当に魅力的な安子さんを受けてのヒロインになるので、どういう方にオファーしたらよいのだろうと、すごく悩みました。そのなかで大事にしたかったのは、視聴者の方々が、初めて出会ったような感覚が持てる方がいいなという感覚でした。経験豊富で演技力もある素敵な女優さんたちも考えましたが、アメリカで日系人として生きているという異邦人らしさ、異質な輝きを放っている方がアニーさんのイメージに重なりました」
■2つの運命的な巡り合わせにスタッフ陣も驚き
そこで白羽の矢が立ったのが、歌手でタレントの森山良子だ。しかも、森山の父、故・森山久は日系2世のトランペッターで、ドラマで安子、るい、ひなたをつなぐ名曲「On the Sunny Side Of the Street(オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリート)」を演奏したルイ・アームストロングとも親交があったというのだ。
この運命的な巡り合わせには堀之内氏らスタッフ陣も驚いたそうで「キャスティングを相談した時に、初めて教えていただいたことですが、そんな偶然があるのかと。縁が深いというか、まるで導かれていたような出会いをしたなと感じています」としみじみ語る。
「また、森山さんは普段、ジャズをすごく素敵に歌われているし、英語の発音が素晴らしいんです。アニーはほとんどの場面が英語でのお芝居でしたが、森山さんならきっと英語も大丈夫なんじゃないかと、期待していました。実際、一朝一夕にはできないネイティブのような発声でイメージ通りでした。声の質感や音の抜き方などもそうですが、森山さんのお父様がすごく英語の発音に厳しい方だったらしく、幼いころからすごく熱心に教えてくださったそうです。森山さんは海外でもたくさんライブをされていらっしゃるので、英語でのコミュニケーションの感覚をお持ちだったのも、芝居を作る上で大変助けられたと思います。アニーさんが最後の最後まで安子なのか、そうではないのか、とはっきりしなかったのは、森山さんの絶妙なお芝居あってのことだったと思います」
もう1点、森山が安子役に決定したあとで、驚いたことがあったと言う。「安子と比べ、姿形が違いすぎるのは避けたいという思いはありました。例えば、上白石さんは小柄なので、晩年の安子役を背が高くてすらっとした人が演じたら、全然違うとなってしまいます。そういう意味で、上白石さんとあまりかけ離れていない人がいいと思っていたのですが、なんと上白石さんと森山さんは、奇跡的に身長も一緒だったんです。そこまでは狙ってなかったので、びっくりしました」。それは、キャスティングの相談の際に話していく中で、初めてわかったそうだ。