有名な昔ばなし「桃太郎」をヒーローモチーフにした新番組『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』がテレビ朝日系で好評放送中である。スーパー戦隊シリーズ第46作にあたる本作は、「スーパー戦隊」のヒーローキャラクターの概念を大きく変えた『機界戦隊ゼンカイジャー』(2021年/第45作)のチャレンジ精神を受け継ぎ、スーパー戦隊のふり幅をさらに広げようと、メンバーひとりひとりの個性を際立たせる工夫が行われている。
今回、単独インタビューに登場するのは、キジブラザー/雉野つよしを演じる鈴木浩文。キジブラザーにアバターチェンジ(変身)する力を授かったつよしだが、普段は地味で平凡なサラリーマンだという。およそ正義のスーパーヒーローらしからぬ庶民感覚が持ち味のつよしを、俳優・脚本家としてすでに実績のある鈴木がどのように演じるのか。人柄のよさが内面からにじみ出るかのような、言葉の数々をお読みいただきたい。
――まずは鈴木さんが『ドンブラザーズ』のキジブラザー/雉野つよし役に決まったときのお話を聞かせてください。
僕自身、30歳を過ぎてヒーローになれるとは思っていなかったので、ずっとこのオーディションは受かるわけないぞ、決まったとしてもヒーローの横にいる科学者とかだろうなと想像してたんです。途中から、どうやら本当にヒーローっぽいぞという感じになっていきましたが、最終審査まで信じられなくて、決まりましたと知らされた後でも、あまり実感がありませんでした。
――オーディションを受けられたのには、どういう経緯があったのでしょう。
後で知ったのですが、今回のオーディションには「25から30いくつまで」の年齢枠があったそうなんです。マネージャーもその応募要項を確認して資料を提出したんだと思います。そんな枠があったのは僕にとってラッキーですし、しかも僕を選んでくれてさらにラッキー。本当に「あっ、受かってしまった」みたいな感覚です(笑)。
――出演が決まったと知らされたとき、真っ先に連絡された方はどなたですか。
演劇ユニットで稽古中だったので、1次審査、2次審査ともに「受かった。じゃあ次は」みたいに稽古場でずっと仲間のみんなに話していたんです。結果発表もメンバーに言ったのが最初です。仲間が喜んでくれたのが、なによりうれしかったですね。
――鈴木さんが演じる雉野つよしとは、どういった人物なのでしょうか。
平凡なサラリーマンで、衣装もずっとスーツ姿です。僕はもともと銀行員をやっていて、このままずっとスーツを着る仕事が続くのもイヤだなあと思って役者になったのに、またずっとスーツを着ているという(笑)。
――鈴木さんが思っている「スーパー戦隊」の基本的なイメージと今回の『ドンブラザーズ』は違っていましたか。
いろいろありますけれど、僕が演じるキジブラザー/雉野つよしが「ピンクの戦士」だったりするのも、珍しいんですよね。撮影がはじまったばかりのころは「最近は、ピンクを男の子がやるのかな」みたいに漠然と思っていましたが、実は今回が初めてだと聞いて、『ドンブラザーズ』が想像以上に異色のスーパー戦隊になりそうだなと思いました。
――妻帯者の会社員、しかも世を忍ぶ仮の姿ではなく100パーセントサラリーマンというのは、スーパー戦隊シリーズの中でもかなり珍しい人物設定だと思います。
面白いんですよ。つよしには奥さんがいるし、会社で真面目に働いているし、ヒーローっぽくないヒーローですよね。サラリーマンの役だからしっかりしていないといけないのかなと思っていたら、そうではなかったですね。ちょっと気の弱い設定で。
――アバターチェンジ(変身)した姿のキジブラザーを初めて見たとき、どう思われましたか。
みんなと顔合わせをしたとき、すでに番組ポスターが完成していたので、そこで初めてキジブラザーを目の当たりにしました。まあビックリしましたね(笑)。でもその日はオーディション合格のサプライズ発表があって、同じ日に顔合わせ、台本と設定書をもらったので、1日で得るにはあまりにも情報量が多すぎて、ずっとドキドキしていた感じでした。
――撮影に入って、スーパー戦隊シリーズならではの体験をされたことはありますか。
それはもう、ヒーローが実際に動いているところをこの目で確認できる。これに尽きます。今の僕でもワクワクするんですから、全国の子どもたちが観ると、もっと興奮するに違いないです。
――鈴木さんはメンバー最年長とうかがっています。4人の仲間とのチームワークはどんな感じでしょうか。
最初は僕だけ年齢が上なので、僕と他の4人に分かれる形になったらどうしようと心配していました。一応接してくれているけど、明らかに気を遣っているのがわかる~とかですね(笑)。でも実際にはそんなことまったくなくて、みんな気さくに声をかけてくれます。僕が子どものままなのか、みんなが大人なのかはわかりませんが、すごく仲がいいんです。撮影が終わって、少し時間があまっているときなんて、誰かが言い出して「台本の読み合わせをしよう!」と集まり始める。すごくいいチームワークですし、僕も素敵な時間を過ごさせていただいています。