勝地は今回のオファーの前から、「生ドラマ」に興味を持っていたという。
「(『8時だョ!全員集合』で)ドリフが公会堂とかにお客さんを入れて、舞台に近いような形でコントを披露して、それがテレビで切り取られて生放送されるいうのをやっていたじゃないですか。今はなかなかできないと思うんですけど、そんなことができればいいなと漠然と思っていたんです」
そんな矢先に舞い込んできたのが、昨年の年末に放送されたスペシャルドラマ『志村けんとドリフの大爆笑物語』(フジテレビ)の加藤茶役。ここで再現のレベルを超えて本格的にコントに挑み、生放送で演じることへの思いが強くなると、今度はこの「生ドラマ」というチャンスがやってきた。
この巡り合わせに、「僕の役者としてやりたい夢がもっと広がっていくといいなと思いました」と目を輝かせ、「例えば、舞台の開演前から本番に立つまで、スタッフと役者たちがダメ出ししているところを30分の生ドラマで放送して、本当の舞台が客前で上演されるとか。ほかにも、めちゃくちゃしっかりしたドラマのセットで生放送の芝居をやってみるとか。そういう新しいことができれば、テレビや演劇がもっと面白いって思ってもらえるんじゃないか」と、アイデアは尽きない。
■「それに出るメリットって何?」否定的な反応も
そんな期待を胸に今回の稽古に入ったものの、役者仲間からは「それに出るメリットって何?」と否定的な反応も多かったのだそう。それを聞いて、「たしかに、勝地涼という役者がこれに出ることによって損をするかもしれないと思って、僕も正直メリットは何なのか分からなくなっちゃった時期があったんです」と打ち明けるが、「ある先輩から『メリットなんてないだろう。この企画が面白いんだから』と言われたときに、ハッとなって、最初にこのオファーを受けたときの感覚に戻れた感じがしたんです」と、新しい取り組みに挑む意義を再確認した。
そこからはギアを入れ直し、「よし、とことん現場でぶつかってやっていこうと思いました。楽しいことをやるってことは、つらいこともあって、嫌なことを言わなきゃいけないこともあるので」と決意。
「時間がない中で、今回は少し『うるさいな』と思われるくらい、かなりガンガン意見を言っています。それは、最後に終わったとき、『ありがとう』と言って握手するためのものなんです。自分が偉いとかじゃなくて、自分も言うことによって助けられたり、解消されることができてくるので、なるべく言うようにしてますね」と、座長として現場に緊張感を作っている。
そんな勝地の姿勢に、奥村監督は「1日目からすごく伝わってきたので、劇団の俳優たちも含め、気合いが入りますね。ただ、勝地さんは『僕がこうしたいんです』と言ったら絶対否定しないですし、楽屋で2人で話す機会も結構設けてもらって、自分の気付きがたくさんありました」と、短い稽古期間でのコミュニケーションも充実。
さらに、「直したいところばかり言ってたら、褒める時間があまりなくて焦りまして。『ここはこうして…』ということばかり言ってると自信がなくなっちゃうので、普段は『ここは大丈夫だから』と伝えるのを意識してるんです。だから、最終的には自信を持ってスタートさせたいと思います」と、前代未聞の生本番へ意気込んだ。