■コンビの今「一緒にいることが“面白い”に繋げられる」
前述したが、徳井の芸人を綴る言葉には深い愛が感じられる。本来なら他の芸人はライバルであり、少ない人気者のイスを奪い合う敵という見方もできる。しかし徳井は褒めたたえる。まさに悟りの境地なのだろうか――。
「あまりその部分を深く考えたことがないのですが、なんとなく芸人の世界を、他業種に感じているのかもしれません。僕ら芸人がものすごく美味しいご飯屋さんに行っても、嫉妬しないじゃないですか。その意味では僕は自分が芸人という感覚をあんまり持っていないのかもしれません。僕から見ても、もっと売れるべきだなと思っている人がたくさんいる。何で売れないんだよ! って思う方がイライラするんですよね」。
ただ“面白いと思われたい”ということ以外、欲はないという。
「まあ、変なんでしょうね。もちろんお金もあった方がいいと思うし、いい暮らしという意味では、貧乏よりもいいのかもしれませんが、もしいま食えなくなっても、その状況を楽しむことはできると思います。辛い仕事のとき、楽しさを見つけて脳みそを書き換えるのはうまかったです。自己啓発の鬼ですね(笑)」。
“落ちぶれた”と言われても気にならないが、“面白くないね”と言われた方がつらいという徳井。そんな徳井から見ても、芸人の世界には面白い人がたくさんいるという。
「いろいろな面白さはあると思いますが、面白さの純度で言えば、僕なんかは1000位に入れるかどうかだと思います。だからこそ、やっぱり面白い人は売れてほしいですよね。純度は満たしているのだから、どれだけ薄めるか……そこはやっぱりやり方だと思います」。
まさにお笑いコンサルタントとも言えるような徳井の発言。『M-1グランプリ』など、コンテストの審査員などには、どんな印象を持っているのだろうか。
「そもそもそんなオファーはないと思いますが、やりたくはないですね。まず2~3時間の間『お前みたいなもんが何を!』という視線にさらされることが辛いじゃないですか。でも、もしやらないか? と言われたらやります。だって『ビビッて逃げやがったな』と思われるのは腹が立ちますからね(笑)。そうだな、どうせやるなら『どうやったら売れるか選手権』みたいな番組の審査員だったら僕にでも務まるかもしれないので、やりたいですね」。
現在41歳の徳井。吉村とは「兄弟になった」と言うが、彼が描く未来予想図とは。
「さすがにもう吉村から『解散したい』とは言われないかなと思うのですが、もしそう言われたら理由を聞いてみたいですね。たぶんそういう未来はないような気がします。今は一緒にいることが“面白い”に繋げられると思うので」。
1980年9月16日生まれ、北海道出身。2000年、東京NSCの同期・吉村崇とお笑いコンビ・平成ノブシコブシを結成。フジテレビ系『ピカルの定理』(2010~2013)で人気を博す。近年は、テレビ東京系『ゴッドタン』の人気企画「腐り芸人セラピー」でのトークや、芸人やお笑い番組を愛情たっぷりに考察することでも注目を集めている。趣味は麻雀、競艇など。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。