――今回の作品は、「夕方のニュースでは、毎日冒頭で隕石と地球の距離が発表される」というシーンもあり、新型コロナウイルスの感染者数が毎日夕方に伝えられる現実の世界を想起させられます。

自分がいつコロナにかかるか分からないという状況の中で、我慢したり、不安を抱えて出かけたり、愛している人が感染してしまったらどうしようかと思ったりするところが、少しリンクするんですよね。当たり前のことが幸せだったと気づける人間でないといけないと思ったので、今このタイミングで発するこのドラマのメッセージというのは、すごく意味のあることだと思いますね。

――コロナ禍を経験されて、人生観に変化はありましたか?

私はもともとそばにいる人たちを愛していて、今は母親と娘と住んでいるんですけど、2人が元気に笑って生きているということが自分の支えになっていました。だから、コロナ禍になって「当たり前のことが幸せだった」ということもよく聞きますが、私が20歳とか30歳とかならそう言ってたかもしれないけど、もう39歳で気づいちゃっていたので(笑)、この不安の中でもすごく幸せを感じていたんです。コロナで結構落ち込んでしまった方もいらっしゃって、その気持ちも分からなくはないんですが、今回のドラマを見て、本当に幸せなものは何かということを探し出せると思います。

――そうすると、もし実生活で地球最後の日が来ると分かっていたら、どんな行動をとりますか?

相手の同意にもよりますが、私は娘とずっと一緒にいます。何事も起きないかのように、ウソでもいいから「あなただけは守る」と言って恐怖を取っ払って、娘と2人でずっと一緒にいると思いますね。

■朝ドラマに真木よう子…「第一候補ではなかったはずだ」

――今回のドラマは毎朝同じ時間に放送され、視聴者にとって習慣的に見ると思うのですが、ご自身の朝の習慣というのはありますか?

カフェオレがすごい好きなので、毎朝飲みます。ブラックは苦すぎてちょっと苦手なので。

――真木さんは今作で、3年間修業して完成させたオリジナルコーヒーを出すという喫茶店の店主の役ですが…

あっそっか! でもまあ、仕方ないじゃないですか。殺人犯の役が来たのに人殺ししてないのにねっていうことになっちゃいますから(笑)。そういうことですね。

――確かに(笑)。喫茶店はよく行かれますか?

行きます行きます。昔ながらのタバコが吸える喫茶店とか、好きなんですよ。あの純喫茶っていう雰囲気がいいですよね。すごいおばあちゃんが1人でやってる喫茶店に行って「カフェオレお願いします」って頼んだら、しばらくしてお盆を持ってガタガタ震えてこぼしそうな感じでやってきて、私の前で立ち止まったんですよ。「えっ!? 立ってる!」と思って、一瞬で頭の中でぐるぐる考えて、「取れってことか!」と思って、「すいません」って言いながら取って飲みました。そういう独特の雰囲気が、人間味があっていいですよね。

――では、改めまして今回のドラマの見どころを伺えればと思います。

なにせ妊娠してしまっているという役柄で、もう1つの生命が宿っている状態で隕石衝突が迫るという事態が起こってしまうというのは、今回のコロナ禍でも似たような境遇になった方もいらっしゃったと思うし、おそらく共感できることもあると思うんです。

それと、やっぱり私は今回のキャスティングで第一候補ではなかったはずだと。「朝のドラマに真木よう子を使おう」なんて、私だったら思わない(笑)。だから、とにかく妊婦さんで大変そうに見えるけど、コーヒーを愛して、人柄はとても良いというこの朝ドラマの役に似合う真木よう子というものに挑戦しているので、そこを見ていただければ。

――朝ドラへの出演願望というのはあったのですか?

やっぱりオーディションは受けてましたよ。1回だけ最終審査まで行ったんですけど、まあ落とされましたね(笑)

――今回も“月曜日の主役”をオーディションで決めるという試みがありましたが、真木さんの若手時代で印象に残るオーディションはありますか?

私は17歳まで無名塾にいたんですけど、そこから前の事務所に入って映画のオーディションを受けたんですね。それまで舞台の演技を百何公演もしてきたから、手や足の動きが大きくて、どこまで届いてるんだっていうくらいの声の張り方で演じてしまって。でも、その監督がすごく良い方で「もう少し抑えてみようか」とちゃんと指示をしてくれて、結果その作品は合格したんですよ。珍しいと思われたんですかね(笑)

●真木よう子
1982年生まれ、千葉県出身。無名塾を経て、01年に『DRUG』で映画デビュー。その後、『バトル・ロワイアルII/鎮魂歌』『パッチギ!』『ゆれる』などの映画、『SP 警視庁警備部警護課第四係』『龍馬伝』『最高の離婚』『問題のあるレストラン』『ボイス 110緊急指令室』などのドラマに出演。今年はドラマ『サヨウナラのその前に Fantastic 31 Days』のほか、映画『ある男』の公開が控える。

スタイリスト/小林祥子
ヘアメイク/荒井智美