• 山田貴光ディレクター

長年、秋山木工を取材する中で、「ある時、丁稚さんに『山田さんも丁稚ですね』と言われたことがあります。取材者として常に客観という意識は持っているのですが、どこかで丁稚的な心になっているのかもしれませんね(笑)」と、山田D自身も学ぶことが多いのだそう。

「怒られてきついけど、そこに飛び込んで自分を変えたいという丁稚の気持ちもそうだし、修業をやり遂げた職人のお披露目会や『技能五輪』で戦う姿も目の前で見させてもらって心を震わされますし、秋山社長の説く職人心得や親孝行の大切さも、言葉にできない学びがありますね」と、知らず知らずのうちに吸収しているものがあった。

この「親孝行」の教えは、秋山社長が特に大事にしていることだ。

「家具づくりってお客さんを『こんな素敵なものを作ってくれたんですね』と喜ばせる仕事だから、それをやるには一番近い自分の親を喜ばせないとできないという考えがあるんです。だから、修業のレポートを親に送ったりして、親と一緒に育てる。自分だけだと、自分が諦めたらすぐ辞めてしまったり、自己流に走ってしまったりするけど、“親のため”という思いがつながっていると、修業の推進力にもなる。それは、社長自身の体験から来ているので、親御さんや家族の存在は、この丁稚制度で外せないところなんですよね」

その思いが根底にあるからこそ、「コラ!」「分かってんのか、お前ら!」「バカタレが!」と厳しい言葉で叱る中でも愛情が伝わり、秋山社長が慕われる理由なのかもしれない。

「後編」では、2017年組と2019年組の間の亀裂が、職人になった先輩たちも巻き込みながらさらに深くなっていく。秋山社長が秋山木工50年の歴史で初めてとなる苦渋の決断を下す場面があり、「長年取材してきた中でも、思わぬ事態が起こっています」と予告。さらに、修業から脱落する丁稚の決断なども描かれる。

  • 技能五輪に挑む (C)フジテレビ

●山田貴光
1970年生まれ、千葉県出身。制作会社・ドキュメンタリー SAMURAI代表取締役。『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)、『ドキュメント にっぽんの現場』(NHK)、『ガイアの夜明け』(テレビ東京)、『奇跡の地球物語』(テレビ朝日)、『夢の扉プラス』(TBS)といったテレビ番組のディレクターや、『わたし家具職人になります』、『あい ゆめ わ 出会いのアート』といった映画の監督を務める。