フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、27日に放送された『ボクらの丁稚物語2022 ~涙の迷い道と別れ道~ 前編』。令和の時代に「丁稚奉公」で職人を目指す家具製作会社・秋山木工に飛び込んだ若者たちを追った作品で、3月6日にはこの「後編」が放送される。
酒もタバコも恋愛も禁止、スマホは私用で使えず、家族への連絡は手紙だけ。さらに、修業期間は男女ともに丸刈りとなる厳しい環境で奮闘する姿が映し出されているが、同社を15年以上見続けてきた山田貴光ディレクター(ドキュメンタリーSAMURAI)に話を聞くと、時代の変化とともに、秋山木工の門をたたく若者たちも変わってきているのだという――。
■若者たちの変化に秋山木工社長も葛藤
指導する口調はきつく、厳しいルールを課す中でも、秋山木工には自主性を重んじる社風があるそうで、「例えば、スマホ禁止と言っても毎日チェックしているわけではないんです。先輩・後輩の関係でいい意味での密というか、おせっかいもあって、自主的に守っていくというところがあります」(山田D、以下同)という。
そうすることで、丁稚同士の連帯感が生まれ、脱落しそうになる人がいると周囲が察知。励ましの声をかけられると、再び目標である職人を目指し、そこに到達することができるシステムが確立されてきたが、そうしたコミュニケーションは、「近年は薄れてきているのを感じます」と話す。
また「前編」では、入社前に取得する決まりであるそろばん3級に合格していなかったり、日課である朝のランニングに後輩のほうが遅刻してきたりと、 “約束事が守れない” 新人たちの姿が見られた。
2005年から秋山木工を見てきた山田Dは「時代の変化に伴って人も変わってきているというところがあると思いますが、秋山木工は、そんな社会を映していると思います。令和の時代に珍しい丁稚制度ですけど、実はどこの世界にも通じるところがあるので、興味を持って取材してきました」と、題材としての意義を説明。
「ものづくりという点で言うと、僕らディレクターも、『新しい人をどう育てようか』とか、『こういうところをケアしないと辞めちゃうよね』という話題は共通ですので」と、共感する部分が多いという。
そんな時代の変化に対し、「秋山社長も、どう変わればいいのかというところと、変わってはいけないというところの狭間で、ある種葛藤しているようなところがあると思います」と推察。
ただ、「秋山社長が家具職人として名人の道に進むより、人づくりをしようと思ったのは、社長の上の世代が“あぐらをかく職人”だったからだそうなんです。お客さんにちゃんと感謝して、営業もできるような、“あぐらをかかない職人”を育てないと、手加工の家具業界はダメになってしまうという危機感があったとおっしゃっていて、そこでも世代間のギャップがあったんです」という経験があるからこそ、変化に抗うだけでない柔軟な姿勢も持ち合わせているようだ。
■先輩への反抗でまさかの失踪
コミュニケーションの希薄化で言うと、「前編」では、2017年入社組の3人に対し、後輩である2019年入社組の山田さんとの間に大きな溝が生まれていく状況が描かれたが、それは「完全に山田くんのキャラクターだと思います(笑)。彼は2017年組より上の先輩に尊敬していた人がいるんですが、その人が丁稚から抜けてしまって、どうしても比較してしまったんです」と解説。
ただ、入社希望で面接に来た若者を新幹線の駅まで見送った直後に、2017年組への反抗で姿を消してしまうという事態は、「さすがに僕もびっくりしました」といい、「戻ってきてきた後に話を聞くと、彼なりの正義がちゃんとあって、すごくピュアで真面目でウソがない人なんだと思いました」と、その個性を受け止めた。