――渡部さんによるビジュアルコンセプトをみなさんが共有していたからこそ、そういったイメージのすりあわせが実現したのですね。

僕からみんなに「当時みたいな外見に戻してね」とは言っていないんですよ。ただ、りょんくんとはこの企画が「動き始めるかも」というタイミングで電話をして「アンクってああいう役だけど、出来そう?」と話しながら、お互いの意志をひとつにまとめていました。2人で「当時のキャラクターに、完全に戻す」と決めましたが、他の人には言ってないんですよ。でもみんな変わってなかったですね。

――みなさん若々しいままではありますが、渡部さんの顔つきひとつにしても、10年の間に培った人生経験がちょっとした表情の中にうかがえるのではないかと思います。

自分で自分の顔を見ても、18歳のころとはやっぱり違う印象にはなります。あのころは子どもでしたから(笑)。今回は、みんなちゃんと大人の顔つきになっています。岩さん(岩永洋昭)も昔は肌のハリがあったけど、今回は渋い大人のシワが増えています。ぜひ映画館でイワさんのシワを数えてください(笑)。

――本作の演出を手がけられた田崎竜太監督(田崎監督の「崎」は立つ崎が正式表記)からは、どんな言葉をかけられましたか。

田崎監督はテレビシリーズの第1話、そして最終回も撮ってくださっていて、『オーズ』のことをもっとも知っている監督です。こちらも何の心配もせず、取り組むことができました。

特に何か事前に打ち合わせたことはないですけれど、何も言わなくてもそれぞれのキャラクターがどんなセリフを言うのか、すごくわかってくれている感じがしました。どこかのシーンで、田崎監督のほうから「このキャラ、このタイミングでこんなこと言わないよね」なんて言ってくださったこともありました。キャラクターと物語に対して深く理解してくださっていることは、役者はとってとてもありがたいんです。ときどき、僕らも気づいていないことを指摘していただいて、どんどん物語に深みを増してくださいました。

クライマックスシーンを撮影している最中、田崎監督が「10年経ったんだねえ」としみじみ話していて、それがとても心に響きました。10年経ったからこそできた芝居を、具体的な形で田崎監督にお見せできたのが、とてもうれしかったことのひとつです。

――『オーズ』テレビシリーズ最終回の戦いで、アンクのコアメダル(タカ)が割れてしまいました。以来、映司は割れたメダルをずっと持ち歩いていて、アンクを復活させられる「いつか」を目指して旅をしているんですね。Vシネクストでは、そんな『オーズ』の物語が完結するとうかがっていますが、渡部さんとしてはこの作品が出来たことにより、どんな感情がめぐりましたか。

うーん、こればっかりはひと言で表現するのは難しいですね。「寂しい」だと、じゃあなんで終わるんだって言われるし、「達成感」だと、なんだ清々したのかって言われそう(笑)。難しいですよね。複雑な感情ですから、感情というのは一回横に置いておいて、今はただ「仮面ライダーオーズはこの作品をもって“終わります”」ということしか言えません。これまでの『オーズ』の出来事、ファンの方たちの思い、すべてを受けた上で、映司の旅が終わるんです。映司とアンクの「終着点」がここにある……ある意味、これが今の僕の「感情」なんですね。うれしいとか悲しいとか、寂しいとかじゃないんです。

――映画が公開されたら、心して映司の変身を見届けたいと思います。

そうですね。渡部秀としても「これで最後の変身だ」という思いを込めて取り組みました。

――TTFCで配信されるスピンオフ『ネット版 仮面ライダーオーズ/OOO 10th』の見どころについて教えてください。

Vシネクストの前日譚にあたるのがスピンオフ作品ですけれど、両者のムードがかなり違っていて、いい意味でギャップの面白さがあるんじゃないかと思います。『オーズ』って、映司と比奈とアンクの力関係が「3すくみ」のようになっているのが特徴ですよね。スピンオフではアイスを持った比奈、映司、アンクが手をつなぐカットがあり、それは田崎監督のこだわりによる「最終回オマージュ」なんです。とても印象的な画面になっていますので、ぜひスピンオフのほうもお楽しみください!