「舞台をやっていないと能力が低下していく気がする」と語るのは劇団EXILEのメンバー・青柳翔。近年は映画やドラマなど映像作品での活躍も目立つが「スケジュールが合うならば、なるべく年に1~2回は必ず舞台をやりたい」というほど自身にとってはライフワークとなっているようだ。そこにはどんな意味があるのだろうか――。

  • 劇団EXILEの青柳翔

青柳が出演する新作舞台は、1994年に初演された作品『三十郎大活劇』のリバイバル上演。第二次世界大戦突入間近の日本の映画界を舞台に、一夜にして銀幕スターに駆け上がった若手俳優・紅三十郎の人生を青柳が演じる。当時の日本映画は、無声から有声へと大きな変貌を遂げた時期で、世界の黒澤明監督がデビューを果たすなど日本映画史にとっても大きな位置づけとなる時代だ。

そんな時代背景に生きた三十郎を演じることになった青柳は“銀幕スター”と呼ばれる人たちが出演した作品の数々を見て、さまざまなことを研究したという。「いまとはまったく時代が違うので、面食らう部分もありました。例えば『なんでそんな目力で前を向くんだろう』や『なんで首をカクって曲げるんだろう』など……現代でやったらコミカルになってしまうかもしれないようなお芝居もあるのですが、でも基本的はメチャクチャ格好いんですよ」と俳優の持つ“華”に惹かれたという。

数々の映画スターの佇まいに痺れたという青柳。なかでも黒澤明監督と共に数々の名作を残した三船敏郎さんの格好良さには大きな憧れを抱いた。「一見落ち着いた佇まいに感じられるセリフ回しも、三船さんが発するとものすごく格好いいんです。また殺陣もメチャクチャ早くて驚きました」。

銀幕スターの格好良さを表現する一方で“喜劇”としてのおかしみも、しっかりと見せることが要求される。

「先ほど当時の銀幕スターたちの作品をたくさん観たと言いましたが、やはり今の時代だとコミカルに映るような動きも結構あるんです。その滑稽さみたいなものをどう表現するのかは、僕のなかでも課題としています。作品を観て面白そうだなと思ったことはしっかりメモをとっているので、それを持って稽古に臨みたいと思っています。基本的には滑ってしまったら『じゃあ次』というぐらいのメンタルで、稽古ではいろいろなチャレンジをしたいです」。

  • 『三十郎大活劇』で主人公・紅三十郎を演じる青柳翔

青柳と言えば、映画やドラマなど映像作品の出演も途切れることなく続いているが、舞台作品もライフワークのように参加している。青柳にとって舞台とは――。

「僕にとって舞台は筋トレみたいな感じですかね。舞台をやっていないと身体的にも脳の部分でも、俳優としての能力が低下していってしまう気がしているんです。スケジュールが合うのならば、なるべく1年に1~2回は舞台をやりたいとマネージャーさんにも伝えています」。

丁寧に作品と向き合う稽古の時間、さらには、生で伝わってくるお客さんからの反応……こうしたことによって得られた気づきを一つずつ積み重ねていく作業。「筋トレも毎日コツコツやることが大切じゃないですか。僕は舞台にそういった面白さを感じているんです。1カ月に渡って稽古を積めるというのは、本当に幸せな時間だと思うんです」と真意を説明する。