• (左から)筒井道隆、伊藤沙莉、尾上松也 (C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン

撮影はすでに終了しているが、放送されるまでの期間が長かったことで、細部まで吟味することができたという。

「従来の連ドラは、急いで撮って、徹夜で編集して、またその流れで撮影して…って、どれもが中途半端になっちゃうし、仕上がりも中途半端になっちゃった部分があったと思うんです。テレビは生もので、反響を見ながら作り方を変えていくということもあると思うんですけど、そうは言っても数週間前には撮っちゃっているので、生放送のバラエティみたいな機動力はないですよね。だから、今回は撮影前に台本も全部できていたし、事前にしっかり撮って、ちゃんと編集に時間を割けるっていうのは、映画だと当たり前なんですけど、改めて健全な作業だなと思いましたね」

その健全さは撮影スケジュールにも表れていたそう。「今回は比較的、撮影スケジュールも余裕があったほうだったと思います。それは、セットでの撮影がすごく多かったからなんですね。撮影時間で何が一番もったいないかって言ったら、移動時間なんです。ロケだと近い場所でも機材の撤収と準備だけで30分以上時間がかり、さらにそこに移動時間が加わって、撮影時間が削られるというすごくもったいない部分もあったりするんです。なので今回は限られた時間を目いっぱい撮影にあてることができた点が良かったと思います」と明かした。

菅田は、今年の元日に放送されたNHK『あたらしいテレビ』で、「ドラマの制作現場の人たちが、全員もっと寝れたらいいですよね」と語っていたが、今作で健全な現場を経験して、改めて感じたことなのかもしれない。

『ミステリと言う勿れ』がここまで視聴者を魅了するのには、この作品に多くの時間を費やし、工夫を凝らした“こだわりの画”があるからに違いない。物語は折り返し地点に差しかかるが、今後も監督が散りばめたこだわりに注目していきたい。

  • (C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン

●松山博昭
1973年生まれ、岐阜県出身。上智大学卒業後、98年にフジテレビジョン入社。『LIAR GAME』で初めてチーフ演出を務め、『鍵のかかった部屋』『失恋ショコラティエ』『信長協奏曲』『人は見た目が100パーセント』『トレース~科捜研の男~』などを担当。現在放送中の月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』の演出を務める。