最新の「M2」と初代WM1Z/Aを聴き比べる

ここからは、WM1ZM2、WM1AM2の実機に触れたレポートをお届けします。

手に取ってすぐに感じたのは、Androidによるサクサクとスムーズな動作。レスポンスも良く、スマートフォンと遜色ない基準で快適に扱えました。5型のディスプレイも非常に美しく、初代モデルと比べてもアルバムアートワークや文字表示がパッと見でわかるほど高精細になっています。このあたりはオーディオに関係ないじゃないかと侮るなかれ、普段使いする機器だからこそ、こうした細かな作り込みや質の良さが際立つのです。

物理ボタンのレイアウトも変更されており、電源ボタンが上寄りに飛び出すような配置となりました。これは他の音量ボタンなどと押し間違えなくなる反面、初代モデルを使っていた人は最初は戸惑うかも。他にもmicroSDスロットなどのレイアウトが変わっており、全体的にスッキリした印象を受けます。

  • WM1ZM2の側面の操作ボタン

  • 初代WM1Z(上)とWM1ZM2(下)を重ねると、ボタン配置の違いが分かる

  • microSDスロットも、初代は本体下部だったがWM1ZM2では側面に移動した

ちょっぴり気になったのはストラップホールが省略されていたことですが、これはこの重量、この価格の製品をストラップで吊るす人はいないということかもしれません……。

  • WM1AM2の実機と、アルミの塊を持ってみた。重いが両手でもなんとかいける

  • WM1ZM2の実機と、無酸素銅の塊を持ってみる。ちょっとオーバーめに見せているが、実際相当重い

それでは音楽を聴いていきます。今回は初代モデルと同じ音源を聴き比べて試聴してみました。ソニーの高級ヘッドホン、MDR-Z1RとMDR-Z7M2に加え、個人的に持参したIER-Z1R(カスタムイヤーピースを装着済み)でも聴いています。

  • ふたつの最上位ウォークマン「M2」を、IER-Z1R+カスタムイヤーピースなどで試聴した

まずは定番どころ、宇多田ヒカルの「First Love」を再生。新型の両機種に共通して感じたことは、音の生々しさ、精細さがよりシビアに、かつ広い音場で再現されていること。ボーカルは芯までクッキリと描かれ、リバーブの抜け感もナチュラルかつ立体的。特に音場表現などは「一回り広くなった」と断言できるほど向上しており、初代モデルもかなりの完成度でしたが、着実な進化が感じられます。

加えてNW-WM1ZM2で顕著に感じたことは、本体素材による特有の柔らかい手触りはそのままに、明らかに音の密度が増している点。音の描写の精密さが上がっており、ディテールのエッジ感や質量を感じる響き方など、極めて鮮明。かつ、嘘くさく誇張したような印象は全くありません。

つづいて、ワルキューレによる力強いハイテンポなナンバー「未来はオンナのためにある」を再生。まずはWM1AとWM1AM2で比較すると、やはり音の厚みが段違い。どちらも音質傾向としてはWM1Z/WM1ZM2より少し華やかさが抑えられているというか、ややグリップが効いて腰の据えているモニター的な鳴らし方ですが、その中でもWM1AM2は聴き応えのある表現力を備えていることがわかります。

そのままWM1ZとWM1ZM2の聴き比べに移行すると、やはり音場感、反響の深さが目覚ましく進化しています。こうした音数の多いアニメソング的な楽曲は楽しく聴けること、噛み砕いた言い方をするならノレることが大事ですが、WM1ZM2ではそういった聴く楽しみを、低音を持ち上げるといったようなわかりやすい対応をするのではなく、1音1音の細かな作り込みで完成度を高めるという高音質化によるアプローチで実現しているのが秀逸。こうした写実的な再現性のクオリティが高いオーディオは得てしてアコースティックなサウンドの評価に傾きがちですが、同時にエレクトロニックな表現力にも富んでいるというのが非常に魅力的であり、つくづく基本性能の高さを感じさせてくれます。

最後にちょっとユニークな聴きどころとして、ジャズコンサートのMCパートを再生してみることに。肝心のジャズパートじゃなく、よりによってMC? と半信半疑で聴いてみると、これまた納得! たとえば拍手ひとつ取っても、会場の広さ、人数、破裂音の粒立っている感じが明瞭です。マイクを通した話し声も、会場内のリバーブの中に、生音での話し声が乗っかって共存していることがわかり、どちらも初代モデルよりハッキリと感じられます。

決して大げさでなく、こうした何気ない音源でも、というより何気ない音源だからこそ、空間表現や音像描写の明確な進化が浮かび上がってくるのでしょう。Signature Seriesのウォークマン最新機種「NW-WM1ZM2」、「NW-WM1AM2」からは、オールジャンルの音楽ファンを満足させてくれること間違いなしの確かな実力を感じました。

初代モデルもロングセラーの傑作であっただけに、あらゆる面で高いハードルがあった新モデルですが、両機種ともにそのハードルをしっかりと越えてくれました。Androidの採用やUSB Type-Cの搭載など細かな点も最新の水準にブラッシュアップされており、ウォークマンの従来モデルを持っていた人のアップグレードにも、初めてウォークマンを手にする人の期待にもきっと答えてくれるであろう両機種は、3月25日に発売予定。チェックしてみてはいかがでしょうか。