• 最上位ウォークマン「NW-WM1ZM2」(右)。左は初代「NW-WM1Z」

皆さんこんにちは。ライターの工藤寛顕です。先日、ソニーの公式サイトに掲載されたティザー告知はもうご覧になりましたか?

ウォークマンの製品ページに掲載されていること、そして「Signature Series」と「Walk to the next level of sound」というコピーが添えられていたことから、久しぶりに高級ウォークマンの新製品が登場するのでは? と予想していたオーディオファンも多いでしょう。そんな注目の内容が2月9日に公開されました!

発表されたのは、Signature Seriesのウォークマン「NW-WM1ZM2」(実売約40万円前後)と、「NW-WM1AM2」(同16万円前後)。次々と新製品が投入されるポータブルオーディオ業界において、ウォークマンの顔とも言えるフラッグシップの座を2016年から守り続けてきた初代モデルを進化させた、6年越しの後継機種がついに登場します。また、ウォークマンとしても2019年発売の「NW-A100」、「NW-ZX500」以来の新機種なので、待ちに待ったという人も多いのではないでしょうか。

そんな待望の両機種を一足早く試すことができたので、ファーストインプレッションをお届けします。各製品の基本情報や、詳細なスペックについてはニュース記事もあわせてご覧ください。

  • Signature Seriesのウォークマン「NW-WM1AM2」(左)、「NW-WM1ZM2」(右)

「M2」の外観をチェック

まずは、NW-WM1ZM2(以下、WM1ZM2)とNW-WM1AM2(以下、WM1AM2)の個人的に気になったポイントを重点的にチェックしていきます。基本的なSignature Seriesとしての思想は踏襲しつつも、やはり初代モデルから6年が経過しているだけあって、ソフト・ハード共にさまざまな点が進化していますね。

最初に驚くのは、そのサイズ感。画面サイズが4型から5型に大型化しており、それに伴って本体サイズもやや大きくなっています。製品写真だけだと分かりづらいかもしれませんが、最初の写真のようにM2と初代と並べてみると一目瞭然。一回り違います。ただ、重さはWM1AM2の場合、初代モデルの267gから299gとそこまで重たくなっておらず、面積当たりの重さでいえばむしろ軽くなっているとのこと(WM1Z→WM1ZM2は455g→490g)。厚みも1mm程度しか増えていないため、手にした感じとしてはあまり大きな違和感はありません。

液晶画面はどちらも初代モデルの854×480ドットから1,280×720ドットのHD解像度にアップグレードしており、さらに美麗に。アルバムアートワークの表示はもちろん、後述するマルチメディア用途への相性もバツグンです。ちなみに、ZX500/A100シリーズで初めて採用されたカセットテープスクリーンセーバーはWM1ZM2/WM1AM2でも健在。最新の環境でもノスタルジックな使い心地に浸ることができますよ。

  • カセットテープスクリーンセーバーが最上位ウォークマンにも採用された

「M2」の高音質ポイント

内部設計に関しても、一部の内部配線にOFCケーブルが採用されていたり、高音質はんだに金が添加されていたり、クロックが最適化されていたり……と細部に至るまであらゆるパーツが改めて吟味されているのですが、注目どころはWM1ZM2の無酸素銅金メッキシャーシの低抵抗化。

初代モデルでは純度99.96%の無酸素銅が採用されていましたが、今回は99.99%(4N)のものが採用されています。切削加工が困難な無酸素銅を削り出したシャーシに純度約99.7%の高純度金メッキが施され、音質効果と高剛性を両立しました。

また、リアカバーも両機種ともにアルミ(WM1ZM2は切削加工したもの)を採用し、こちらも音質と剛性の向上に一役買っています。初代モデルでのこだわりを、あらゆる点でさらに突き詰めたような設計となっていることがうかがえます。

  • WM1ZM2(上)とWM1AM2(下)の分解モデル。シャーシの素材は、前者は純度99.99%(4N)の無酸素銅、後者はアルミ。リアカバーも前者はアルミ切削、後者は一体型アルミで仕上げた

オーディオ周りの再生技術もチェック。まずは最新のアップスケーリング技術「DSEE Ultimate」が搭載された点。初代モデルはひとつ前のバージョンである「DSEE HX」が搭載されており、「Ultimate」を使えるのは一部のXperiaやZX500/A100などのストリーミング対応ウォークマンのみでしたが、ここに今回の2機種が加えられる形となりました。AI技術によるアップスケーリングで、さらにハイクオリティな高音質化を実現しています。

興味深いのは、DSEE Ultimateの対応範囲が拡充されていること。従来のストリーミング対応ウォークマンでは有線接続、かつ標準の「W.ミュージック」アプリで音楽を再生しているときのみ対応していましたが、今回は有線・無線の接続を問わず、しかもサブスク系サービスやUSB DAC時など、すべての再生に対応しています。最近はSpotifyやApple Musicといった音楽ストリーミングサービスで音楽を楽しんだり、自宅時間でPCと接続して使ったりしている人も多いでしょうから、そちらでもウォークマンならではの高音質化の恩恵を最大限受けられるのはうれしいところ。

さらに、Signature Seriesのデジタルミュージックプレーヤー「DMP-Z1」などに搭載されていた、DSDリマスタリングエンジンがウォークマンに初登場! こちらも個人的に待望の機能でした。独自のアルゴリズムにより、PCM音源を11.2MHz相当のDSD信号に変換してくれます。DMP-Z1では5.6MHz相当でしたので、こちらも進化点と言えますね。DSEE Ultimateと合わせて、さらにリアリスティックなサウンド表現が楽しめます。もちろん同機能のオン/オフもできるので、好みによって切り替えて使うことも可能です。

Android採用でストリーミングも聴ける

そして、システム周りのお話もしていきましょう。注目を集めているのは、なんといってもOSのAndroid化ではないでしょうか。他のストリーミング対応ウォークマンと同様に、好きなアプリをインストールできるようになりました。

  • WM1ZM2のホーム画面

  • WM1AM2のホーム画面

上述の通り、最近は音源の再生だけでなくストリーミングサービスでの視聴も主流になってきているため、個人的にはこの進化はマストでした。むしろ、それによる諸問題をいかに解決したか、というところが注目どころです。

Androidの採用により主に懸念されるのは、必要なパーツを搭載することによる音質への影響、そしてバッテリー持続時間への影響でしょう。実際にA100では、独自OSを採用していた前モデル「NW-A50」よりもバッテリー持続時間が短くなっており、SNSなどではそれを残念がる声も見られました。今回はそんなハードルをどのようにして乗り越えてきたのでしょうか?

WM1ZM2/WM1AM2音質への影響の対策としては、設計構造段階から作り込まれています。基板上でアナログブロックとデジタルブロックを分離し距離を取っており、しかもデジタルブロックには切削無酸素銅のシールドを全面に被せることで物理的に遮断。後述の通り電源も強化されているため、グランドの強化や安定化を実現しており、ノイズ発生やその影響を極力排除されています。また、既存モデルに搭載されていたGPS機能も搭載していないとのこと。音質重視のため、アンテナモジュールも必要最低限に留められているようです。

バッテリや電源周り強化。最上位機もUSB-Cに

そして特筆すべきはバッテリー。M2では、最新かつ大型化したバイパスコンデンサー「FTCAP3」がオーディオブロックの電源に搭載されているなど、電源周りが音質設計を含めかなり強化されているのですが、それによって持続時間が短くなってしまっては本末転倒……と思いきや、なんと初代モデルと比べて約7~9時間の向上を実現しています。「せめて同じレベルを維持してくれれば……」という想像をはるか上を越えてきてくれました。

※編注:WM1ZM2とWM1AM2は最長40時間再生可能(MP3 128kbpsまたはFLAC 96kHz/24bit再生時。FLAC 192kHz/24bitでは35時間)。従来のWM1Z/Aは最長33時間再生できた(MP3 128kbps再生時。FLAC 192kHz/24bitでは26時間)。

これは省電力の最適化が進んだのか……!? と思いきや(もちろんそれもあるでしょうが)、そもそも本体が大型化したことによって搭載されているバッテリーも大型化&大容量化しており、それで持続時間が伸びているというなかなかの力技。音質にも効果があり、わかりやすくシンプルなスペックアップといえるでしょう。

その他の注目点として、ハイエンドウォークマンにもついにUSB Type-Cがやってきました。これにより汎用性がバツグンに向上しただけでなく、充電時間やデータ転送速度も大幅に高速化。初代モデルを使っている人も、こればかりは他のストリーミング対応ウォークマンを羨ましく思っていたことでしょう。

  • 充電/データ転送用のUSB Type-Cを採用