俳優の菅田将暉が主演するフジテレビ系月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』(毎週月曜21:00~)。田村由美氏の同名漫画を実写化したもので、洞察力に長け、大きな天然パーマが特徴の主人公・整(菅田)が、自身に容疑がかけられたある殺人事件をきっかけに、次から次へと事件に巻き込まれていく物語だ。タイトルの通り、事件を解決するミステリの部分だけでなく、多弁な整の言葉によって、登場人物たちはもちろん、視聴者の心も解していくという新感覚のドラマに仕上がっている。

今作のメイン演出を務めるのは、『LIAR GAME』『鍵のかかった部屋』『失恋ショコラティエ』『信長協奏曲』など、多くのヒット作を手がけてきたフジテレビの松山博昭監督。自ら映像化を志願したという今作の成立経緯や、役者陣の魅力などを聞いた――。

  • 『ミステリと言う勿れ』主演の菅田将暉 (C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン

    『ミステリと言う勿れ』主演の菅田将暉 (C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン

■きっかけは『鍵のかかった部屋』の編集中

松山監督がこの作品に携わるきっかけは、コロナ禍に放送されたあるドラマの編集中だった。

「コロナになって『鍵のかかった部屋』の特別編を放送(20年5月)するとき、新撮部分を含めた編集作業をやっていたんですけど、今回のプロデューサーである草ケ谷(大輔)と2人でずっと編集室にいたんです。そこで、こんな面白い漫画があるんだと挙がったのが『ミステリと言う勿れ』でした。そこからすぐに草ケ谷が出版社へ問い合わせたのがきっかけです」(松山監督、以下同)

ドラマの第1話にもなっている原作第1巻のエピソードが、「びっくりしたと言うか、整のキャラクターや話の展開も含めてかなりの衝撃を受けました。だから、僕が最初に読んだときはまだ3巻くらいまでしか出ていなかったんですけど、この原作を映像化したい!とすぐ思いました」と振り返る。

映像化したいと自ら志願したが、この原作は密室でのシチュエーションが多く、撮影では苦労もあったという。

「これまでのセットの撮影では、なるべく人を動かすことでカメラも動かして、画を持たせるということをやってきました。不必要なまでに人を動かすっていうのがセットものの常套手段なんですね。だけどこのドラマは、整が『日本のサスペンスドラマでは、刑事が不必要に動くのが不自然』と言う原作にもあるセリフがあるので(第3話)、今回は不自然に人を動かすのはまずいなと思って(笑)。大きな動きがあるシーンは、第1話の遠藤憲一さんが演じた薮が取調室で激昂するところくらいですかね」

■“言葉が届く”菅田将暉、“深みを持って演じる”伊藤沙莉

それでも視聴者を飽きさせず、“画を持たせる”ことに成功したのは、「超一流の方ばかりに集まっていただいたので、そのお芝居の熱量とテンポ感を壊さぬように切り取ることを心がけました」と、俳優陣の厚みにも助けられた。

中でも菅田に対しては、「“言葉が届く”んです。原作を読まれた方にはそれぞれのイメージがあって、そのイメージと違うとかいろんなご意見があると思います。でも、僕が思う原作を映像に起こす意味っていうのは、田村先生が書かれた素晴らしい言葉の数々があって、それを文字として読んだときと、ドラマで視覚や耳で菅田さんがセリフを発したときとで、その届き方が、どっちが良い悪いとかではなくて、明らかに“違い”が出てくると思うんです。だから、菅田さんの整という役を通じて、彼の言葉で発するからこそ初めて届く意味合いだったり、強さであったりが、今回は出てるんじゃないかと思うんですね。菅田さんが演じることで、映像化した意味っていうのがあったんじゃないか。菅田さんの力でそれができたんじゃないかなと思います」と絶賛。

菅田は、整の特徴的な天然パーマのアフロヘアを地毛で作っているが、それは制作側から相談されるまでもなく、自ら志願したものだそう。このことからも、今作への意気込みが感じられる。

  • 伊藤沙莉 (C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン

また、整のバディともいえる風呂光を演じる伊藤沙莉については、「本当にうまいですよね。明るいだけではなく、その明るさの中に影があって、行き詰まっている風呂光というキャラにすごく深みを持って演じてくださっている。だけどちゃんとかわいいっていう、すごく難しい役どころをピンポイントで演じてくださったなと思ってます」と信頼を寄せる。