■抑揚や感情を抜いた芝居の難しさ

――清水さんが演じる上条知樹はどんな役どころでしょうか。

最初のほうは謎に包まれているので、通して見てもらってこそ伝わる役だと思っています。ミステリアスで底が知れないようなキャラクターですが、後半で背負うものが明らかになったときに繋がるようなお芝居を、前半のうちから意識しています。噂が先行している役なので、見た人によっていろいろな印象を受けると思います。皆さんがどう受け取ってくださるのか、反応が楽しみです。

――ミステリアスな役を演じるのは難しいですか。

遊川さんに「もっと棒読みでいいです。もっと無機質な感じで」と指示されるのですが、あまりにも抑揚や感情という成分を抜いたお芝居をしているので「これでいいのかな」とだんだん不安になります(笑)。どんな台詞にも感情があって、気持ちを乗せてお芝居をしてきたので、カットするのはすごく難しい。毎回モニターをチェックさせていただいて、どの塩梅がいいか監督とお話しさせていただきながら現場で役を作っています。

■リアルなつながりを大事にしたい

――清水さんが出演された映画『スパゲティコード・ラブ』ではSNSのつながりを描いていましたが、今回は今の時代にまだこんなことがあるのかと驚かされるほどリアルなつながりを描いた作品です。SNSとリアルなつながりの違いをどう感じていますか。

SNSは、つながるハードルも低いですが切ろうと思ってしまえばすぐ切れてしまう関係性。対してリアルでは一つ一つのつながりが深い分、一度首を突っ込んでしまうとなかなか逃げられないというデメリットもあると思います。でもそこでトラブルを乗り越えたり、共に何かを成し遂げたときに得られるものは大きい。それぞれに良し悪しがあると思いますが、僕はリアルなつながりが好きです。多く持つ必要はないけど、会いたいと思う人に会って、顔を見て話すという関係を大事にしたいと思っています。

――リアルなつながりにおけるモットーはありますか。

変に固執しないことを意識しています。たとえば自分が仲良くしたい人がいても、相手がそう思っていなかったら噛み合わない。そこで無理に追いかける必要はないと思っています。受け身なわけではないですが、求めてくれる人に与えたいといいますか……友達や周りにいる人は、好きと言ってくれる人に好きと返すことを大事にしたいです。

――お互いが思い合っている相手と付き合っていくのが一番だと。

そうですね。この仕事をしていると、どんなことをしていても「すごい」と言ってくれる人もいれば「何だお前」と言ってくる人もいる。賛辞だけを素直に「ありがとう」と受け取ることが、自分を大事にすることにもつながると思います。自分にとって都合のいいことだけ100%真に受けるということを意識しています。

――主人公の中越チカラはそんな清水さんとは真逆のタイプかもしれません。印象を教えてください。

自分が気になったことへ能動的に首を突っ込んでいくチカラを見て、自分にはできないなと思いました。僕はもし友達が目の前で悩んでいたとしても「“相談”なら答えるけど」とフラットに接するスタンスなので、チカラのフットワークの軽さは功を奏す場合もあれば裏目に出る場合もありますが、人として素敵だなと感じます。

■清水尋也
1999年6月9日生まれ、2012年ドラマ『高校入試』でデビュー。主な出演作に映画『渇き。』、『ソロモンの偽証』『ちはやふる』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』『甘いお酒でうがい』、『東京リベンジャーズ』、『スパゲティコード・ラブ』、ドラマ『anone』『インベスターZ』、『アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜』、『連続テレビ小説 おかえりモネ』など。1月21日より映画『さがす』が公開される。