Beats Fit Proの魅力が最も活かせる!オススメのサウンドをセレクト
Beats Fit Proのサウンドを、iPhone 13 Proにペアリングした状態で、Apple Musicで配信されている楽曲を聴きながらチェックしました。
Beats Fit Proの音の心臓部は、ビーツの独自開発による9.5mmのダイナミック型ドライバーです。振動板中心のドーム部と周囲は素材の硬さや形状を変えて、再生する音楽ソースに合わせた柔軟なピストンモーションを引き出します。小さなイヤホンが迫力に満ちたサウンドを鳴らせる理由がここにあります。
ユーザーの鼓膜に最も効率よく音を届けられるように、ドライバーの装着位置や向きを最適化。小音量再生時にもメリハリの効いたサウンドを響かせます。さらに、ドライバーの背面には音のエネルギーを増幅するための音響室があります。ハウジングの構造は密閉型ですが、一部に小さな空気の通り道となるポートを設けて、音の切れ味を作り出しています。クリアな中高域、スピード感あふれる低音の源です。
先に筆者のリスニング感を総括してしまうと、上品でありながら、かつ明朗で鮮度の高いBeats Fit Proのサウンドにとても好感を持ちました。これまでのPowerbeats Pro、Beats Studio Budsに比べると、中低音域の情報量が増して、全体のバランスが一段と整った感じがします。あえてBeats Fit Proと最も相性の良い音楽のタイプを3つ挙げるとすれば、次の通りです。
ひとつはアップテンポでノリの良い楽曲。たとえばマハラージャンの楽曲『セーラ☆ムン太郎』のように、グルーヴィーなベースラインの熱気がビシビシッと伝わってきます。ドラムスのハイハット、シンバルの高音は音像がぼやけず、鋭い切れ味のリズムに鼓膜が心地よく刺激されます。低音の足下がとてもしっかりとしているので、ボーカルやピアノの情感豊かなメロディラインがいっそう立体的に引き立ちます。
もうひとつはボーカル系の楽曲。上白石萌音のカバーアルバム「あの歌-1-」から『君は薔薇より美しい』を聴くと、ボーカリストの声の質感がとても生々しく伝わってきて、思わず背中がゾクっとしました。ペパーミントのように爽やかな余韻を残す、彼女のボーカルと絶妙にマッチするイヤホンです。ホーンセクションの温かみ漂う音色とのコントラスト感も極まっています。
最後に、オトナのジャズもぜひBeats Fit Proで聴いて欲しいです。上原ひろみのアルバム「Silver Lining Suite」から『フォーティチュード』では、Beats Fit Proがプレイヤーの熱量をガッツリと引き出し、ライブホールのように熱い音楽空間を目の前に描いてみせました。元はステレオ収録の楽曲ですが、iPhoneやiPadで聴く機会があればぜひ“空間化”して、演奏空間がグンと広がる体験を味わってみてください。
メリハリの効いたNCと外部音取り込み。自然なモードシフト
Beats Fit Proは、本体側面のロゴがリモコンボタンになっています。ノイズキャンセリング(NC)と外部音取り込み、それぞれの機能をオフにする「3つのリスニングモード」は、本体のリモコンやスマホから選択可能です。ビーツではこの操作機能を「ノイズコントロール」と呼んでいます。
NCモードの消音効果はしっかりと感じられ、特定の帯域に偏らずに、バランス良く消音されます。耳に適したサイズのイヤーチップを選んで装着するだけで、いわゆるパッシブな消音効果も十分に得られます。バスのエンジン音など、持続的に響く低音のノイズも違和感なく自然に消せるので、通勤や旅行の移動時に頼りになります。
遮音効果がとても高いことから、屋外で使うときなどには周りの音が聞こえづらくならないかと、不安に感じるかもしれません。ノイズコントロールを「外部音取り込み」にスイッチすると、まるでイヤホンを外したように、周囲の環境音がクリアに聞こえるようになります。リスニングモードを変えても、音楽の聞こえ方が影響を受けてブレることはなく、(サウンドの)力感も失われません。
AppleのAirPods Proを使ったことがある方であれば、外部音取り込みのクリアな聞こえ方は「Beats Fit Proも同等のレベル」と言えばわかりやすいでしょうか。NC搭載の完全ワイヤレスイヤホンの中でもトップクラスだと思います。
ノイズコントロールをオフにすると、アダプティブイコライゼーション機能が有効になります。ユーザーの耳の形に合わせて、再生中の音楽の中低域を自動で調整し、どのモードを選んだ場合も一貫したサウンドが楽しめるように設計された機能です。
アダプティブイコライゼーションを選ぶと、イヤホンのノズル内に配置したマイクが、ユーザーが聴く音と同じ音を常時モニタリングして、音楽のバランスを自動的に最適化します。Apple H1チップの優れた演算処理能力が実現する「コンピュテーショナルオーディオ」のパワーを実感します。
長時間のビデオ通話も十分にこなせる、クリアな音質と長持ちバッテリー
Beats Fit Proは心地よい装着感が得られるワイヤレスイヤホンなので、音楽リスニングだけでなく、ビデオ会議などハンズフリー通話でも多用したくなります。内蔵するビームフォーミングマイクの性能にこだわり、さらに不要な外部音を排除する音声感知加速度センサーを載せて通話性能をブラッシュアップしています。聴く方だけでなく、伝える方の音声も力強く明瞭です。
Beats Fit Proは、イヤホンの着脱に音楽の再生と一時停止が連動する「自動装着検出」機能を搭載しています。人間の耳の肌をより正確に検出するセンサーにより、ポケットの中に裸でイヤホンを入れているときに起こりがちな誤作動を防ぎます。
iPhoneと一緒に使う場合は、Siriによるメッセージ着信の読み上げや、常時待機の“Hey Siri”の呼びかけにも対応します。最先端の技術を網羅すると、使用時に多くのバッテリーを消費しそうですが、Beats Fit Proはスタミナも十分。NCオン時で最大6時間、ケースによる充電を繰り返せば最大27時間の連続リスニングが可能です(NCオフ時は単体7時間、ケース込みで最大30時間)。ハンズフリー通話を中心に使っても最大5時間。片側だけで通話もできるので、左右を交換しながら使えば1日中リモートワークに使い倒せます。ケースのワイヤレス充電は非対応ですが、高速充電機能のFast Fuelがあるので安心です。
最新の「ビーツの集大成」、誕生
サイズを超えた低音の迫力、音の広がり感は「iPad miniで楽しむミニシアター」との相性がバツグンに良いと思いました。また、お気に入りの音楽を入れたApple Watchとペアリングして、Beats Fit Proと一緒に出かけるエクササイズでは気分がアガります。
製品の発表当初は“フィット感重視”で、耐汗耐水対応がウリのスポーツイヤホンなのかと思っていましたが、Beats Fit Proはさまざまな音楽を聴くシーンにフィットするオールラウンダーと呼ぶべきワイヤレスイヤホンでした。
コンパクトで可搬性が高く、混雑する交通機関での移動時にも、Beats Fit Proのように落としてなくす心配が少ない設計の完全ワイヤレスイヤホンはとても貴重です。音質・機能・装着性能。あらゆる視点から「ビーツの集大成」と呼ぶべきニューフェイスの誕生です。