――伊藤さんとのコンビネーションについてはどうでしたか。

きいちゃんとゼンカイザーの高田将司さんもそうなんですけど、僕とシゲさんとの関係って特別だなって瞬間がたくさんありました。お互い、演技についてじっくり話し込んだことって、そんなにないんですよ。撮影合間にお弁当を食べながら、何気ないお話をするくらい。でも、ツーカイザーの動きに僕がアフレコで声を入れるとき、映像を観ていると、僕の仕草をふと再現していたり、強い声でセリフを言うべき場面では必ずカッコいいポーズをとってくださっていたりする。シゲさんの絶妙な表現力というのがとても伝わってくるんです。僕も、シゲさんが演じるツーカイザーの動きをゾックスでいるときでも再現できるよう、アクロバティックでしなやかなアクションを意識しました。2人がシンクロしてひとつの役を演じる時がとても心地よく、上手くいってるなと実感しています。

――劇中で本格的なアクションを経験されたご感想はいかがですか。

最初はぜんぜん出来ませんでしたし、アクションの難しさを痛感しました。舞台とは違い、映像だと画面にどう映るのかを意識する必要があります。パンチひとつにしても、相手の体を打ち抜くようにしないと、本当に殴ったように見えないとか、表現方法に苦労していました。でも苦労した分、完成した映像では迫力が違います。

ゴールドツイカー一家の怨敵、SDワルドと戦う回では、生身のアクションの連続で、撮影前日にアクション監督の福沢博文さん、シゲさん、ジュラン役の竹内康博さんと一緒に、アクション練習をさせていただきました。本番では、雨降らしの中でびしょびしょに濡れながら戦ったんです。この回ではゾックスと介人との関係性がさらに深まって、ご覧になる方の胸を熱くさせると思います。

――第28カイ!「週刊少年マンガワルド大図解!」ではゾックスが「マンガ好き」という設定が明かされたりしましたね。

そうですね! どなたにも確かめたことがないんですけど、僕が以前からあちこちで「マンガやアニメが大好き」だと話しているので、それを知った香村さんがそういう設定を組み込んでくださったのかな、なんて思っています(笑)。

――第29カイ!「王子のねらい、知ってるかい?」では、各キャラクターがテニスで対決をしていました。ミュージカル『テニスの王子様』を経験されていた増子さんですから、テニスはお得意だったのではないですか。

それが、舞台と映像ではまったく勝手が違いました。舞台だと、テニスボールを実際に打っていたわけではなかったですしね。舞台での役柄は左利きだったんですけど、僕の利き手は右手なんです。でもゾックスは左手でギアダリンガーを扱っているので、舞台と一緒の利き手でラケットを持つことにしました。それが撮影で地獄を見るきっかけとなりました(笑)。サーブがなかなか決まらずに、何テイクも重ねるはめになったんです。すごかったのは、打ったボールが後ろに向かって飛んでいったこと。ラケットのどこに当たったらそうなるんだという感じでした。あと、めっちゃいいボールが打てた!と思ったら、まっすぐ行かずに横にいたマジーヌに当たってしまうとか。あのテニスのシーンは本当に大変だったなという思い出しかありません。

――第38カイ!「ご先祖様だョ!大霊界」にはゴールドツイカー一家の御先祖であるピラートが登場しましたが、ピラートはまるで『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウのようなド迫力の海賊風出で立ちで、ものすごい存在感でした。

ピラートを演じられたのは、バラシタラのスーツアクターである清家利一さんでした。清家さんとは4年前から別のお仕事で知り合っていて、ご飯をごちそうになるなど、よくしていただきました。『ゼンカイジャー』の現場に入ったときも、清家さんがいらっしゃったので早くみなさんと馴染むことができたと思っています。あれから4年後、こうして共演ができるとは……と感慨深かったですね。ただ、清家さんって演技に迫力があってコワいんですよ。バラシタラのときからコワかったのに、ピラートを演じたときはまるでハリウッドから飛び出してきたような姿でしたしね。肩をつかまれたら痛くて「イテテテ!」なんて声をあげてしまいました。この回は、全話を通じても思い出深いエピソードになりました。

――お話をうかがっていると、役者さんの「こんなことをやりたい」という希望を通してもらいやすい、現場のよい雰囲気がうかがえますね。

みんながそれぞれ少しでも「つめあと」を残そうと、アドリブを仕掛けてくるんです。きいちゃんも、ステイシー役の(世古口)凌くんも、僕も同じ思いでした(笑)。

――キャストのみなさんとのチームワークもよい感じだとうかがっています。

僕ときいちゃんが同い年で、1996年生まれの凌くんがいちばん年上なんですけど、ぜんせんそんな風に見えないでしょう。男子3人並んでいると、きいちゃんが一番上だとしか(笑)。それだけきいちゃんがしっかりしているんです。『ゼンカイジャー』の1年で、ずっと一緒にいたのはフリントのひなみん(森日菜美)です。ほんとの兄妹みたいな存在になりましたね。

――キカイノイドを演じられるスーツアクターの方々とのお芝居について、難しい部分はありますか。

基本的には人間役のキャストと一緒でスムーズに進行するんですけど、録音の都合で、スーツアクターさんがまったく声を出せない状態で、僕たちと芝居をするときが難しいなって思います。相手のセリフを受けて、こちらが言葉を返さないといけないのに、相手が無言だとタイミングが取りづらいわけです。そんなときは、スーツアクターさんから「右手を挙げたらこのセリフが始まる」とか、きっかけを作ってくださるんです。自分で想像しながら芝居を作り、別々のものを合わせていく作品作りの現場というのは、若手の僕たちにとって、他では得難い演技の勉強をさせてもらっている場なんだなと実感します。

――キカイノイドに声を吹き込んでいる声優のみなさんと、アフレコ現場で一緒になったりすることはあるのでしょうか。

スケジュールの都合でほとんどないんですけど、一度ガオーンの梶裕貴さんとアフレコの現場をご一緒できたときは、ものすごくうれしかったですね! もともと梶さんの大ファンでしたから、あの声を生で聴かせてもらって、とても感動しました。梶さんもGロッソ公演を観に来てくださったことがあり、後でお礼のLINEを送ったんですが、そんなときは必ず、僕の好きなアニメキャラのスタンプ、しかもボイス付きで返してくださるんです。メリオダス(七つの大罪)とか! 梶さんからのLINEで梶さんの声が聞こえてくるというのは、すごいことですよ! ジュランの声を演じられている浅沼晋太郎さんもすばらしい方で、僕たちメインキャストやスーツアクターのみなさんに、それぞれのキャラクターイメージに合った「靴」をプレゼントしてくださったんです。僕にはゾックスをイメージした、ワニ柄の靴を贈っていただき、とてもうれしかったです。