■さりげなく皆が幸せになる現場作りが理想

――「みんなの気持ちをよく考えている」。

先生か!(笑)通信簿みたいですね(笑)。

――「カメラが回っていないところでも話しかけてくれて、私もかなり気を使っていただきました」。

まだまだ甘いですね、僕も(笑)。「気を使っていただいた」と言われている時点で二流です。

――気を使わせていると思わせないことが、稲葉さんにとっての一流ですか。

誰も気づかないくらいさりげなく皆が幸せになっているのが理想ですね。

――現場ではどんな思いで周囲に気を配っていましたか。

体力的にハードだと感じるスケジュールでの撮影だったので、ストレスのない楽しい現場にしたいなという思いでした。コミュニケーションが生まれにくい空気が苦手なので、自分にとって心地よい環境を作ろうとしたんだと思います。少しでも皆が意見を言いやすい、発言することにエネルギーを使わずに済む空気にしたくて。結果的には皆でわいわい言い合える現場になって、むしろ僕が皆の人の良さに救われていました。

■主演・島崎遥香の印象

――改めて、主演の島崎さんの印象をお願いします。

面白い人だなと思いました。大きなグループに属していて、それこそ僕も世代だからこの仕事を始める前から知っていた存在で。想像を絶する世界を生き抜いてきた人だから「自分はこうしたい」と言える真の強さを持っているんです。僕は「どうとでもやれます」ということを大事にしている真逆のタイプなので、やっぱり島崎遥香の強さってかっこいいな、自分もそうなりたいなと感じました。あとは思ったことがすぐ顔に出るのが面白かったです。「今こう思ってる?」「うん」という会話をよくしていました。“顔がしゃべる”んですよ。

――その表情を読み解ける稲葉さんがすごいです。

情報量がすごいんです! 本当に飽きない人で、ずっと刺激的な時間を過ごさせていただきました。

■2021年の振り返りと、30歳に向けて

――最後の質問です。稲葉さんはWeb連載『話はかわるけど』で、2021年の目標や抱負を挙げられていましたが、覚えてらっしゃいますか。

「健康第一」しか言ってない気がします(笑)。どんなことを言ってましたか?

――「人に優しくあれたら」、そして「がむしゃらな年になりそうだ」と仰っていました。

確かにがむしゃらな1年でしたね。コロナ禍の中でどう動くかという世の中の情勢もあって、神経の減らし方がよりシビアだった気がしますし、出がらしのような状態でもとにかく前へ進まなければいけなかった。「人に優しくあれたら」は目標というか……穏やかすぎる願望ですね。

――共演者の方が「気を使ってくれている」と仰っていたので、成功していたということですね。

そうですね、達成していたということにしましょう(笑)。

――今年は20代最後の1年で、主演映画も公開されます。改めてどんな1年にしたいですか。

もう30歳になるんだということをひしひしと感じ始めています。前へ進みながらももっと先を見て、改めて自分と向き合わなきゃいけない。人間ドックも行きたい、自分は長く生きたいのかな、お仕事を長く続けるためにはどうしたらいいんだろう、そもそも長く続けるってなんだろう……とか。自分の内面を洗い出す1年になると思います。連載は思いついたことを綴っているだけですが、読み返すと「このときはこんなことを考えていたんだな」と実のある振り返りができるので、これからも楽しいバックナンバーを作っていきたいです。

■稲葉友
1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。2010年にテレビドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー。14年には『仮面ライダードライブ』で仮面ライダーマッハ/詩島剛役を演じた。J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30~生放送)では5年以上ナビゲーターを務める。近年の出演作にドラマ『小吉の女房2』、『ギヴン』、映画『ずっと独身でいるつもり?』など。現在1月クールのドラマは『ハレ婚。』のほか『まったり!赤胴鈴之助』にも出演中。初長編映画主演『恋い焦れ歌え』が今春公開予定。