大都市と地方で配達員の確保に違い
一方、ライバルの多い大都市の埼玉エリアはどのような状況なのだろうか。「東京への足がかり」と位置づけ、都内への通勤者も多いことから、東京進出時の認知を広げる橋渡しとなることも期待しているそうだ。
「大都市は競合が過密しているため、キャンペーンの有無で大きく人が動くことが手に取るように分かるので、キャンペーンの手綱を引くことが一つの課題」と、山本氏は指摘する。
その分、「配達員の確保はしやすい」というメリットもある。配達員はたいてい複数のサービスを利用し、それぞれのアプリを見て配達しやすい注文に対応するため、配達員は常に一定数を確保できているという。
倉敷エリアのように少人数の配達員でカバーしていると、配達員のスケジュールによって簡単に数が足りなくなってしまう。そのため、地方では直接、配達員と交渉しているが、全国展開するにあたっては、こうした配達員を安定して確保する仕組みも必要となる。
現在は、天気予報やイベントなどで注文が増えると予測されるときは、個別に配達員に声を掛けて確保するなど、マニュアルで配達員を確保するようにしているという。将来的にAIの活用も視野に入れ、天候やイベントなどによって配達員へ自動で連絡を取る仕組みも検討しているそうだ。
なお、札幌市での雪の影響に関しては、もともと雪の頻度が高く、バイクも車も、乗る人はよく知っているということで、大きな影響はないという。降雪時に配達員の確保が問題にもなっておらず、配達時間が「数分ぐらい延びる」(山本氏)程度にとどまったそうだ。
コンビニの協業はアルコールが好評
21年にはローソンとの協業も開始。まだ仙台市で試験的に15店舗で展開しているだけだが、配達員(ダッシャー)が飲食店のデリバリーの途中でローソンに寄ってデザートを受け取って配達するという、「ダブルダッシュ」サービスを提供。ローソンを経由することで初めてアルコールのデリバリーに対応した点もポイントだ。
「ローソンとは店舗を広げようという話をしており、今後徐々に増えていく」と山本氏。コンビニエンスストアの商品を追加するというニーズは高く、山本氏は「コンビニは5分以内に買えるものがそろっていて、われわれのニーズとマッチしている」と話す。
特にニーズが高いのがアルコール飲料で、コロナ禍もあって外食機会が減少したことで、自宅での飲酒機会が増加。コンビニエンスストアでアルコール飲料を購入しても、外食で飲酒をするのに比べれば安価ということで好評だという。
コンビニエンスストアとの提携では、なかなか外出できない地方の高齢者など、買い物弱者への貢献も考えられる。ただし現状では、高齢者が使うにはスマートフォンの操作などの教育が必要と考えられ、同社では高齢者の利用を将来的な課題と位置づけている。現在、DoorDashではギフティング機能も提供しており、他人に対して注文する機能があるため、「田舎の両親に子供が注文する」といったことは可能。21年にはキャンペーンも実施したが、今後も同様の施策は続けていく考えだ。