“アロマンティック・アセクシュアル”というセクシュアルマイノリティの2人が主人公のNHKの“よるドラ”『恋せぬふたり』(毎週月曜22:45~ ※全8回)でダブル主演を務めた岸井ゆきのと高橋一生。様々な面で多様性が求められる昨今、2人はこの題材にどう向き合っていったのか。
アロマンティックとは、恋愛的指向の一つで、他者に恋愛感情を抱かないこと。アセクシュアルとは、性的指向の一つで、他者に対して性的に惹かれないことを差す。アロマンティック・アセクシュアルとは、その両方に当てはまること。そういう兒玉咲子(岸井ゆきの)と高橋羽(高橋一生)が織りなす同居生活を、アロマンティック・アセクシュアルの当事者らのアドバイスも聞きながら、繊細に役を演じた岸井と高橋に話を聞いた。
――お二人は、アロマンティック・アセクシュアルについてご存知でしたか?
高橋:僕は存じ上げませんでした。そういった方がいらっしゃると意識したことも、直接お話を伺ったこともなかったので。今回の役を演じるにあたり、出力よりも入力が先だと思ったので、まずはアロマンティック・アセクシュアルの考証の方々と何度かお話をさせていただきました。そこで「こういう時はどういった感覚なんでしょうか」と伺いながら柔軟にすり合わせ、丁寧に演じさせていただきました。
岸井:私はアセクシュアルという言葉は知っていて、そういう方がいらっしゃることは存じ上げていましたが、当事者の方とお話しする機会はなく、詳しく調べたこともありませんでした。また、アロマンティックについては存じ上げなかったので、一生さんと同じく、考証の方々とお会いする機会を設けていただき、そこでお話を伺いました。
――その話し合いのなかで、どんなことを感じたのでしょうか?
高橋:アロマンティック・アセクシュアルと言っても、その中でとても多岐にわたって細分化されているんです。実際に自分の体を通してお芝居をしていく過程で実感しました。例えば僕が演じた羽は、人との距離が近すぎることに抵抗を感じるのですが、岸井さんが演じる咲子さんは大丈夫なんです。さまざまな場面で、考証の方々に相談させていただき、微妙なニュアンスを確認しながらお芝居をしていました。
岸井:私もそうです。数回の話し合いの場だけでは、役に落とし込むまでにはいけなかったので、撮影をしていくなかで、考証の方がいてくださる時は、「実際にこういう場合はどうなんですか?」と尋ね、一つ一つ落とし込んでいきました。
――W主演ということで、お互いに共演した感想を聞かせてください。
高橋:とても繊細に扱わなければいけない題材でしたが、岸井さんは僕のお芝居を柔軟に受けとって、かつ柔軟に返してくださいました。現場で相談しながら、少しニュアンスを変えてみることもありましたが、あまり深くお伝えしなくても、岸井さんとはお芝居で会話ができたので、非常に助かりました。
岸井:うれしいです。台本に書いてある言葉をそのまま投げてしまうと、視聴者の方が上手く受け取れないんじゃないかというところもあって、そういう時に一生さんが、気持ちの面も含めて少し演技を変えてくださったりしたので、私も相談しながらやっていけたし、それを頼りにしてここまでやってこられたかなと。