AMD Chipset(Photo05)
Intelに比べるとAMDの600シリーズに関してはまだ詳細があまり伝わってきていない。まぁ登場時期が今年6月頃という予定だから、情報が出てくるまでにはもう少し時間が必要ということかもしれない。
ちなみにそもそも600シリーズなのか? という話はある(元々Zen 3と併せて2020年末に出荷、という噂が流れていたが、結局500シリーズのままであった)のだが、多分AMD 600シリーズになると思われる。というのは2021年11月にAMDとMediaTekは共同でWi-Fi 6E対応のモジュールを提供する事を発表した(AMDのリリース)のだが、この型番がRZ600シリーズなのである。正確には160MHzチャネルに対応するRZ616と、80MHzチャネルまでの対応のRZ608という型番なのだが、ここに600番台の数字を持ってきたというのは、要するに次世代のチップセットと型番を合わせたと考えるのが自然だと思われる。
その600シリーズ、多分ハイエンド向けはX670で、以下B670とかA620といった製品が続くのではないかと想像される。もう単純にこれは従来の300~500番台のチップセットの型番からの類推でしかないが。
スペックに関してはあまり伝わってきていない。以下ハイエンドのX670向けの推定だが、X570と比較すると
- チップセットから出るPCIeレーンそのものはPCIe 4.0のまま。レーン数も36で据え置きではないかと思われる。
- SATAポートは8程度? もともとX570は最大14ポートというお化けであったが、そもそもSATAポートの需要が減っている。
- USBポートは、CPU側からはUSB 3.2 Gen2 2x2が出る可能性があるが、チップセットはUSB 3.2 Gen2 2x1までの対応になりそう。
- StoreMIが多少強化される可能性はある。StoreMI 2.0ではWritebackが完全に廃されてしまい、確かに安全性は高まったが書き込みが全然高速化されない(むしろオーバーヘッドが増えて微妙に遅くなった)事が問題視されていた。ここに何らかの手が入った可能性がある。
といったあたりである。
ここで見えないのは、X670はX570と同じくIODを流用しているのか、独自に作ったのか、である。もともとX570は、Zen 3 Ryzenに搭載されているIODをそのまま流用したものである(ということで、製造プロセスはGlobalfoundriesの12LPである)。一方でメインストリームのB550とかエントリー向けのA520は台湾ASMediaとの共同開発である。というよりもX570だけが特殊であって、それ以前のチップセットは全てASMediaとの共同開発であった。今回もおそらくB650とかA620グレードのものは、やはりASMediaとの共同開発品で、製造プロセスもTSMCのN16とかN12あたりを利用するものと思われる。ただこれだとPCIe Gen4のハンドリングはギリギリ(不可能ではないが、発熱が多い)とみられる。ちなみにB550などはTSMCの28nmだったそうで、確かにこれならPCIe Gen3は可能でもGen 4は無理である。B550がPCIe Gen3どまりだったのもこの辺りが理由だ。
で話を戻すと、X670も現在見えているスペックで言えば、高価なTSMC N6のIODを利用する必要は薄く、TSMCのN16なりN12なりで十分賄えそうな気もする。その意味では、Zen 4のIODを流用するという案はあまりなさそうだ。
ただ気になるのはCPU編の所でも触れた話だが、AMDは2025年まで、引き続きGlobalfoundriesとウェハ供給契約を結んでいることだ。1つのアイディアは、これもCPU編の所で述べた様にPicasso APUをChromebookグレードに供給する事だが、これだけで総額21億ドル分を消化しきれるとも思えない。こう考えると、CCDやIODはTSMCに移行するとして、チップセットに関しては引き続きGlobalfoundriesを使い続けるという案が当然考えられる。実際、PCIe Gen4までの対応で良ければGlobalfoundriesの12LPで対応できることが判っているし、同社は2020年により高速なI/Oに対応した12LP+もリリースしている。この辺りを利用してAMD 600シリーズのチップセットを供給する、というアイディアは確かにあり得る。
しかしながらこの場合、従来のASMediaとの共同開発ではなく、AMDによる単独供給の形になると思われる。単にASMediaは従来TSMCをメインに使っており、あまりGlobalfoundriesと親和性が良くない、というだけの話であるのだが。
そんなわけで、このあたりは夏のCOMPUTEX前後のタイミングで詳細が明らかになるかと思われる。その際の一番の注目点は、スペックそのものよりも製造プロセスになりそうだ。