2022年の幕開けに、パーソナルコンピュータのハードウェア技術の動向を占う「PCテクノロジートレンド」をお届けする。本稿はメモリ・DRAM編である。Alder Lakeのデビューにあわせて出荷が始まったものの品薄なDDR5の今後、GDDR6は見事に立ち上がったが次世代の性能向上で課題が山積するグラフィックスメモリ、そしてHBMの将来展望を紹介したい。

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次はMemory編、というかDRAM編というのが正確かもしれないが。

  • PCテクノロジートレンド 2022 - メモリ・DRAM編

    Photo01: 近所の商店街をフラフラさまよっているところを保護。脱水と飢餓がすごく、当初はケージの2段目にすら上がれないほど衰弱していたが、高カロリー食1週間でみるみる改善、気がついたら天袋まで飛び上がってドヤ顔をかましていた(なお自力で降りられなかった模様)。

DDR5(Photo01)

Alder Lakeの出荷にあわせて2021年から出荷が始まったDDR5であるが、現状はAlder LakeとかIntel Z690より更に品不足感が著しい。もっともこれは当初から予定されていた話であり、当分はこの品不足感は解消されない。理由は簡単で、まだメモリ各社とも量産に本腰を入れていないから。なにしろ現状DDR5を利用するのはごくハイエンドの製品に留まるからだ。まもなくCESでIntelはAlder Lakeのラインナップを更に広げると見られるが、それでも例えばCore i5のK無しのSKUにDDR5を組み合わせるニーズがどこまであるか? と言われるとかなり薄いと言わざるを得ない。マザーボードにしても、DDR4対応に比べてDDR5対応の方は1万円ほど高値になっており、全般的に現時点でDDR5はまだ割高感が強い。こうした状況では、まだメモリメーカーとしても多少プレミアを付けた状況で販売している格好であり、値段が下がる見込みはない。

では同一容量のDDR4とDDR5が同一の価格になる、いわゆるビットクロスが発生するのは何時か? という話であるが、当初2022年中と言われ、ついでこれが2023年に伸びた、としたのが2021年初頭における見通しだったが、2022年初頭で言えばこれが少し前倒しになり、2022年末~2023年初めあたりになるのでは? と見られている。理由はまぁまたしても同じ繰り返しであるが、DRAMトップ3社(Samsung、SK Hynix、Micron)による4位以下のベンダーの振り落とし策である。特にトップのSamsungの場合、いち早く14nm(旧1αnm)世代にHKMGやEUVを適用させて量産をスタートしており、こうした動きにSK HynixやMicronも追従している。もっともロジックプロセス側でEUVの習熟を終わらせたSamsungと、これからEUVを導入するSK Hynix1β世代まではEUVを使わないMicron、と各社立場は微妙に異なるのだが、既にDDR4の市場はMatureになってきており、既に2021年第4四半期の時点でマイナス成長この先も価格は下落傾向と予測されている。こうした中ではDDR5に移行する事で利幅を稼ぎたいというのは、自然な流れである。

ただDRAMベンダーだけが頑張っても市場は立ち上がらない。CPUベンダーというか、マザーボードベンダーというか、要するにDRAMを使ってくれる側がDDR5に移行しなければ、作っても不良在庫になるだけである。これに関しては、2022年第1四半期にIntelがAlder Lakeの追加SKUとSapphire RapidsベースのXeonを、恐らく第2~第3四半期にAMDがZen 4ベースのRyzen(Raphael)と、同じくZen 4ベースのEPYC(Genoa)を市場投入することでやっと立ち上がることになる。DRAMベンダートップ3社も、恐らくこのタイミングに合わせて本格的に量産を掛けてゆく事になる。ただ最初に動くのはコンシューマ向けのDDR5 UDIMMではなく、サーバー向けのDDR ECC DIMMの方であり、コンシューマ向けのUDIMMが充実し始めるのは第3四半期以降かと思われる。この頃からTop 3社に関してはDDR5の方の生産が多くなりそうだ。ただ市場全体で言えば、まだ4位以下のメーカーは引き続きDDR4の量産を行っている(NanyaやWinbondなどは、DDR5の量産を始められるのは2023年以降になるだろう)から、市場全体としてはまだDDR4の方が多い。しかしながら、ビットクロスの観点で言えば、DDR4→DDR5では容量が概ね2倍になる。DDR5世代は当初8Gbit品と16Gbit品がラインナップされるが、メインは16Gbit品になる。一方でDDR4は8Gbit品がメインで、16Gbit品はちょっと高値である。2021年12月末におけるDRAM ExchangeのSpot市場のメモリチップ単価はDDR4 8Gbit 2666Mbps品で平均$3.672、16Gbit 2666Mbpsが$7.37となっており、8Gbit品はともかく16Gbit品はここから大きく下がることは考えにくい。対してDDR5はメインの16Gbit 4800Mbps品がContractで現在$12~$14程と伝わってきており(今はまだSpot市場が立ち上がっていないのでDRAM Exchangeでは未掲載)、これがSpotに出回ると大体$10~$11前後。現状50%ほどのプレミアが乗っかっていると思われるが、これが2022年末に無くなったと仮定すると、$6.7~$7.3ほどになると推定できるわけで、ギリギリビットクロスが発生しても不思議ではない。もっともこれ、仮定を色々積み重ねての数字なので、実際は2022年末でもまだDDR5に若干のプレミアが乗っかっている可能性はあり、そうなると2023年まで待つ必要がある。

なお容量そのものは8/16Gbitが当初ラインナップされるが、SK Hynixは2021年12月に24Gbit品のサンプル出荷を開始、Samsungも11月に24Gbit品を2022年前半中に提供開始する事を表明している。ただこの24Gbit品はサーバー向けがメインとなり、Consumer向けの提供は殆ど無いと思われる。

ちなみにSpeedの方だが、当初はDDR5-4800がメインとなる。一応JEDECのDDR5のSpecification(JESD79-5)を見ると、現時点ではDDR5-6400までが定義されている(Photo02)。逆に上はどこまで行くか? というと、Samsungは当初DDR5-7200まで行けると言っていた(Photo03)が、2021年11月に行われたSamsung Tech DayではDDR5-8400まで行けるとしている(Photo04)。もっともSamsungにしても、これを現在の14nmで行けるとは言っておらず、将来の12nmとか11nmあたりの世代になるかと思われる。逆に言えば現状のSamsungの14nm、SK Hynix/Micronの1αnmでは、行けてDDR5-5200あたりが上限で、DDR5-5600以降は次のプロセスで、という形になるとみられる。こちらの技術開発は早くて今年中であり、量産は2023年以降になるだろう。先にCPUの所でRaptor LakeがDDR5-5600をサポートと書いたが、DDR5-5600が出てくるタイミングでDDR5-5600が量産出荷出来ているかどうかは不明である(OC Memoryは既にDDR5-6000が市場に存在しているので、当初はDDR5-5600対応なのはOC Memoryのみという状況になりそうだ)。まぁ2022年中は、後半にDDR5-5200が出てくるかも、という辺りかもしれない。それ以前にまずは「何時」DDR5-4800が安定して供給されるかどうかが問題になりそうだ。

  • Photo02: 仕様上はDDR5-8400まで引き上げられる余地が残されている。ただDDR5-8400まで上がるか?というのは各社見解が異なる。

  • Photo04: DDR5+って何だ? という話はまぁあるのだが。

ついでに次のDDR6の話も。やはりSamsung Tech Dayで話があったのでちょっとご紹介しておきたい。まず仕様のFinalizeの時期だが、Samsungによれば2024年を予定しているとの事(Photo05)。またDDR6では4Channel/4Bankになりそう、という話であった(Photo06)。

  • Photo05: これは現時点でのSamsungでの見通しの話であって、他社が同じ見解かどうかはちょっと確認の必要がある。で、DDR6+ってなんだろう?

  • Photo06: DDR5では、1本のDIMM Channel(64bit)を、内部的に2つの32bit Channelに分割して、それぞれ別のBankとしてアクセスできる。昔のAthlon 64とかでサポートされたGang Modeと同じ振る舞いだが、DDR6ではこれが4つになるとの事。恐らくBurst LengthはDDR5の倍(64)になるので、16bit幅でもBurst AccessのGranularityは128Bytesで、DDR4/5と変わらないことになる。