• 馬場康夫監督

――そのほかに、二宮さんの印象的なエピソードはありますか?

二宮さんからある提案をされていたんですよ。「僕の役がイタリア語を話せるというのを、登場人物のイタリア人たちが知らなくて、急にしゃべって驚いたのと同様、テレビを見る視聴者にも隠しておいた方が面白いんじゃないですか?」と。そこで結構まじめに検討して、脚本家の澤本さんといろいろと実現方法を考えました。台本ではすでにイタリア語で話せるという伏線が張られていたので、急に速水がイタリア語を話し出すシミュレーションを何度も。

――しかし、難しかった。

ちょっと困ったなと思って。二宮さんが納得する鉄壁の論理を考え抜いたんです。そして二宮さんに「この間、相談を受けたあれなんですけど」と切り出しました。すると二宮さんは「あ、あれは忘れてください」と。なぜなら「僕も面白いとは思ったけど、考えてみたら番宣で俺がイタリア語しゃべってるのバンバン流すじゃないですか。だから意味がないことに気づきました」とサラリ。「そんなところまで考えが及んでいるの!?」と思ったのと、ちゃんと自分から撤回してくる素直さもすごいなと。

――二宮さんの役者としての魅力は、いかがでしょうか。

二宮さんも『検察側の罪人』とかすごい演技をしているのもあるんだけど、その人のパーソナリティ、キャラクター、人間力、培われてきた訓練や境遇がにじみ出るんです。それを一段と思い知らされましたね。二宮さんはクリント・イーストウッドからハリウッドに誘われましたが、お芝居もそうですけど、やはりその人柄に惚れたんじゃないでしょうか。

――では最後に、視聴者にメッセージをお願いします。

傑作だと思っています。絶対に面白いですし、二宮さんはじめお芝居の上手い人が演じているので、ぜひ見てください!

  • 有村架純 (C)フジテレビ

●馬場康夫
1954年、東京生まれ。大学卒業後、同級生たちと設立したホイチョイ・プロダクションズで制作活動を行う。日立製作所に勤務していた81年に「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載『気まぐれコンセプト』を開始。以降、『カノッサの屈辱』『マーケティング天国』(フジテレビ)などの深夜番組を企画、著書に『東京いい店やれる店』(94年)などがある。また、87年の『私をスキーに連れてって』で映画監督デビュー。その後『彼女が水着にきがえたら』(89年)、『波の数だけ抱きしめて』(91年)、『メッセンジャー』(99年)、『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』(07年)でメガホンをとり、『潜水艦カッペリーニ号の冒険』でテレビドラマ初演出。