●振り返りのなかでは、”れもん”との不思議な縁も?

さて、トークコーナーの後半は、鈴木の家族協力のもと写真を使ったコーナー”杏奈アルバム”。数年ごとに分けて数枚の写真をスクリーンに映し、その写真にまつわるトークを繰り広げていく。まず最初に映し出された’05~’06年の写真が早速昼の部のものと違うということに驚きつつも、本人も初めて見るハイハイ中の写真などが登場。

その他、特に幼少期には家族手作りのケーキや、綿菓子を食べていたりと食べ物とセットになっているものも多く登場しつつ、’12~’13年の部分では初めてカラオケ大会に出場した際のレアな写真も映し出され、「ちっちゃい頃のほうが、実は緊張しなかった」と振り返ってもくれた。

また、’14~’15年の振り返りでは、星型のピュレグミ レモン味を手にした写真に触れて「偶然なんですけど、実はアメとかお菓子もレモン味が結構好きで」と、”れもん”にまつわる縁も感じさせたりと、まさに彼女のアルバムを少しのぞきこませてもらうような、”はじめまして”にふさわしいコーナーとなっていた。

最後に振り返りを踏まえて、「まわりの方々に支えてもらえてきたから頑張ろうと思えるので、本当にここまで来れたのは皆さんのおかげです」とまとめる鈴木。改めて徳井が「ちゃんとしてるよね!」と改めて太鼓判を押したところで、もうひとつ鈴木へサプライズ。鈴木の母からの直筆の手紙が用意され、それを徳井が代読することに。

ここまで写真を通じて鈴木から見た思い出が語られてきたが、今度は母目線のこれまでの思い出が綴られ、徳井によって言葉として届けられていく。『プリマジ』出演が決まったときには一緒に号泣したことなどのエピソードが明かされ、「これから関わってくれるすべての人に感謝の気持ちを忘れずに、『杏奈を推しててよかった!』と思われる声優アーティストになってくださいね」とのエールが送られる。

そして最後には「これからもいちばんのファンとして、全力で応援してるでござる!」と、れもんの口調を踏襲する形で結ばれた。それを受けて「本当に、母の力は偉大だなぁと思います」と感謝の言葉を述べ、トークパートは終了。再び鈴木ひとりでのライブパートへ。

●ファンとともに早速作った! デビュー曲「Dreaming Sound」でのカラフルな光景

歌唱に移る前に、鈴木から今の気持ちが語られる。そのなかでは、母からの手紙の中でも触れられた、小学4年生のときのレッスンで「演技、向いてないよ」と言われたことへも改めて言及。「それがぐさっと刺さっていた」と明かし、コロナ禍でライブもできなず、デビュー後もオーディションに落ち続けたこともあって、「これでうまくいかなかったら、皆さん離れていっちゃうんじゃないかと思った」と、わずかに涙声になりながら当時の不安を吐露する。

そんななかでの『プリマジ』のオーディションの話を受けた際、心愛れもんを見た瞬間に「この子、やりたい!」と感じ、事務所に行く度にスタッフに演技を見てもらって叶えられた、とのエピソードも語ると、「これからも、歌でも声優でも鈴木杏奈を届けられるよう頑張ります!」と宣言。一礼して「新曲を持ってきました」との言葉から、歌唱へと移る。

その新曲「てのひらのありがとう」は、ステージ上彼女にだけ温かなライトが当たるなかスタート。ファンへ向けた自身の想いをそのまま乗せたかのような歌唱となり、歌詞を大事に大事にたっぷりと歌いかけていく。優しさがありながら包み込むような、テクニックとハートが両方乗った歌声を響かせていく。それはきっと、ファンの心にも確かに何かを残したことだろう。

歌唱後一礼したあとの、鈴木の表情は非常に晴れやか。「あぶなかったぁー!」と涙声だった場面を述懐しおどけてみせるも、「本当に皆さんのおかげでここまで来れたしこれからも頑張っていけるので、まだ見てない景色を、皆さんと一緒に見たいです!」と意気を上げて、改めてデビュー曲「Dreaming Sound」のフルサイズの披露へ。

再びニコニコ満開の笑顔で、1階席も2階席も、その手前から奥まですべてのファンと目が合うように視線を配りながら歌っていく。2-Bメロはサビ前の飛びどころを先導して、声が出せないなかでも最大限の盛り上がりを会場にもたらしにかかる。サビの中での星を描く振付など大事な要素もしっかり織り込みつつ、最後まで伸びやかな歌声とともに、楽しさ全開で1曲を披露しきっていった。

歌唱後には客席を見回して「カラフルな『Dreaming Sound』、めちゃめちゃきれいです!」と直前のMCを受けてペンライトを輝かせてくれたファンへの感謝を述べて、本編は終了。終演後のお見送り会ではファンとの交流を重ね、大事な大事な1日を締めくくったのだった。

力強さや伸びやかさはもちろん、鋭さや刺々しさにおおらかさまで感じさせる、様々な歌声を聴かせてくれた今回のイベント。それも変な力を入れることなくスムーズに響かせていた姿は、彼女の無限の可能性を感じさせるものだった。これからきっと彼女は、私たちにたくさんの“観たことのない景色”をみせてくれることだろう。その無数の景色に向かって、鈴木杏奈の声優アーティストとしての歩みが、いよいよ始まった。