ムチャなロケにも寛容で、バラエティ番組の制作現場から人気の静岡県熱海市。新型コロナウイルスの影響で年間100本ペースあったロケは激減したが、緊急事態宣言の解除とともに、再び活況を呈しつつあるようだ。きょう29日(18:00~)には、日本テレビ系『有吉の壁 修学旅行in熱海 年末3時間SP!』で、熱海ロケの模様がたっぷりと放送される。
今年7月には土石流災害が発生し、熱海へのマイナスイメージが発信されてしまったが、バラエティロケでその払拭に期待をかけている。ロケ支援事業を推進してきた、熱海市役所観光建設部観光経済課メディアプロモーション戦略室長の山田久貴氏に、話を聞いた――。
■番組からの厚い信頼“ロケを復活するなら熱海”
熱海市では、民間の商社から転職した山田氏が旗振り役となって、12年6月に市の公式ウェブサイトに「ADさん、いらっしゃい!」というページを開設し、若者層の来訪を目的にバラエティのロケを積極的に誘致。それまで年間20~30本程度だったロケが、ここ数年は100本ペースに急増し、19年度(19年4月~20年3月)は111本に上った。
しかし、コロナ禍に突入すると昨年3月末からパッタリと途絶える事態に。その後は散発的に行われる状況が続いていたが、4回目の緊急事態宣言が今年9月末で解除されたことを受けて、10月中旬頃から徐々に回復し、現在は最盛期の8割程度まで戻った。
観光客の数も、「団体はまだなので完全ではないですが、家族連れや若い方、最近では年配の方も戻ってきているので、幅広い世代の方がいらっしゃっています」(山田氏、以下同)。熱海は、もともと外国人観光客が全体の2%程度ということで、インバウンド低迷の影響は大きく受けないのだ。
ロケ本数の回復が早かった理由の1つは、東京に近いという地の利。緊急事態宣言が解除されたとは言え、遠方のロケはまだ控える番組が多く、結果として関東近郊で実施される傾向にある。その中でも熱海は、コロナ前から手厚いサポートで番組スタッフからの信頼が厚く、コミュニケーションを取っていたことから、“ロケを復活するなら熱海”と選ばれるケースもあるという。
また、大きな被害を受けた土石流災害もあり、「熱海を少しでも応援したいという意味で、ロケの話を頂く番組もあります」とのこと。久々に熱海にやってきた番組スタッフたちからは「大変でしたね」「心配しました」と次々に声をかけられたそうだ。
■有吉の壁P「感謝の気持ちも込めて」
これまで特番初回、レギュラー初回と節目に参上し、今回を含め6回もロケを行ってきた熱海を“聖地”と位置づけている『有吉の壁』は、「星野リゾート リゾナーレ熱海」でロケをした今年7月7日の放送について、災害に配慮してサブタイトルから「熱海」を外した。それでも、公式Twitterでは「#熱海ならびに土砂災害に遭われている皆様に心よりお見舞い申し上げます」とハッシュタグを付けてメッセージを寄せた。
そんな同番組は、29日の3時間スペシャルの大半を熱海ロケで放送。熱海港では「有名人に出会える熱海遊覧船ツアー」、ホテルでは「監視カメラの壁を越えろ! 修学旅行のひとコマ選手権」、温泉では「温泉の壁を越えろ! おもしろ即答選手権」、そして熱海の観光名所を巡る「置き去りの壁を越えろ! おもしろバスツアー」と、熱海をたっぷり使ってロケが行われている。
『有吉の壁』の横澤俊之プロデューサーは「『今年の年末SPは“聖地”熱海で』と、かなり早い段階から決めていました。コロナ禍直撃となったレギュラー放送初回。一般人の壁のロケ地探しに本当に苦しんでいたときに快く引き受けてくれたのが“聖地”熱海でした。今年の災害を受けて、僕らのロケがどれだけ恩返しになるかは分かりませんが、とにかく感謝の気持ちも込めて“聖地”と銘打って今回の年末SPでお邪魔させていただきました」と、今回の熱海ロケに込めた思いを語ってくれた。