岐阜県北部にある人気観光スポット、飛騨高山。人気観光地だけに、すでに食べ歩きや朝市を経験した人は、多いのではないでしょうか?
今回ご紹介するのは、リピーターでも楽しめる穴場のスポット。少し足を伸せば、人気アニメで注目の「両面宿儺」が見られる千光寺や、江戸時代にトリップできる「高山陣屋」など、高山エリアの深い魅力に触れられます。
人波にもまれず、じっくりゆっくり。飛騨高山の「知る」が楽しい、穴場スポットを巡ってみませんか?
【その1】両面宿儺のふるさと「千光寺」
まず最初にご紹介するのは、高山駅から少し足を伸ばした場所にある「千光寺」。駅からはタクシーで約20分。標高約830mの高台にあり、御嶽山や船山を見渡せる自然豊かな場所にあります。
「千光寺」といえば、最近、人気アニメに登場した「両面宿儺」で、ぐっと注目を集めていますよね。アニメの中でも「両面宿儺」は、完全にダークヒーロー。「日本書紀」においては、背中合わせに2人の人がくっついたような怪物として恐れられてきました。
……ですが!みなさん、知っていましたか?
「両面宿儺」って、実はその真逆。飛騨では、スーパーヒーローなんです。
飛騨に伝わる伝承では、悪鬼や毒龍などを退治して、人々を救ったとされています。さらに、「千光寺」では、宿儺が寺を開いた張本人という言い伝えがあり、救世観音像の化身だと言われてきました。
江戸時代にこうした背景を知った「円空上人」が、「千光寺」に逗留しながら「両面宿儺」を掘り、それを奉納しています。境内にある「円空仏寺宝館」には、「円空上人」が掘った「円空仏」を64体展示。その中に飾られた「両面宿儺像」は、「円空上人」が晩年に作った最高傑作だと言われています。
岐阜県で生まれ、近畿から北海道まで諸国を行脚し、飛騨でも多くの仏像を作った「円空上人」。どんなお顔をされているのかは、「円空仏寺宝館」の「絵本藩色円空画像」を見れば分かります。
ちなみに、「円空上人」はお弟子さんやアシスタントを一切つけずに、たった一人で「円空仏」を彫り続けました。聞けば、なんと12万体の「円空仏」を彫ることを誓願にしていたそうです。
実際には、全国で約7000体の「円空仏」が見つかっているそうですが、考えてみたら、その数も相当スゴイ!例えば、50年かけて彫り続けたとしたら、最低でも2日半で1個は「円空仏」を作る計算になるんです……。(しかも、睡眠時間を考慮せず!)
まさに、神業ですよね!!
続いて、境内にある「宿儺堂」へ行ってみることに。「宿儺堂」は名前の通り、石で作られた「両面宿儺」が安置されています。
そこで目にした「両面宿儺」には、今まで見たものとは少し違ってみえました。というのも、この「両面宿儺」の作者は不明。作ったのは「円空上人」ではありません。
……ですが、強面の反対側は柔和な顔つき。よーく見ると、飛騨の人を大切に思っている心の優しい持ち主だということが伝わってきます。
そして、「千光寺」の本殿には、重要文化財に指定された血染めの天井があります。
一説によると、かつて武田軍が攻めてきた際、飛騨を守っていた武将たちが武家屋敷で切腹した床板を、狩野探雪(かのうたんせつ)が供養のために天井画にしたのだとか。はっきり素性は分かりませんが、確かにところどころ赤く染まっているのが肉眼でも分かります……。
実は「千光寺」のご住職は、警察学校の講師もされている方。もしかしたら、今後、科学捜査によって血染めの天井の謎が紐解かれるかもしれません!
※「円空仏寺宝館」・「宿儺堂」については冬の間、冬季休館に入ります。また開館日・公開日についても決められています。詳細については、記事の最後にある「関連メモ」から公式ホームページをご確認ください。
【その2】440円で満足しかない!日本で唯一現存する「高山陣屋」
次にご紹介するのは、高山駅から徒歩で約10分の場所にある「高山陣屋」。
こちらは、徳川幕府が飛騨を直接統治した時代に、拠点となったお役所。江戸時代の建物がきれいな状態で保存されているだけでなく、飛騨地方の役所「飛騨県事務所」として、実際に昭和44年まで使われていました。
歴史好きならマストなスポット。歴史に詳しくない人も、歩いて回るだけで江戸時代の暮らしぶりが伝わり、ワクワクしながらトリップできます。
「高山陣屋」の広さは、約1000坪!じっくり見て回れば、あっという間に1時間が過ぎてしまいます。時間に余裕がある方は、時間をとってゆっくり見学してみてください。
数あるスポットの中で、最も“江戸時代の空気”を感じるのが「役宅」エリア。江戸時代の台所がそのまま残っていたり、復元した和式便座まであるんです。
縁側からは美しいお庭も眺められて、ほっと心が落ち着きますよ。
ここは、儀式・会議・講釈などが行われた部屋。江戸時代に内命を受けた使者(今でいう会計検査員)が、仕事ぶりを見に来たのだとか。
そして昭和44年まで、ここに「飛騨県事務所」の税務課がありました。こんな壮観な場所でお仕事できるなんて、ちょっとうらやましい!
そして、一番衝撃的だったのが「御白洲」。よく時代劇に出てくる、お代官様が悪人に罪状を問いただすシーンが、まさにここなんです。
江戸時代は“自白”を重んじた時代。「お前が犯人だろ、自白しろー!」という感じで、自白をさせるための拷問グッズまで置かれていました。お、恐ろしい……。汗
見学ルートの後半になると、日本最古の蔵へと進んでいきます。
この部屋は、年貢米を収納する「御蔵」。江戸時代は、1つの「御蔵」に米俵およそ2000俵を保管していました。
当時は、お米が税金代わり。幕府の年貢米は「天領俵」「菊俵」と呼ばれ、重さはもとより、中身も厳しく吟味されていたそうです。年貢米の量を見ても、江戸時代の支配力のすごさが伝わりますよね。
なかでも驚いたのが、「高山陣屋」の屋根です。モザイク柄に見えるこの屋根は、釘を一本も打たず、割った板を重ねて、重石を上から置いてるだけ。しかも、この板を何度も返しながら使うことで、20年間も使うことができるのだとか。
自然に任せて、1つの板材を大切に使いながら、傷んだところだけを張りかえる。これって、まさに再利用可能なSDGsへの取り組みではありませんか……!今こそ、江戸時代の人の考え方は大切なのかもしれませんね。
【その3】気軽に飛騨の“匠の技”を!「飛騨高山まちの体験交流館」
2018年にオープンの「飛騨高山まちの体験交流館」は、飛騨の“匠の技”を気軽に楽しめるスポットです。ここでは、さるぼぼや組紐など、飛騨に伝わる工芸品を手作りする体験メニューが充実。旅の良い思い出になるので、時間がある方は、ぜひチャレンジしてみてください。
筆者は今回、「木版画レトロ行灯」にトライしました。
「飛騨で木版画…!?」と不思議に思われるかもしれませんが、豊かな木材に恵まれた飛騨高山は、昔から「飛騨版画」と呼ばれる版画文化が盛んな地域。小学校の授業に、木版画が必須なのも、飛騨ならではです。
そんな「飛騨版画」に触れられるのが、今回の体験。
まずは版木に色をのせ、その上から和紙を当てたら、ばれんでしっかりと摺っていきます。あとは、好きな和紙を切って貼り付けながら、自分好みのデザインを完成させます。
完成品は、今も我が家の寝室に。灯りをつけるたびに、飛騨高山に思いを馳せることができるので、毎日ほっこり癒やされています。
ちなみに、「飛騨高山まちの体験交流館」での体験は、高山市内に宿泊する人が対象の「わくわく体験!飛騨高山」体験クーポンを使うと、ぐっとお値打ちになるものがあります。
対象となる体験メニューや配付条件、利用方法の詳細は、一番最後の「関連リンク」にURLを貼ってあるので、そちらをチェックしてくださいね。