【4】MVNOがahamoに白旗、総務省に緊急措置を求める

携帯各社の低価格サービス強化はユーザーに大きな恩恵を与えた一方、従来低価格のサービスに力を入れてきたMVNOを窮地に追い込むこととなりました。

そうしたことからMVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会は、1月に緊急措置を求める要望書を総務省に提出。携帯大手と平等に競争できる環境を求めるに至っています。

その結果、総務省の働きかけにより携帯大手がMVNOにネットワークを貸し出す料金を引き下げたことで、各社が低価格の新料金プランを相次いで発表。なんとか競争力を維持しようとしていますが、それでもサービスの品質面などで携帯大手に敵わない部分が少なからずあり、かなりの苦戦を強いられているというのが現状です。

そうした状況を受けてか、NTTドコモがドコモショップで一部MVNOのサービスを契約・サポートする「エコノミーMVNO」という仕組みを10月より開始しています。

この仕組みはMVNOが弱みとしている販売やサポートの部分でNTTドコモの協力が得られるという大きなメリットがありますが、一方で会員基盤に「dアカウント」を用いる必要があり、MVNOの独自色が打ち出しにくくなるなどデメリットも多く、連携するMVNOは2社にとどまっています。

  • NTTドコモは他社サブブランドへの対抗策として、MVNOと連携して低価格サービスを提供する「エコノミーMVNO」を打ち出したが、障壁の高さなどもあって参入事業者は2社にとどまっている

【5】2万円スマホ人気が急拡大、その背景にある3Gの終了

低価格の波は料金プランだけでなく、スマートフォンにも押し寄せています。それを象徴しているのが2021年、2万円台のスマートフォンが急増したことです。

中でも注目を集めたのが、ソフトバンクが2月に販売を開始したシャオミの「Redmi Note 9T」です。FeliCa対応など国内向けのカスタマイズを施しながら、税抜きであれば2万円を切るという低価格を実現して驚きをもたらしました。

ですがそれ以降、国内メーカーも相次いで2万円台のスマートフォンを投入。ソニーの「Xperia Ace II」が5G非対応ながらも低価格でヒットするなど、人気を獲得しています。

その背景には携帯各社が3Gのサービス終了を見据え、ユーザーを4Gや5Gに移行させる「巻き取り」に力を入れていることが影響しており、3G端末を使い続けてきた年配層の支持が2万円台スマートフォンの人気へとつながったといえるでしょう。

  • NTTドコモから販売されたソニーの「Xperia Ace II」。5G非対応だが22,000円(ドコモオンラインショップ価格)と安く、電気通信事業法の割引上限額を適用して1円で販売するショップも多かった

【6】ついに1インチセンサーも搭載、高額スマホに注目

安価なスマートフォンが人気となった一方で、ハイエンドスマートフォンも大きな注目を集めました。2021年はメーカー各社が持つ技術や思想を詰め込んだ高額なスマートフォンが相次いで発表され、大きな話題を呼んでいます。

高級コンパクトカメラに採用されている1インチのイメージセンサーをカメラに搭載したスマートフォンが相次いで登場したことは、市場に大きなインパクトを与えました。6月に発売された「AQUOS R6」を皮切りとして、ライカカメラが全面監修したソフトバンクの「LEITZ PHONE 1」やソニーの「Xperia PRO-I」と、1インチセンサー搭載スマートフォンが3機種も登場したことには驚きがあったといえるでしょう。

  • 「LEITZ PHONE 1」はライカカメラが監修し、1インチのイメージセンサーを搭載するという高性能ぶりで注目されたが、18万円を超える価格(SoftBank Online Shop価格)でも話題となった

他にもAI機能を強化した独自のチップセットを搭載したグーグルの「Pixel 6」や、折り畳みディスプレイを搭載しながら防水性能を実現したサムスン電子の「Galaxy Z Flip 5G」など、高額ながらも技術の粋を詰め込んだスマートフォンが市場を大きく湧かせました。

一方で、11月にバルミューダが発売した「BALMUDA Phone」は、性能はあまり高くないにもかかわらず、ソフト・ハード全面にわたって同社のこだわりを徹底追求した結果、10万円を超える価格となり賛否を呼ぶに至っています。

【7】SIMロック原則禁止でスマートフォンの買い方が大きく変化

そのスマートフォンの買い方に関して、大きな変化となったのが10月より実施されたSIMロックの原則禁止措置です。

これは総務省が携帯電話会社の乗り換え促進策の1つとして対処が進められていたもので、携帯各社は10月以降に発売するスマートフォンに対して、原則SIMロックを外した状態でなければ販売ができなくなったのです。

これによって従来難しいとされてきた、キャリアショップで回線契約することなくスマートフォンだけを購入し、他社のSIMを挿入して使うという行為が堂々とできるようになりました。

そうしたことからMVNOとして「イオンモバイル」を展開するイオンリテールは、同社が携帯大手の販売代理店していることを生かし、イオンの店舗で携帯大手の販売するスマートフォンと、イオンモバイルのSIMとのセット販売を推進するに至っています。

  • SIMロックが原則禁止となったことを受け、イオンモバイルは携帯大手が販売するスマートフォンと、イオンモバイルのSIMをセットで販売することを推進するとしている

ですが一方で、総務省の覆面調査により、キャリアショップで端末単体での販売を拒否する事例が多発したことが明るみとなり、5月には携帯大手3社に行政指導を実施しています。

現在もなおキャリアショップでスマートフォンだけ購入できることを知らない人が多く、それを巧妙に利用して新規契約者向けにスマートフォンを大幅値引きをする店舗が増えている様子を見るに、端末値引きを巡る携帯各社と総務省とのせめぎ合いは2022年も続くことになりそうです。