コロナ禍で人々の行動に大きな制約が発生した上、東京五輪が延期の末に無観客で開催されるなど、新型コロナウイルスに生活が大きく振り回された2021年。

携帯電話業界は、ある意味コロナ禍の影響で誕生した菅義偉前内閣総理大臣の影響を非常に強く受けた、“料金引き下げ”の1年だったといえます。

2021年の携帯電話業界の主な出来事を振り返ってみましょう。

【1】「ahamo」などオンライン専用プランがサービス開始

2020年10月に誕生し、携帯料金引き下げを政権公約に掲げた菅政権の影響を強く受ける形で生まれた、NTTドコモのオンライン専用料金プラン「ahamo」。

2021年3月にはそのahamoが本格的にサービスを開始しただけでなく、KDDIが「povo」、ソフトバンクが「LINEMO」といった対抗サービスを打ち出したことで大きな注目を集めました。

  • 2021年は年明け早々から、KDDIが「povo」を打ち出すなど各社のahamo対抗サービス発表が相次いだ

    2021年は年明け早々から、KDDIが「povo」を打ち出すなど各社のahamo対抗サービス発表が相次いだ

急速に競争が激化したことで、ahamoはサービス開始前に料金を引き下げるなど各社のせめぎ合いが見られた一方、各社とも具体的な内容が固まらないまま発表が先行したこともあって、サービス開始直前になって利用できないサービスが次々明らとなり、ユーザーに大きな混乱を与えることにもなりました。

そして年末となった現在、各社が公表している数字を見ると、ahamoは約200万契約を獲得した一方、povoはその半数の約100万契約、LINEMOに至っては契約数がそれを下回ると見られているなど、各社のオンライン専用プランにはかなりの優劣が出てきています。

ただ好調とされるahamoでさえ最近は契約の伸びが鈍化傾向にあり、事前の盛り上がりの割には利用が増えていないという見方もできるでしょう。

【2】楽天モバイル、KDDIが「0円プラン」を投入

携帯3社のオンライン専用プラン投入で危機に陥ると見られていた楽天モバイルですが、起死回生の策として4月に新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を打ち出しました。

これは月額3,278円で使い放題だった定額制の「Rakuten UN-LIMIT V」を、通信量に応じて料金が変わる段階制に変更、なおかつ通信量が1GB以下の場合は月額0円で利用できる仕組みを設けたもので、発表当初から大きな話題を呼びました。

  • 楽天モバイルが4月に提供開始した「Rakuten UN-LIMIT VI」は、1GB以下であれば月額0円という破格の値段で大きな注目を集めた

楽天モバイルはこのRakuten UN-LIMIT VIの提供、そしてエリアの拡大に伴って攻めの姿勢を強めたことで契約数を順調に拡大。2021年9月末時点では411万契約を獲得しています。

そうした楽天モバイルの伸びに危機感を強めたKDDIは、9月にオンライン専用のpovoを「povo 2.0」へとリニューアル。基本料金は月額0円で、必要な時に必要な量の通信量をトッピングするというプリペイド方式に近い仕組みを導入してやはり話題となり、楽天モバイルと並び「0円プラン」と呼ばれ人気を集めているようです。

【3】攻めるサブブランド、単身者でも低価格を実現

オンライン専用プランや0円プランなど、大きなインパクトを与えたプランの投入が目立った2021年ですが、実は最も人気を獲得したのはサブブランドかもしれません。

中でも注目されたのが、KDDIの「UQ mobile」が6月に提供開始した「でんきセット割」です。

これは指定の電力サービスを契約することで、毎月の携帯料金の割引が受けられるというもの。最も安いプランに適用すると月額990円という料金を実現できるだけでなく、従来携帯各社の割引サービスの対象から外れることが多かった単身者であっても、電力サービスの契約だけで割引を受けられることから人気となり、9月には固定ブロードバンドも対象にした「自宅セット割」へと進化を遂げています。

  • UQ mobileの「でんきセット割」は単身者でも月額1,000円を切る価格を実現。9月には対象を固定ブロードバンドに広げた「自宅セット割」へとリニューアルしている

一方ソフトバンクの「ワイモバイル」も、8月に翌月に余った通信量を繰り越せる「データくりこし」を追加するなどサービス強化を図っており、LINEMOよりも契約数が好調に伸びています。

そうしたことからソフトバンクは低価格サービスの主軸をワイモバイルに据える方針を打ち出しており、こうした点からもサブブランドの好調ぶりを見て取ることができるでしょう。