REDEEマネージャーの古川さんにインタビュー
本イベントの会場にて、REDEEのマネージャーを務める古川速人さんへのインタビューを行いました。オープン当初から大きくコロナの影響を受けたREDEEの運営や、今回の「OSAKA VALORANT FES」開催の背景や狙い、そしてREDEEの今後の展開について伺います。
コロナ禍での営業を模索し、デジタル教育に注力
――REDEEはオープン当初から、コロナによる大きな打撃を受けたと思います。緊急事態宣言などの影響はいかがでしたか。
古川速人さん(以下、古川):REDEEがオープンしたのは、2020年3月1日。まさにコロナの流行が始まったころで、オープンからわずか2週間で臨時休館という判断になりました。そこから、お店を安全に運営するために必要な体制を整え、およそ2カ月後の5月25日に営業を再開しています。
その後、2020年8月に関西テレビさんの番組に取り上げられて、お客さんが一気に増えた時期があったんです。そのときは「これでまたやっていける」と思ったのですが、しばらくして再び緊急事態宣言が出て、苦しい状況が続きました。
――コロナ禍での営業を模索された結果、現在の通常営業では子ども向けの教育コンテンツが中心になっているのでしょうか?
古川:はい。現在はどちらかと言うと、主に子ども向けのデジタル教育施設として運営しています。これについては、REDEEのあるららぽーとEXPOCITYが、ファミリー層のお客さんが多い複合施設であることも背景にあります。
REDEEの名前には“E”が2つ付いていますが、1つがエンターテインメントの“E”で、もう1つはエデュケーションの“E”。この2つはオープン当初からREDEEの理念になっているもので、今も大きく方針を転換したというわけではないんです。
ただ、コロナの影響が長く続いていることや、今デジタル教育が世の中に求められている内容であることを踏まえて、教育のほうに軸を寄せてきた経緯があります。
――コロナの影響に関わらず、もともと教育はREDEEのコンセプトにあったものなんですね。
古川:とはいえ、コロナの影響がなかったら、今どういう方針になっていたかはわからないですね。REDEEがオープンした当初は、1~2週間に1回くらいの頻度でeスポーツイベントでの貸し切り予約が入っていたんです。でも、それらはコロナの影響で断念せざるを得ませんでした。
なので、もしコロナがなければ、もっとeスポーツイベントをメインに開催している施設だったかもしれません。人を集めるイベントの開催が難しい状況が続いたために、デジタル教育へ寄せていった形です。
ときにはオンライン大会に切り替え、ノウハウを蓄積
――そして、徐々に落ち着いてきたコロナの状況を見て、今回のようなオフラインイベントを企画されたということですね。
古川:2020年の9月から11月ごろも、大阪はコロナの状況が比較的落ち着いていたので、『ストリートファイターⅤ』のオフライン大会を開催していたんです。ところが12月になると、大阪でもオフライン大会の開催が難しくなってしまいました。
ですが、スタッフに技術を身につけてもらいたい思いから、オンラインに切り替え、「REDEE ON-LINE CUP」というコミュニティ大会を始めました。イベントのノウハウを学ぶにあたって、自分でイチから大会を作って運営する経験に勝るものはないですから。また、スタッフから「やりたい」という希望があったのも理由の1つです。
今回の「OSAKA VALORANT FES」は、外部の業者を入れることなく、REDEEのスタッフたちが必死に勉強して作ったもの。まだまだ一流のeスポーツイベント会社ほどのクオリティは出せてはいませんが、それでもこうやって形にできたのは、オンラインでの経験を含めた積み重ねがあったからこそだと思います。
――今回の「OSAKA VALORANT FES」は、いつごろから実施を検討されていたのでしょうか?
古川:僕としては、2021年8月のタイミングで考え始めていました。当時まだコロナはまだ収まっていませんでしたが、ワクチンの接種がスタートして、国内では今後コロナが徐々に収束していくだろうと考えたんです。
なので、どうやったらオフラインイベントが開催できるのか、REDEEを使って何ができるのかを考えていました。具体的な準備を始めたのは10月くらいからですね。
――今回のイベントで『VALORANT』を採用した理由を教えていただけますか?
古川:まず意識したのは、お客さんが求めているタイトルであること。日本国内の配信で、今どのタイトルがどれだけ視聴されているのか、データを見ながら検討しました。その結果として、『VALORANT』は非常に人気が高く、かつ5対5のチームでの対戦がREDEEの会場やステージに適していると考えたんです。
実際に今回のイベントでは、声を上げながらチームメイトとハイタッチするような光景を、会場のあちこちで見ることができました。これこそがまさにオフラインの醍醐味だと感じるような、皆さんに楽しんでいただける空気を作れたと思います。
もう1つ付け加えると、『VALORANT』は1年半前にリリースされたタイトルで、始まった瞬間からコロナ禍だったんです。僕らが勝手に共感を覚えているだけなんですが、同じコロナという災難に見舞われた仲間というか(笑)。
そう考えたときに、『VALORANT』では、この規模でのオフラインコミュニティイベントを誰もやっていないんですよ。なぜなら、ずっとできなかったから。そういった背景も踏まえて、お客さんが喜ぶだろうという自信がありました。これも『VALORANT』を選んだ理由の1つです。
eスポーツの発展に必要な、イベントでの収益化を意識
――「OSAKA VALORANT FES」の企画段階で、特に意識されていた部分があれば教えてください。
古川:私たちは、もちろんお客さんを喜ばせたいという気持ちもありますが、いち営利企業として、eスポーツを持続可能なものにするために、イベントでマネタイズする仕組みを作らなければならないと強く思っています。
僕自身ものすごくeスポーツが好きなんですが、eスポーツはそれほど儲からない現状がある。というのも、収益を上げる仕組みが全然できていないからです。
今はお客さんも「eスポーツイベントは無料で参加するもの」というイメージがあると思いますが、お金を払って参加することを当たり前にしたい。そうでないと、いつまでも業界にお金が入ってこないですし、お金が入ってこない業界には良い人材が集まらないので、eスポーツの発展は望めないと考えています。
今回のイベントでは、盛り上がりを重視して観戦は無料としましたが、僕としてはお客さんに満足してもらいながら、どうやったら利益を出せるのかというところに、かなりこだわりました。
それから、REDEEとしては、この施設を企業の方々に貸し出すビジネスもしています。ですが、コロナの影響でその事例もほとんどありません。なので、僕らとしては「REDEEの設備を使えば、こんなに面白いことができるんだ」という、REDEEの持つ可能性を示したい思いもありました。
今後に向け、大会やパブリックビューイングの検討も
――いまだコロナの状況は読めない中ではありますが、REDEEとして今後考えていることについて教えてください。
古川:まずは教育の側面からお話しすると、現在REDEEではメンバーシップという、月額制でカリキュラムを受講できるサービスに注力しています。
子どもたちにとってゲームは、いろいろなことを学ぶきっかけになるもの。僕らは「ゲームは教育だ」というキャッチコピーを掲げています。ですから、『マインクラフト』を使ったプログラミングや『フォートナイト』を使った英会話など、ゲームを使ったさまざまな教育カリキュラムを用意しています。
また、こうした「ゲームが教育につながる」という考え方を広めるために、REDEEがコンサルに入らせていただいて、いろいろなところで展開していくプロジェクトも進めています。
そして、もう1つの“E”である、エンターテインメントおよびeスポーツの側面については、やはりコロナ収束後の世界を考えていくべきだと思っています。
この1~2年で、オンライン大会のノウハウが各企業に蓄積されたことは、大きな成果の1つです。でも、人が集まるオフラインの場は、間違いなく多くの人に求められているはず。なので、こうしたオフラインイベントを、引き続き開催していきたいと考えています。
――メインアリーナの大画面で、「VALORANT Champions Tour(VCT)」のような大会が観戦できたら非常に盛り上がると思うのですが、今後パブリックビューイングなどを行う構想はありますか?
古川:はい、そういった検討もしています。REDEEには、今回ご覧いただいたメインアリーナだけでなく、サブシアターもありますので、パブリックビューイングの開催にもかなり適した施設なんですよ。
大会を開催するにあたっての設備も、かなり良い環境がそろっています。今回のイベントを事例に、企業さんから「大会開催のためにREDEEを貸し切りたい」という打診をいただくなど、実際に検討を進めているものもあります。
この2年で、オンラインありきの世の中になりましたが、人が直接会ったり集まったりすることには、やはり代替できないものがありますよね。情勢を踏まえながらではありますが、これからも皆さんに集まって楽しんでいただく施設でありたいと思っています。
――今後もこうしたオフラインの機会を楽しみにしています。古川さん、本日はありがとうございました!