――現在撮影中だそうですが、本作は吉田さんの長いキャリアにおいて、どういう位置づけの作品になりそうですか? また、これまでに、自分のターニングポイントになった作品があれば教えてください。
現場は緊張感があり、決してみんなでギャーギャー言い合うような楽しい雰囲気ではないです。ただ、監督から入る様々な演出や要求を1つ1つクリアしていくと、いつのまにかふっと面白いシーンが出来上がっている瞬間があります。今回、アドリブをやらないことで、また違う自分になれるんじゃないかという気もするので、本作がターニングポイントになるかもしれないし、自分の代表作にもしたいなあとも思ってます。
また、今までの出演作でいえば、どうやってこの演技をしたらいいんだろうと思った『おっさんずラブ』はターニングポイントだったかと。あの演技は一線を超えちゃいけないところがあるけど、ある程度は大きく表現しないといけなくて、難しかったです。ある意味、束縛が多い役柄だったから、そこをどう突破していくかといつも考えながら演じていたので、自分の中では1つのスキルになったような気がします。
――今回は劇中で「茶柱が源太郎をハンサムにさせる」とありますが、吉田さんはどんなときにハンサムになりますか?
子供がまだ8カ月で少しずつ「まんま」とかしゃべるようになってきましたが、抱き上げた子供を見て、自然と笑っている自分がいます。おそらく自分では今までしたことがないような笑い方をしていると思うので、そのときの顔はおそらくハンサムじゃないかと思います。
■家族はいつも一緒にいるわけではない
――劇中の奥さんは源太郎の扱いがとても上手ですが、吉田さんご自身はこういうことをしてもらうと機嫌がよくなるといったことはありますか?
役者は不規則な仕事なので、通常は外食やウーバーイーツを利用することが多いのですが、「今日は久しぶりに家で鍋を食べたいな」と思っていたら、奥さんから「鍋を作って待ってるよ」と言われたりすると、びっくりするし、とてもうれしいです。まだ、結婚して5年くらいで何もかもがツーカーではないんですが、たまにそういうことがあるので、徐々にそういう気持ちの交流ができ始めてきたかなと。僕も奥さんに対しては照れくさいので、「ありがとう」をあまり言えないほうですが、そういうときはちゃんと言うようにしています(笑)
――コロナ禍で家族に会いづらい今、ホームドラマを届ける意味合いと、令和ならではのホームドラマの魅力について聞かせてください。
大前提として家族はいつも一緒にいるようなイメージですが、実はそうではなくて、子供たちが大学生になったり、成人したりすると、どこか別の街に行っちゃったりして、だんだんバラバラになっていきます。いつも一緒にいないからこそ心配したり、逆に毎日一緒にいなくてもいいかといった贅沢なことも思ったりもするわけです。このドラマでもそうで、次女は大阪に嫁いでいて、離れていくときの切なさや無念さを感じたり、娘が赤ちゃんだった頃を思い出したりする描写も出てきますが、そこが切なくほろ苦さも出ていて、いいんじゃないかと。
また、今は頑固親父が出てくるホームドラマなんて絶滅状態だから、令和の時代にあえて昭和のホームコメディをやるというコンセプトがとても面白いのではないかと。そこに目玉焼きや大根の煮たもの、どら焼きなど、日常にあるおいしいものも出てくるし、いろんな要素が詰まっていますから、ぜひ楽しみにしてください。
●吉田鋼太郎
1959年生まれ、東京都出身。テレビドラマでは『半沢直樹』『MOZU』『ドクターX ~外科医・大門未知子~』『おっさんずラブ』などの人気シリーズに出演。主な映画の近作は『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』、『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』『カイジ ファイナルゲーム』『今日から俺は!!劇場版』『孤狼の血 LEVEL2』など。22年1月にドラマ『おいハンサム!!』がスタート、3月に自身が演出するミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』上演される。