シェイクスピアの舞台劇から、緩急自在な役柄を演じる映画やドラマ、軽妙なMCぶりにうなるバラエティ番組などで、八面六臂の活躍ぶりを見せる俳優の吉田鋼太郎。そんな彼が主演を務める令和のホームドラマ『おいハンサム!!』(東海テレビ・フジテレビ系、毎週土曜23:40~)が、1月8日にスタートする。3人の娘に翻ろうされる頑固親父役に扮する吉田は、自身も幼い愛娘がいることで、大いに共感しながら役に臨んだようだ。

原作は伊藤理佐氏の人気コミックで、今回演じるのは、娘たちの幸せを切に願って奮闘する主人公・伊藤源太郎。伊藤家の3人娘として、長女・由香役を木南晴夏が、次女・里香役を佐久間由衣が、三女・美香役を武田玲奈が、家族をおおらかに支える母親役をMEGUMIが演じる。

  • 『おいハンサム!!』に主演する吉田鋼太郎

    『おいハンサム!!』に主演する吉田鋼太郎

■サプライズが起きる現場でやる気を喚起

――令和のホームドラマということで、どんな作品になりそうですか?

ホームドラマで、頑固親父にみんなが手を焼くというシチュエーションを考えると、僕が中学生の頃に観ていた『寺内貫太郎一家』(74年、TBS)を思い出します。寺内貫太郎さんの場合は、傍若無人ぶりを前面に出していて、ちゃぶ台をひっくり返したり、(長男役の)西城秀樹さんを投げ飛ばしたりしていましたが、さすがに今それはできません(笑)。昭和のお父さんといえば、酔っ払ってベロベロになり、寿司折りをぶら下げて千鳥足で帰ってくるような描写がありましたが、そういうものも出てきます。

源太郎は3人の娘たちのことが大事だし、かわいくてしょうがないけど、面と向かっていろんなことに口出しはできない。たまたま泥酔して帰ってきて、何の前触れもなく「お前のことを愛してる」と言ったりしますが、そういう気持ちはよくわかるなぁと。全く別物ですが、向田邦子さんの『父の詫び状』という名作を思い出しました。お父さんが手紙で家族に感謝の思いを伝えるんですが、普段は言いたいけど言えないから、何か別の手段で伝えようとする姿が素敵だなと思います。

――吉田さんご自身もそういうところはありますか?

僕はもう現代の人になっちゃっています(苦笑)。やっぱりしゃべってなんぼというか、言って伝えないと大変なことになったりするので、最近はなるべく言いたいことは言うようにしています。私事ですが、3月に娘が生まれまして。やっぱり娘には自分が思ったことをちゃんと伝えようと思っています。

――監督・脚本が『ランチの女王』(02年、フジテレビ)の山口雅俊さんですが、脚本を読まれてどんな感想を持ちましたか?

山口さんは“天才”と言われ、こだわりが強い方ですが、脚本は抽象的な描写が多くて、ちょっとよく分からないところもありました(苦笑)。例えばあるシーンでは「源太郎がオフィスで鼻歌を歌いながらパソコンを見てチェックをしていて、その内容について少しだけ部下と話している」とあったんです。それを一昨日に撮影しましたが、僕がオフィスのテーブルの上に靴を脱いで上がって、パソコンを小脇に、その日に増えた20秒くらいのセリフを部下に向かって話す、叱咤激励して叫ぶというシーンになりました。全くト書きと違うじゃないかと(笑)。サプライズが起きる現場であり、僕ら俳優のやる気を喚起してくれるから、監督と俳優同士でいい意味でのバトルが繰り広げられています。

■アドリブやめて「どういう芝居ができるのかな」

――妻役のMEGUMIさんとの共演はいかがでしょうか?

MEGUMIさんとお会いするのは『おっさんずラブ -in the sky-』(19年、テレビ朝日)での共演以来でしたが、撮影前にたまたま別の現場でお会いしたとき、「久しぶりです」といった挨拶から入るのではなく、いきなり「鋼太郎さん、山口さんって知ってますか? 大変ですよ!」という会話で始まりました(笑)

でも実は僕、以前に山口さんとお会いしていて。ある日、よく一緒に食事をする藤原竜也から「今、山口さんという人と一緒に飲んでるんですが、すごい人なので、鋼太郎さんも来てくださいよ」と呼ばれて行ったとき、山口さんと意気投合しまして。そういう前フリがあったから、そのあとの仕事でいきなり長ゼリフを差しこまれたり、現場が押したりしても大丈夫ですし、ものすごいこだわる方だからこそ素晴らしいものが作れるとも思っています。

――長女役の木南晴夏さん、次女役の佐久間由衣さん、三女役の武田玲奈さんたちとのエピソードも聞かせてください。

木南さんは、旦那さんの玉木宏さんと昨年、連ドラ『桜の塔』(テレビ朝日)やファミリーマートのCMなどでがっつりご一緒しました。続いて木南さんは、このドラマのあと、僕が演出する舞台にも出ていただくので、縁はつながるんだなあと思いました。また、佐久間さんや武田さんは、これまで同じ映画に出ていてもご一緒するシーンがなかったので、今回の共演でリベンジができるからすごくうれしいです。

――源太郎役を演じる上で、何か心がけていることはありますか?

僕はアドリブを挟み込むのが好きなタイプで、通常は監督や共演者の方々が了承してくれれば入れていくんですが、今回はアドリブなしでいこうかと。先ほどの話で、何が起こるか分からない自由でラフな現場というイメージを持たれたと思いますが、そうではなくて、山口さんは全部緻密に計算されています。だから、急に差し込まれる新しいセリフも、その場で山口さんが一生懸命考えられたものなので、監督から指示された通りにやった方がいい作品になるんじゃないかと思って。

アドリブって、どこかできてない部分を補うみたいなところが無きにしもあらずだから、それをやめたとき、自分がどういう芝居ができるのかなと考えたりします。