家電メーカーのバルミューダが、新ブランド「Balmuda Technologies」を立ち上げ、第1弾の製品としてリリースしたのが5Gスマートフォン「BALMUDA Phone」です。独特の感性で生み出された新スマートフォン、スペックや価格などの面でネガティブな意見が多いのも確かですが、フラットな視点で実力をチェックしてみたいと思います。

また、カメラ機能の料理モードで色被りが発生しやすいという現象があり、色再現性を向上するというアップデートが配信されました(SIMフリー版はバルミューダからソフトバンク版はソフトバンクから配信)。こちらも、アップデート前後の傾向をチェックしてみます。

  • 指先でちょっとつまんで持てるくらいの小型スマートフォン「BALMUDA Phone」

独自色あふれるコンパクトスマホ

BALMUDA Phoneは、一目で分かるその独特のスタイルが特徴です。「真新しい」というよりも少し懐かしさを感じるスタイルは、昨今のスマートフォンでは少なくなったデザインです。

  • 丸みを帯びた背面が目を引くBALMUDA Phone。こうしたデザインが今までなかったわけではありませんが、「今」という意味では多くはありません

ディスプレイサイズは4.9インチ。6インチクラスが増えた現在のスマートフォンの中ではコンパクト。この画面サイズも数年前にはありましたが、最近はすっかり減ってしまいました。同程度のサイズで現役モデルだと、iPhone SE(第2世代)が少し小さい4.7インチで、手のひらにすっぽり収まるサイズ感です。

  • BALMUDA Phoneは手のひらサイズ

本体サイズは幅69×縦123×厚み13.7mm、重さは138g。iPhone SEだと幅67.3×縦138.4×厚さ7.3mm、重さ148gなので、幅は同程度で縦方向が短く、ぶ厚くて軽い――。言葉で表すと悪いイメージですが、BALMUDA Phoneのコロッとした本体は手になじみ、直線的なスマートフォンとは違うデザインにも鈍重な印象はありません。

  • 前面の形状も特徴的。全体的に直線ではなく曲線を生かしており、BALMUDA PhoneのWebサイトでは「一箇所も直線を含まない」とうたっています

背面が丸みを帯びたスマホは何となく定期的に出回りますが、消えていったものが多いのも事実。その結果、現在は背面がフラットなスマホが増えました。その中でもいろいろとデザインを工夫しているメーカーもあり、折りたたみ型やタフネスといった特化型の端末もあります。

そうしたデバイスと比べて、BALMUDA Phoneがひときわ突飛かというと、そうでもありません。ただ、現状ではあまり見かけないカタチなので、それだけでオリジナリティがあります。

  • 一目でBALMUDA Phoneと分かるデザインは重要です

  • インカメラはパンチホール型ではなく、ベゼルに埋め込めなかったのかという気もしますが、背面(曲面)などを考えると難しかったのかもしれません

ボディ全体としてはプラスチック素材なのですが、特に背面の仕上げは悪くありません。シボというか、細かい凹凸が付けられています。BALMUDA Phoneの発表会では、使い続けたときの変色などが味になるという話もありましたが、プラスチック素材がどのように汚れて、どのように味になるのか、興味深いところです。果たして1台のスマホはそこまで長く使うものなのかという見方もあるでしょう。

  • 背面にも直線はなく、わずかにカーブしたラインが独特

  • 本体カラーはブラックとホワイトの2色

  • 写真にするとホワイトモデルの背面では分かりづらいのですが、ブラックモデルを見るとシボ加工の凹凸が分かります

背面には、カメラ、指紋センサーが一体となった電源ボタン、スピーカーを配置。カメラと指紋センサーが同じ列に並ぶ珍しい配置で、右手で持って指紋センサーにタッチしようとすると、ちょっと苦しい印象。左手だと自然な動きで指紋センサーにタッチできます。ちなみに電源ボタンは押し込む必要がありますが、指紋を登録しておけば押し込まなくてタッチするだけで画面ロックを解除できます。

  • 右手だとちょっと苦しいのと、カメラと指紋センサーの区別がないので、慣れるまで戸惑いました

彫り込んだ「Balmuda」のロゴはプリントではない点もポイントです。LEDライトと通知ランプはともかく、背面のスピーカーがカメラ側に寄っているのは、何らかのポリシーがあるのでしょうか。

  • それぞれのパーツ位置が微妙に「均等」から外れています

側面は、左側にボリュームキー、右側にSIMスロットが配置されています。底面にはUSB Type-C端子とマイク。イヤホン端子はありません。ボタン類はシンプルで、背面に電源ボタンがあるため、側面のボタンは最小限で済んでいます。

  • 本体側面。曲面なので厚く見えます

  • 天面と底面

ホーム画面は独自のUIを搭載しており、背景のカラーや画面を横切る2色のストライプカラーなどを変更できて、オリジナリティを出せます。このストライプというのが独自の機能で、2色の一方をストライプに沿ってスワイプすると、あらかじめ設定したアプリが起動するショートカットとして機能します。単なるアプリアイコンではなく、本体デザインと一体化したショートカットというのは目新しい工夫です。

  • ホーム画面の設定。カラーやストライプの方向を変えたり、ストライプをスワイプしたときの動作を設定できます

【動画】ホーム画面はアプリ起動を優先したUIになっています

画面の小ささはメリットかデメリットか

小型の本体には諸刃の剣でもあります。メリットのひとつは持ち運びやすさで、ポケットにも収まりやすいですし、小さなバッグにもスルッと入ります。

反面、画面サイズも小さいため、大画面のスマホと比べて一度に表示できる情報量は減り、文字やアイコンの表示も小さくなります。例えば、縦に長いWebサイトの表示範囲は狭く、写真も小さく表示されます。

  • BALMUDA Phone(左)、Pixel 6 Pro(中央)、Xperia 1 III(右)の画面表示を比較。縦に長いXperia 1 IIIとはだいぶ差があります

文字サイズを小さくすれば多少は情報量が増えますが、かえって見づらくなってツラいというユーザーもいるでしょう。文字サイズを大きくするとさらに表示エリアが狭くなります。後述するスケジュールアプリの文字サイズも、なかなかの小ささです。個人的には特に問題ないのですが、画面の文字が小さいと厳しいという場合には、ちょっと扱いづらいかもしれません(これはBALMUDA Phoneに限らず、小型スマホの全般に言えることですが)。

筆者が「特に問題ない」と感じるのは、(年齢的な衰えはあるものの)視力がいいほうだからと、「これ1台で済まそうと考えていない」から。写真を撮る、動画を見る、マンガを読む――。アプリを複数起動してメールからスケジュールを作成する――といったいろいろな用途でフルにスマートフォンを使っていると、さすがにBALMUDA Phoneの画面サイズでは厳しいと感じます。

もともとバルミューダ自身も、そんな使い方は想定していないでしょう。製品発表会で寺尾玄社長が述べた言葉からも明らかで、スマートフォンを常に使うという生活スタイルへの疑問が出発点。BALMUDA Phoneは、スマートフォンをフルに使わないために作られたとも言えます。あくまで道具として、必要なときだけ使うのがBALMUDA Phone。その意味では、サッと取り出せるBALMUDA Phoneの小さなサイズ感は重要です。

BALMUDA Phoneのスタンスと性能の考え方

すばやく必要な作業を済ませるというBALMUDA Phoneのスタンスから考えると、パフォーマンスには一定以上の性能が必要です。BALMUDA Phoneに採用されているのはSoCはSnapdragon 765。メモリは6GBでストレージは128GB。

最新のSoCでもないですし、ミドルクラスのSoCではありますが、画面サイズが小さいぶん、パフォーマンスはそれほど求められず、ゲームなどに使いにくいサイズでもあるので、そもそもの用途が限られます。そのため、パフォーマンスが問題になるシーンは少ないでしょう。

ベンチマークテストを行うと、値はそれなりです。例えば3DmarkのWild Lifeテストではスコアが1,519となりました。6,000オーバーをたたき出すPixel 6 Proなどのハイエンド端末に比べると物足りない数字ですが、ゲーミングを想定していないスマートフォンなので仕方ないでしょう。

  • 3Dmarkによるテスト結果

  • GFXBenchのスコア

そのほか、GFXBenchのマンハッタンは3,232フレーム、マンハッタン3.1は2,313フレーム。Geekbenchはシングルコアが561、マルチコアが1,663。AI性能を測定するGeekbench MLはCPUが218、GPUが501、NNAPIが381となっています。

  • Geekbenchのスコア

  • Geekbench MLのGPUスコア

大事なのは、実際に使うときの動作がどうかという点です。キビキビとまでは言いませんが、アプリの起動もサクサクとしており、特に問題は感じません。画像をふんだんに使ったWebサイトなどでは動作が少々重くなる印象です。