――『マトリックス』シリーズは、ご自身にとって青春時代の思い出だということですが、覚えているエピソードや受けた影響などを教えてください。

小学生のときに見た、ネオが銃弾をよけるシーンが印象に残っています。曲で言ったら大サビみたいな瞬間。あの感じがたまらなかったです。とりあえずマネしたい(笑)。ベッドの上で、一人でやっていましたし、同級生とふざけ合ってずっとやっていました。

――そうなんですね(笑)

小学3~4年生の頃に金曜ロードショーで見て「かっけー!」って。小中学生の頃に聴いた曲って歌詞を見ずに歌える。『マトリックス』もそんな風に記憶に刻まれている感覚がありました。『マトリックス』という単語も印象的でしたし、この文字が縦に羅列しているのも近未来感やSF感があって斬新でした。そして今回、シリーズを改めて見返して、当時見たときよりもずっと複雑で深い作品だと感じました。誰しもが抱くような中二病をこじらせていた頃の妄想を映像化・言語化しながら、ヒューマンドラマも描かれている。「こんな深い世界だったんだ!」と思い知らされました。

――作中で、特に印象に残っている詩的なセリフは?

直接言わない比喩表現が好きです。「(真実が知りたかったら)白ウサギの後を追え」とか「まるでシルクでケツを拭くようだ」みたいな表現があって、カッコいいと思いました。そういった表現の仕方が自分の感性にはまったくなくて、一個一個のセリフさえも監督のセンスを感じます。

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――最新作はいかがでしたか?

僕の中では、(過去の)3作で完結していました。『マトリックス レボリューションズ』であんなにきれいにまとまってしまっていたから、「次、何するの?」って思ったんです。でも、『レザレクションズ』を見てしっくりきました。『ここだけは絶対!』というところを押さえている。思い出をさかのぼりながら新しいものを見ている感覚がありました。スッと入ってきましたし、作品が今風にアレンジされている。最新作も含めて、きれいなまとめ方だと思いました。

――お気に入りのシーンは?

『レザレクションズ』で「おっ!」と思ったのは、ネオとトリニティーの再会シーンです。やりとりのなかで展開されるある子のセリフに「マトリックスってこんな映画だったっけ!?」って驚きました。過去3部作ではありえない、リアルな言葉、ある種届きやすい日常会話がバッと出てきたので、めちゃくちゃ印象に残っています。

――改めて、今回『マトリックス』シリーズに携わったことで芽生えた気づきや新たな野望はありますか?

まずは、「PARADOX」がどういう評価を受けるのか楽しみです。評価次第では、もっとやりたいことができる気がします。昔はもっと純粋にやりたい音楽、作りたい音楽をやろうという気持ちが強かった気がします。「好きなバンドの楽曲やろうよ」みたいな(笑)。それくらいピュアに、今やりたいこと、今だからやれることを意識して、さらに何かが作れる気がします。